一どんな活動をされていますか?
明治36年から創業し、100年続く企業の3代目として、農家が必要とする資材を供給する事業を行っています。もともとは今と違った事業をやっていたそうですが、徐々に形を変えて今の事業に落ち着いていると聞いています。
20代の半ばに、地元の先輩からのお誘いがあり、商工会青年部に入りました。鹿行地区の副会長をへて会長も務め、さらに県の商工会副会長まで頼まれて、断る事ができず引き受ける事に……。
1期2年の役回りを3回、その後、鹿行地区の顧問を2年を含めると、計8年もの間、本業にも影響が出るほど忙しい日々を送っていました。しかし、いろいろな地区の皆さんと交流し、多くの人脈を作ることができ、仕事にも良い影響を与えることもありました。
やはり体験や体感が重要で、時には飛び込んでみる勇気も必要だと感じましたね。
一今やっていることについての課題はなんですか?
農家は後継者不足と言われていますが、鉾田の場合は農家の規模が大きいため、実際は他の地域よりは困っていないと思います。新規参入者へのハードルも、小規模で始めるならそれほど高くはないと思います。
それよりも課題感を抱いているのは、作業をする人の人手不足や体への負担です。小松菜、ほうれん草、水菜などの葉物野菜は、種をまくのは機械を使い半自動化されているので簡単ですが、収穫にはどうしても人手が必要になります。手間がかかるだけでなく、人間の体への負担が大きいため、機械を使い自動化することで負担を減らしつつ、収穫量を増やすことができないかを考えています。
また、東京の胃袋と言われ、首都圏にも大きな影響を与えているこの地域の生産を守るためには、新しい取組みを積極的に取り入れ、チャレンジしていく必要性を感じます。
過去に大手ショッピングセンターのジャスコを誘致する話があった際に、反対運動がおこった事がありました。今思えば、その時誘致を主導した人たちは、先見の明があったようにも感じます。出る杭は打たれる、変化を受入れない、という文化が少なからず残る地域ではありますが、変化を受入れる事が必要なタイミングなのかもしれませんね。
農業が盛んで、座っていればお客様がくる時代を知っている世代があり、その背中を見て育ってきた世代が今の世代です。資産のある人が多いがゆえに、個人が学ぶ機会が少ないのでは?という問いに対しては、全くその通りだと感じます。資産を持たない都会で働く人は、個人への価値を資産にすべく、学び続けなければ成功があり得ないというのも納得です。互いに交流する事で、情報交換や価値交換が行われて、新しい何かが生まれる可能性もありますよね。
一方で、企業や工場の誘致をするにしても、賃金格差を埋めなければ、どうしても賃金の高い首都圏に人材が流れる構図は変わらないと思っています。安くするだけで人も企業も集まった時代は終わり、新しく価値の高い職を作らなければ人は集まらない時代なのだと思います。
一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことはなんですか?
昔は野菜のラッピングは人の手で行われていました。重さを計り、袋詰めをするため、時間や人手が必要でした。労働者不足という課題を解消するために自動化が進んできましたが、まだまだ人手が足りません。今後、さらなる自動化を進められると、農家の方の負担は減り、業績も向上すると思います。
特に、葉物野菜など、未だ自動化する事ができていない領域で、研究開発を重ねて自動化することができれば人にかかる大きな負担が減り、農家の方々が喜ぶと思います。
新しいテクノロジーを活用する事で、自動化が進むことは間違いないと思いますので、新しいアイデアやアイデアを持った人、企業をつなぐことで、農家の方々に対して夢物語ではなく、現実的なイメージを持っていただくことができるかもしれませんね。
一今後の目標はなんですか?
収穫の自動化を進めるのが“夢”です。一緒に考えてくれる企業から頼まれれば、喜んで農家の方々へ紹介したいです。また、地域としても積極的に変化を受入れ、成長していきたいですね。
今の商材は先代とは全く違うモノになっています。父のお客様と、自分が開拓したお客様も違うし、鉾田市の生産品も、つねに変化してきました。販売チャネルも含めて新しい道を探すことで、もしかしたら将来は中国へ大量の商品を輸出することができるようになるかもしれません。
最後になりますが、これまで商工会の役員や理事を務め、常に忙しい日々を送ってきました。400年前から続いている地元のお祭りに関わりたい想いを持ちながら、そのような機会が持つことができなかったので、今後は力を入れていきたいと思っています。
アピールポイント
落ち着く感じ。人に頼まれる・頼られる、癒し系な感じ。このような雰囲気が田上さんの魅力なのだと実感する事ができました。市や県の商工会役員や理事だけでなく、実はPTA役員も引き受けていたそうです。『勇気を持ち飛び込んでみること』、『体感や実体験が何よりも重要』と仰られる田上さんのスタイルが、100年も続く事業を継続できている秘訣なのかもしれません。
また、田上さんと関わる農家の方々の希望・要望などの情報は、計り知れない価値を生むと思いました。データ化して、人や企業や研究機関とマッチングすれば、農業日本一の鉾田市がリーディングして、農業の自動化を推進する事も夢ではないと感じます!!田上さんの“夢”を実現できる瞬間を一緒に迎える事ができたなら、どんなに素晴らしいことか。今からワクワクが止まりません♪