噛めば噛むほど味が出る。カツオ人間、山中昭典の郷土愛。

高知県土佐市

やまなか あきのり

山中 昭典

土佐市宇佐町に生まれ育つ。 大学進学を機に一時上京。そのまま県外の大手商社に就職するも、6年前に帰省し家業の水産加工業を継ぐ。 一時東京に出てきていた時期があったからか、どこか都会的な雰囲気を醸し出している方である。

一どんな活動をしていますか?

鰹などの水産物を加工する事業をやっています。
水産物を漁港から取り寄せ、それらを商品として店頭に出せるような形に加工し、そして市場に卸しに行く、ここまでが我々の仕事です。名前に「水産」という文字が付くので、漁師さんとの関わりが多い業種なんじゃないかと思われる方も多いと思いますが、実は彼らと関わる機会は殆どありません。その代わり、県内外の水産物を扱っているお店や企業と関わる機会は多いです。県外の水産物を扱っているお店や企業に直接、自社商品を売り込まないといけない時などは大変でした。今では食品の展示会という形で、県外のお客さんともスムーズに交流できる場が設けられています。
最近は商品開発にも力を入れていて、女性にも抵抗感なく手に取ってもらえるような燻製を作ったりもしています。徐々に東京の方にも販路を拡大していて、今後、成城石井さんやKALDI COFFEEさんにも商品を出すことが決定しているんですよ!

一はじめたきっかけはなんですか?

僕が始めたのではなく、元々家業として営んでいた会社を継いだんです。実は、150年ほど続いている老舗でして。継いだ理由は、やはり郷土に対する愛の強さですね(笑)。
同じような理由から帰省して家業を継ぐ人、実は結構多いんですよ。実際、現在も郷土愛が仕事の活力です。自分の仕事を通して宇佐の町が少しでも盛り上がれば良いな、と思っています。ただ僕の場合、地元の支柱産業に携わっていることに対して、やりがいと同等に使命感も強く感じています。6年前に帰省した時、町全体の士気の低さに愕然としたんですよね。段々と衰退していく地元の未来を悲観している人ばかりで、地元の酒場に行けばネガティブな会話ばかり耳に入ってきました(笑)。
そんな会話を聞いてから、自分がこの町を盛り上げなきゃ、と強く思うようになりました。

一一番大切にしていることはなんですか?

新しいものが入ってきたら、率先して手をつけるようにしています。
〝もの〟という抽象的な言い方をしたのは、これがどんなことにも言えるからです。新しい技術、新しい注文、新しい人。新しく入ってきたものには、率先して働きかけるようにしています。というのも、宇佐には古くから少し閉鎖的な側面がありまして。四方を山・川・海に囲まれているので、昔は自分の町で採れる食材だけで生活が成り立っていて、外部のコミュニティーと交流する必要がなかったんですよ。今でこそ海産物の不漁などもあり交流は欠かせないものとなりましたが、その性質がまだ残っているんです。更に年配の従業員の方が多いので、そのことも相まって新しいことに抵抗感がある人が多いんですよね。
対して、自分は一度県外に出ていたこともあり抵抗感が比較的強くないので、その閉鎖的な性質をカバーすることも自分の役目だと思っています。

一今後の目標を教えてください

前述の通り、現時点で東京方面の販路を徐々に拡大できているので、この勢いを失わずどんどん県外に進出して行きたいです。個人的な目標としては、「ロード・トゥー・1億」という標語を掲げて、それを達成すべく頑張っています。読んで字の如く、年収1億円稼ぎたいんです(笑)。
何も、稼いで豪遊しようってわけではありません。稼いだ分、ちゃんと地域に還元します。本当ですよ!!そのくらい地元が好きなんです。でもそれ以前に、総売上額の中に占める地元製品の割合を上げたり、販路を拡大したりと、やらなくてはならないことが山積みなので、そういった喫緊の課題をまず、解決して行きます。自分の仕事を通して、宇佐の町に昔のような活気が戻れば良いなあ、と思っています。

アピールポイント

早稲田大学 文化構想学部 4年 釜塚悠(かまつか・ゆう)
想像するのと実際触れてみるのとでは、だいぶ違う。田舎=お堅い人の巣窟、とばかり決め込んでいた私にとって、大量に飲んだ次の日の朝一インタビューは億劫で仕方がなかった。
しかし今となっては、現場に向かう車の中で「頭痛い。午後インタビューの人、代わって〜。」なんて言っていた自分が恨めしい。インタビュー現場に着き眠気まなこを擦っていると、現れたのは想像の180°逆を行く、見るからに物分かり良さそうなお兄さん。
この人が社長?
「はい、じゃあよろしくお願いしますー。」
アルコールで限界を超えた身体を他所目に、喉の奥から聞きたいことが矢継ぎ早に飛び出してきた。自分でも驚いたが、インタビューが終わる頃には「この町に住むの、アリかもしれない。」なんて思うようになっていた。
前日の飲み会の時から薄々感じていたが、この県の一番の魅力は料理でも自然でもなく、人である。他愛もない会話が、この人たちと交わしているだけで倍楽しく感じる。これは確かに、郷土愛、湧いちゃう。

-コーディネーター紹介-

ID

がくせい

学生

学生が記事を書きました。