都会から田舎へ。”決断させられる” でなく ”決断する” ために。

益田市

たかだ じゅんこ

高田 純子

1995年、広島市中心部から旧匹見町に家族4人(夫、娘2人)で移住。2003年、匹見町道川に移住し、今は夫と2人で暮らしている。「道川地域づくりの会」のメンバーとして道の駅でカレー屋の運営、農家として野菜や花を産直市へ出品している。

一どんな活動をしていますか?

地域の課題のひとつに、食堂がないことがありました。なので、去年から有志を集めて、道の駅で食堂を始めました。春から秋の間、「秘境カレーの店 よりみち」というカレー屋さんをやっていて、週1回の1日20食限定で運営しています。通りすがりの人も来てくれるし、地域の人の集まり場にもなっています。花が好きなスタッフがいて、毎回各テーブルに一輪花を置いてくれるんです。何これ!種ちょうだい!って語り合うのが楽しいんです。
他に、地域の生産組合に所属していて、栽培したものを市場に出荷したり、産直市に出したりしています。「出会いの里・道川」という道の駅では、野菜や漬け物などの加工食品を出しているんですよ。自分のつくったものが、「今日はいくつ売れたかな?」って目に見えて分かるのが、とても嬉しくて、楽しみに頑張っています。

一はじめたきっかけはなんですか?

子どもたちが健やかに成長できる、いい環境を整えてあげたくて、ここ匹見に移住しました。当時、娘2人が小学生だったんだけど、こちらに来る前に通ってた学校が学級崩壊に近い状態で勉強できる環境じゃなかったんです。あと、いくら芯をもって子育てをしていても、都会にいたときは他の子が習い事をしている話を聞くと、うちの子だけ行かせないということは果たしてできるのかなって考えてしまって。誰かがしてるから自分の子もって、いつも周りの目を気にしてる気がしたんです。自分の話になりますが、子供の時にあまりかまってもらう時間がなくて、自分で決めて行動しないといけないことが多かったんです。けど、それってすごく自由で楽しくて。だから、私自身も、子供たちにも、周りに影響されず自分の考えで生きていけるようになってもらいたかった。今は、誰かと比較しないで、自由にのびのびと暮らせる匹見で、子育てができてよかったと思ってます。
この子たちにふるさとをつくってあげたいという想いもありました。夫が転勤族の息子でふるさとがなかったの。だから、子供たちにはいつでも帰れる場所を作りたくて。そのふるさとを、マンションの一室じゃなくて、大自然に囲まれた場所にもしたかったんです。普段とは全然違う環境に戻ってくることで、気持ちがリセットできるような。そんな場所をふるさとって呼ぶんじゃないですかね。

  • 左端テント下、高田さん。

  • 左奥、高田さん。

一一番大切にしていることはなんですか?

人とのつながり。これは本当に大切。私はどんな時も人に支えられてきました。


-そう想うエピソードは?

道川に来たのも、人なんです。ある事業を道川ですることを聞いて、すぐに「やりたい!」って手をあげました。けれど、その時の私には事業をするための土地も家もなくて。それを聞いた道川の方が、「道川においで」って、土地も家も紹介してくれたんです。


-人とのつながりで、匹見に住んで分かった都会との違いは?

都会に暮らしてた頃と特に違うのは、幅広い年齢層の人と関われることです。ということは教えてもらえることも幅広いの。ここにいると自分の親以上に心配もしてくれるし、教えてくださる。このまちの人は、私にとっての先生であり、お母さんやお父さんでもあります。


-人とのつながりを日々の生活で感じることはありますか。

こっちに来て最初にびっくりしたことがあるんです。家で育ててない野菜が玄関に置いてあって。嬉しいんですよ。でもそれだけじゃなくて、この人たちはこの野菜を植えてないからあげようって考えて持ってきてくれる、その気配りがすごいなって。冬のときも、雪を除雪してくださる方々が、道を通りやすいように除雪してくれて。匹見は、人同士のちょっとした心遣いを、日々お互いに積み重ねてる、そんなまちだと想います。


これからもこのまちの人とのつながりを大事にしたいと想っていますし、匹見のために、まちの一員として自分にできることが何か考えています。

一今後の目標を教えてください

普通の暮らし、今の暮らしをずっと続けたいです。当たり前に普通に暮らしたい。
常に周りに自然があって、自然の中に自分はいます。その自然を見る、利用することは暮らしに組み込まれた当たり前のパターンなわけで、私も自然でできることの実践をしています。けれど、このまちには私の知らないことがまだたくさんあります。
だから、地域のお母さんが生活の中で当たり前に実践していることを、もっと知りたい。ここには生活を豊かにするための、眠っている技術がたくさんあるんです。学ぶことで、人生を豊かにしたい。だから、今は地域の方々から、自分の生活をプラスにするための実践を学んで、それを自分の暮らしに活用することが目標です。

編集後記

2018.12.02 堀内 奈留 (ほりうち なる) 20歳
「人に流されない、自分で決断できる子になってほしい」。匹見で暮らす理由にあげた高田さんの一言、それが忘れられませんでした。私は3年前、故郷の和歌山を離れ、首都圏の学校に進学。今住んでるのは競争社会と言われる都会です。高田さんのこの言葉を聞いたとき、常に他人と比較して行動している自分に気づきました。よく行動力があるね、決断力があるねと人から言われます。けど、それは他人より長けている自分になりたくて行動していることで、私の決断は、この競争社会に飲み込まれて、生まれたものだったのかもしれないと思いました。だから、今の自分は決断しているのではなく、ある種決断させられている状態に陥っている。きっと、そうなっているのは私だけではないはずです。都会の競争社会に飲まれている人に、見てもらいたい。そんな思いで、この記事を書きました。「今、自分は他人と比べて生きていないか」「今の行動は、本当に自分のやりたいことなのか」。ぜひ、考えてみてください。自分と正面から向き合うヒントが匹見にはあります。

-コーディネーター紹介-

島根県

だいがくせいらいたー

大学生ライター