本物をどこまで追究するか

益田市

みくに たかじ  ・  みくに ようじ

見國 隆二・見國 洋二

***見國隆二さん(写真左)*趣味はスイミングや友人とのトレッキング。もともとは益田の街中のビルに場所を借りて店を開いていた。当時はレザークラフト教室もしていたが 15年前に安田に今の店を建てることに。***見國洋二さん(写真右)*趣味はカントリーラインダンスとお酒の飲めるイベントに参加すること。学生時代はレザークラフターになるとは考えてもいなかったが、大学でアメリカの思想史を勉強していくうちに、レザークラフトの道もありだと考え始めた。ただ作るだけではなく、異文化に触れることや文化の伝道の面白さを原動力にしている。

一どんな活動をしていますか?

革製品を製作販売するウェスタンショップを経営しています。ウェスタンにはなくてはならないブーツ・ハット・シャツ・ジーンズのほか、アメリカで見つけてきたアンティーク雑貨も販売しています。珍しいウェスタン商品も販売している本格的な店なので、アメリカのマニアからもよく問い合わせを受けます。レザークラフト用工具に精通していることもあり、アメリカやフランスから輸入している工具はネットでも販売していて、値段が高いにもかかわらず、全国から注文があります。お店の内装にもこだわっていて、アンティークの鏡やショーケースなどの家具もアメリカから取り寄せました。地元の人にもこうした店の雰囲気を体験してもらいたいため、年に2回タコスパーティーを開催し、お客さんの交流の場を設けています。

一はじめたきっかけはなんですか?

19歳の時にたまたま大阪のウェスタンショップに足を踏み入れたのがきっかけです。もともと西部劇世代でもあり、カウボーイのファッションが好きだったんです。そこで買ったベルトに唐草模様が手彫りしてあって、自分でもやってみたいと思い、その足で京都までクラフターを訪ね、道具の揃え方など教わりました。当時インターネットもなかったので、アメリカの通販の店に手紙を書いて道具や教材を送ってもらって始めました。最初は手芸用の量産工具や大きな図柄でやっていたんだけど、今から20年ほど前にアメリカの鞍職人の作品を見て、趣味と本業の世界の違いをまざまざと見せつけられ、職人の技術を学ぶため、毎年渡米するようになりました。何度も渡米するうちに道具の重要性にも気づき、工具職人とのやり取りも増えました。一方で、100年以上前の工具が高級品としていまだに使い続けられていることも知り、職人の工具への愛は万国共通なのだと気づかされました。

一一番大切にしていることはなんですか?

一流のものにこだわること。うちが作るものは一部の人しか欲しがらないものであることが多いので、時間・お金・労力をかけて一流のものを作っても、1回きりのことが多いです。そこで使用した型や余った材料で同じものをたくさん作って売ることができないから量産には向いていません。だからと言って手間暇をかけずに利益率を上げたいかと聞かれたら、それじゃ面白くないんです。私は利益よりも、本物のカウボーイのクラフト作品を作ることを優先したいので、ペースだってカウボーイスタイルです。納期に追われて妥協した作品をつくることはしないで、何度も推敲しながらアイディアを本物に近づけてから一気に作ります。一気に作るときに邪魔されるのも嫌ですよね。都会なら来店客も多くてたくさん売ることもできるでしょうが、ここなら常連客が時々来て雑談する程度なので、一見さん相手に手を止めることもなく、作品に集中できます。来店客はもちろんですが、来店したことがない客とも電話やメールで深くやり取りできるから、田舎で隔絶しているように見えて、作り手と買い手のつながりは深いし、作り手の顔が見えているぶん、実際に見てみたくなって、遠路はるばる訪れるお客さんもいますね。

一今後の目標を教えてください

もっともっと技術を磨いて知識を深めて、エルメスのように洗練された技を極めていきたいです。作っていて面白いのは、新しい目標がどんどん生まれてくるということで、職人として1つの目標を達成したと思ったら次の目標が現れるんです。ゴールした後、そこで満足してしまったら、みんな走るのをやめてしまうでしょう?まだまだ勉強だから、面白いしやめられないんでしょうね。趣味でレザークラフトをしている人の中に、技術力や才能があるのに途中でやめてしまう人を時々見かけます。もちろん時間やお金の都合もあると思いますが、これまでに作ったもので満足し止めてしまう人が残念です。そういう人に次のゴール地点を教えて、レザークラフトの奥深さを伝えるのも我々の仕事だと思っています。レザークラフトを好きな人が増えてくれたら、必然とお客さんも増えるだろうし、そこでカウボーイ文化の魅力を広めていきたいと思っています。

編集後記

2018.12.02 渡辺 瑞貴 (わたなべ みずき) 21歳
斜めの角度から見てみると、安田地区・北仙道地区が抱える問題として、「異文化交流の機会が少ない」ことがあげられます。外国人労働者の問題が最近はよく報道されていますが、これから外国人の人口は増加し、多文化への理解が求められてきます。そうしたとき、これからの社会を生きていく今の中高生に対して、本場のアメリカ文化に触れられる機会というのはとても貴重なものになり得るし、見国さんが19歳の時に感じたインスピレーションを、これからの世代にも与えられる可能性もあると思いました。是非ウエスタン文化に触れられる機会を増やしてほしいと思います。

-コーディネーター紹介-

島根県

だいがくせいらいたー

大学生ライター