家族で支える観光名所 ”あじさいの杜” で地域活性化

茨城県潮来市

タカモリ リョウニン

高森 良仁

二本松寺(潮来市・堀之内)にてあじさいの杜の活動に関わる。

一どんな活動をしていますか?

 潮来市の二本松寺の住職をしております。
 二本松寺では”あじさいの杜”ということで、6月中旬から7月上旬頃まで参拝客の皆様に100種10000株のあじさいを楽しんいただける期間がありまして、そちらの活動に力を注いでいます。
 
 花は育てていくもので、期間中だけでなく一年通してあじさいに関わる活動をしております。
 1月の寒い時期にも栄養豊かな土を作るため”寒肥”をほどこし、2月、3月頃には植え始めます。
 急な斜面に植える際には苦労もしますが、一面あじさいで埋め尽くされる光景を思うとおろそかにすることはできません。
 4月、5月の成長の時期を経て、6、7月に花開く時を迎えるという流れは、もうすっかりなじみのものですが、いつでも新鮮な気持ちをもって取り組んでいます。
 
 あじさいの杜の期間中には、近所の女性たち30人ほどに日替わりで協力を仰ぎ、券売所や休憩所の喫茶スペースやお菓子やお守りといったお土産コーナーでの対応を手伝ってもらっています。
 地域のつながりの中で活動をしています。

一はじめたきっかけはなんですか?

 若くして亡くなった妻の妹の供養の意味をこめて、庭にあじさいを植えはじめたことが一つのきっかけです。
 その頃はまだまだ本数も少なく、ごく内輪の営みとしてやっていましたが、それでも段々と良い評判を聞くことが増えました。
 そんな中、ある時わたしたちの活動を手伝ってくれていた観光ボランティアさんが、潮来への観光を考えている方に「あやめの他にどこか見れるところはないか」と聞かれ、うちを紹介したという話を耳にしました。
 
 心が決まったのはその時だったと思います。平成20年頃のことでした。
 どうせやるのだったら思い切ってやる方がいい、3000本のあじさいをいちどきに植えようと決めてしまい、決めたからにはやるほかないというところまで気持ちを強くもって実現に向けて動き出しました。

  •  名前もたいへん愛らしい品種”金平糖”
     花を愛でる心が感じられます。

  •  ぱっと目を引く赤が印象的なお庭。
     住職は秋の見どころも作りたいと語っていた。
     
     梅雨から初夏にかけてあじさいがあれだけ咲き誇る庭なのだから秋も美しい光景が見られたならば‥‥という思いがそこにあらわれている。

一一番大切にしていることはなんですか?

 あじさいあっての”あじさいの杜”なので、一株一株にちゃんと目をかけることは基本です。
 もぐらの被害にあってしまうこともありますし、心無い方があじさいを摘み取ってしまうということもあります。
 そうでなくても植物は日々少しずつ姿を変えるものでその変化にちゃんと気付くことこそ大切です。

 2016年からはあじさいの杜への入山料を取るようになったのですが、お金をとるがゆえの責任・緊張感を覚えるようになったことは事実です。
 毎年見に来る人をあきさせないためにあじさいの植え替えを例年やっていますし、人気の品種については数を増やしたりと、変化をつけています。
 ”天使のほっぺ”といった名前も見た目も可愛らしい品種に、”レッドバロン”という目の覚めるような赤が鮮やかな比較的珍しい品種など、幅広く植えています。
 様々な感性をもった方それぞれの琴線に触れてほしいと思って多様なあじさいを育てているので、それを反映するかのように様々に得られる皆さんの反応がやりがいにつながっています。
 
 あじさいを通して広がるつながりもあります。
 お隣の鹿嶋市や神栖市、さらには千葉や神奈川など、あじさいを愛好し自分でも栽培している方とのご縁に恵まれ、あじさいを紹介しあったり、お譲りしたりしながら、あじさいの世界の奥深さを掘り下げることにつなげています。
 これは”あじさいの杜”がなければ生まれなかった交友ですし、これからの活動の励みになるという点でも大事にしています。
 
 あじさいの杜の期間中には、さきほども言った通り、理解あるご近所さんの手も借りているのですが、そこについても思いがあります。
 変に人馴れしていないからこそできる誠実な対応、心のこもった対応というものがあると私は思っていまして、手を貸してくださる方々はみな普段から接客をやっているというわけではないけれど、それだからこそ親身に応対できるところが強みだと私は思っています。

一今後の目標を教えてください

 あじさいに関わる活動に今力を注いでいますが、それは最終的には潮来の活性化を願ってというところに落ち着くのだと思っています。

 歴史あるあやめまつりという大きなイベントが、潮来にはあります。
 潮来の代名詞と呼びうる、多くの人を呼び寄せることのできるまさに”まつり”です。
 これは間違いなく強みなのですが、それを見るだけで帰ってしまうという人の存在は体感としてやはり意識してしまいます。潮来に身を置く人間としてどうにかしたいと長年考えてきました。
 
 観光名所がいくつかあるということは大切です。それは観光客が地域の中にとどまる時間を長くすることにつながります。
 あやめとあじさいがセットになって、地域の元気のもとになってくれたらとても喜ばしいです。

 だからこそ設備の拡充という点でも頑張らなければなりません。
 トイレを体に不自由のある人にとって使いやすいよう作り変えたり、冷暖房の設備を整えたり、さらには車椅子の方のためにしっかりした手すりを取り付けたいと考えています。
 観光地であるならば多くの人に開かれている必要があります。
 毎年、改善を重ねていきつつ、まず何よりも続いていく名所にしなければなりません。

アピールポイント

 高森夫婦の思いから始まった観光名所は、今や多くの人の訪れる場所。
 そこに人の集まる場所を作ったということの意味はあまりに大きい。
 
 観光地としての潮来を長年見つめてきたからこそ気付いたことに真っすぐ向き合った結果がそこにあらわれている。
 潮来市の観光を担うまでになった二本松寺・あじさいの杜を支える高森夫妻の笑顔は眩しかった。

 そんな二本松寺のHPはこちら↓

 http://www.nihonmatsuji.com/ajisai.html

-コーディネーター紹介-

 ”あじさいの杜”をはじめて訪れた人ならば、きっと息を呑んでしまう。急な斜面に所狭しと植えられたあじさいの多様なありよう。その存在感は杜の名に恥じることのない壮観として広がる。だからこそ忘れそうになってしまう。ずっとそこにあったのではないかと錯覚してしまう。今回の取材であじさいにまつわる活動の大変さをうかがえて良かった。そこにかけられた思いに触れることができて良かった。そしてまた来年が楽しみになった。はじめての人ばかりではなく、繰り返し来る人をあきさせないための工夫を強く口にされていたから。何度も訪れたい場所こそ、本当の意味での観光名所と呼びうるのだと考えさせられた。

ID147 茨城県潮来市

いしだ ゆうこ

石田 有子

市役所に入庁して早16年・・・あっという間に年数が経過した。一体私は何歳になったのだろうか??