尾瀬を知り尽くす、地元出身のベテランガイド

群馬県片品村

ナガイカズヒロ

永井 一弘

1947年片品村出身。片品山岳ガイド協会に所属する、尾瀬認定ガイド(自然ガイド ・登山ガイド)。 降雪期登山も含め、年間100日以上、尾瀬と周辺の百名山(至仏山・日光白根山・谷川岳・皇海山)などのガイドを行っている。

一どんな活動をしていますか?

42の時から、27年間尾瀬のガイドをやっています。 100日くらい山に入るうちの、2/3は尾瀬。 冬季は冬山のガイドもやるね。冬山の初級が赤城山、中級で白根山や上州武尊、もっとレベルが上がると残雪期の至仏山とかね。最近雪山に来る人が増えてるんですよ。赤城で最初に色々な装備の使い方を教えて、そこからレベルアップしていけるようにしてます。 尾瀬学校(群馬県の小学生向けの尾瀬体験学習)のガイドもやるけど、子どもの目線は低いでしょう。 子どもの方が大人より生き物に気づくのが早かったりするよね。低い目線で見ると珍しい虫がいたり、そういうのが見られたりするんで面白いですよ。尾瀬は池塘がいっぱいあるでしょ?ただ池塘の周りを歩くだけじゃなくてね、ちょっと低い視点から見てみるのも面白いよ。目線が近づくでしょ。違う風景が見えるっていうかね。

一はじめたきっかけはなんですか?

自分は建設会社で山岳土木を専門に働いていたんだ。学校を卒業したあとは村を出て、東京・静岡・新潟・福島・富山とか、いろいろな山で仕事をしてた。長男なので、42歳の時に片品に帰ってきて、知り合いに「ガイドをやらないか」と誘われたんだ。村を出てからもずっと山をやってたからね。 子どもの頃はなんてったって歩かなくちゃいけなかった。山というより、山菜採りに親に連れて行かれたからね。 尾瀬は子どもの頃は連れて行ってもらえなかった。昔は子どもの行けるところじゃなかったの。木道がないんだから。バスも今よりずっと手前までしか行かなかったから、尾瀬に行くまでの道のりもずっと長かった。 初めて尾瀬に行ったのは15歳の時。中学を卒業して、よし行ったる!とね。 テントを背負って一人で、3泊4日で。大清水から入って、尾瀬沼・尾瀬ヶ原を歩いて、至仏山を登って帰ってきたりもしたね。その頃はまだ国立公園じゃなかったから、米と塩と味噌を持って行って、他の食べ物は山で調達したんだ。山菜を採ったり、紐を持って行って毛針でイワナを釣ったりね。食べ物には全然困らないよ。 あと香煎(こうせん)とか麦焦がしというのを持って行って、水に溶いて米の代わりに食べるんだ。軽くていいんだよ。 俺なんかはどこに行っても絶対生き残れるね(笑)。 なんで山が好きなんだろうね。自然が好きなんだろうね。ずっと山を歩いていたからね。

  • 春の尾瀬ハイキング

  • 永井さんの好きな秋の尾瀬。草紅葉が美しい。

一一番大切にしていることはなんですか?

ガイドっていうのはやっぱり、お客さん全員が安全に楽しく帰ってもらえるというのが一番だね。 花の説明なんかももちろんするけど、やっぱり安全管理と時間管理。 みんながバスに乗るのを笑顔で見送るのが一番だね。 それから人間関係がやっぱり大事だろうね。自分はなるべく色々な人に声をかけるようにしてるんだ。 ガイドの仕事をしていても、お客さんに安心してもらうには、すぐに馴染んでもらうようにしたい。 ちょっと困ってそうな人がいたら大丈夫ですか?と声をかけたりね。 やっぱり尾瀬に来てよかったと思ってもらいたいからね。 あと尾瀬はやっぱり夕方がいいね。夕焼けが池塘に映って美しい。 なかにはね、誰も歩かない尾瀬を歩きたい、というお客さんもいるんだ。 夕方になって、日帰りのお客さんが帰って、木道の後ろにも前にも誰もいない尾瀬を満喫したいと言って来るんだね。 尾瀬はやっぱり泊まって1日の姿を見て欲しい。星も見えるし、夏になれば蛍も飛ぶし。せっかく遠くから来るならゆっくりして欲しいね。 1日の中で時間によって景色が変わるし、色々な季節ごとにも変化があるからね。 春夏秋、それから残雪。リピーターのお客さんはそういう感じで来るね。 春に来たお客さんが、「永井さんが良いって言ったから、秋に来たんですよ〜!」なんて来てくれたりね。 またその時は紅葉がすごく良かったの。 別のお客さんをガイドしている時に無線が入って、「こういうお客さんが永井を探してるぞ!」「じゃあもうじき竜宮(尾瀬の中の地名)で行きあうかな」なんて、向こうから手を振ってきてくれたりね。何度も来てくれるっていうのはありがたいね。 一番オススメは難しいけど、自分は秋の尾瀬が好きだなぁ。アヤメ平から見る草紅葉はすごく綺麗だよ。

一今後の目標を教えてください

もう70歳なので、できる限りはやれればね。どのくらいまでできるかなぁ? やっぱし自分がストック(杖)をつくようになったら、ガイドとしてはお客さんと歩けないでしょ。 あと3年くらいかなぁ?あんまり無理をしないで、できる限りやりたいね。

アピールポイント

尾瀬は自力で行くこともできますが、現地の植物や歴史に詳しいガイドに同行することで、その魅力をより感じることができます。 片品山岳ガイド協会では、お客様のご要望に合わせた各種ガイドプランをご提案いたします。 また、尾瀬以外にも冬季のスノーシューツアーや雪山登山ガイドなども行っております。 詳しくはお問い合わせください。 片品山岳ガイド協会 0278-58-7801

-コーディネーター紹介-

私もたまに仕事や遊びで尾瀬に行くので、色々なガイドさんや尾瀬で働く人に行きあいますが、その中でも永井さんは、誇張でなく「尾瀬に行ったらほぼ必ず会う」くらいの方です(笑)。それくらい尾瀬に多く入って、色々な表情の尾瀬を見ているガイドさんの一人だと思います。3年といわず元気にがんばっていただきたいです!

ID117 群馬県片品村

ほんま ゆうみ

本間 優美

1982年東京都生まれ。大手通信会社でのサラリーマン生活を経て、趣味の山登りがしやすい環境を求めて片品村に移住。新米猟師。 尾瀬国立公園で増えすぎた鹿の問題を多くの人に知ってもらうべく、地域で排出された獣革を商品化する「尾瀬鹿プロジェクト」に「尾瀬鹿工房かたしな」として取り組んでいる。