持続可能性を考えIT機器を取り入れた新世代の林業

鹿児島県薩摩川内市

たなか ゆうき

田中 佑樹

有限会社田中林業専務取締役。高校を出て1年間鹿児島県の林業の試験場に研究生として勉強していた。平成20年に有限会社田中林業に入社。認定森林施業プランナーとして関東方面で講演をしたりしている。

一どんな活動をされていますか?

薩摩川内市で地主さんと契約した山を管理させていただいています。主に、樹木を伐採し材を生産しています。また植林も行い、50年先を見据えて山を育てることも計画的に行なっています。山の管理は長期スパンで考えていくことが重要です。事務作業も細かく分けて行います。
Excelで資料作成、CADでは図面を引き、さらにGISという森林情報システムを利用し間伐や植林などの作業履歴、森林の所有者や相続の経緯などの管理をしています。弊社では作業量の把握をするために現場ごとに日報を記入し、その日の伐採の本数や太さの平均値から1日の作業量を計算し、1人当たりの生産量を割り出しています。
また、社外では、森林施業プランナーとして平成23年度頃から、地主さんとの交渉のノウハウや山の管理方法などに関して県外での講習も行っています。

一今やっていることについての課題はなんですか?

求人を出してはおりますが、なかなか人材の確保につながっていません。林業の仕事は3Kで、危険・汚い・きついというイメージが大きいかと思います。中でも危険の部分が大きいです。危険をゼロにすることはできないですがリスクを減らすことはいくらでも可能です。基礎からしっかりと学んでいけばやりがいを感じられる職業です。

もう1つの理由として、賃金の低さも挙げられます。鹿児島県は特に賃金が低いので、給与水準を上げていくことが必要だと思います。

一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことはなんですか?

傾斜の急な現場などで無人の機械ロボットが伐採を行ってくれるようになればケガのリスクを減らすことが可能になると思います。弊社が導入している3Dデータスキャナーがあるのですが、それを背負って山の中を歩くと地形を3D化してパソコン上で見られます。そのデータを元に、無人の機械ロボットに指示を出して伐採や搬出作業ができるようになると面白いのかなと思います。

3Dデータスキャナーは、木の太さ・高さ・曲がり具合までわかるので、今後の計画や売上の試算がより容易で正確になります。もし、人の動きも把握できれば無駄な動きを改善し、さらに生産性を高めるシステムが出来るのではないかと思うところです。

一今後の目標はなんですか?

事業の拡大をしていきたいです。今進めているのは来年からの薪の生産です。出荷先は主に枕崎を考えています。
枕崎はかつお節の生産が日本一で、これからも薪が必要になります。和食が見直され、かつお節が注目されていますが薪の生産が追い付いていないのが現状です。弊社はその力になれるよう、事業の計画を始めました。

また地域貢献としてタケノコの生産・販売、近くの温泉を訪れるお客様が気軽に立ち寄れるカフェや物産館などを作り、多くの方々に足を運んでいただける地元にしていきたいです。

先人が植林してきた森林を私たちが手入れし、50年、100年以上先の人々に受け継いでいくことができる林業という仕事にやりがいと誇りを持ち、これからも森林とともに生き続けます。

アピールポイント

木を切るだけでなく、植林もして持続可能な林業を目指している田中林業様の業務内容を聞いて、環境と共存していく今後の社会の在り方を感じました。また、3Dスキャナーやドローンなど新技術を積極的に取り入れようとしている話を聞き、自分の中で林業のイメージが変った気がします。

-コーディネーター紹介-

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株式会社VSN 地方創生VIメンバー

株式会社VSNのメンバーが、「地方創生VI」という全国の自治体の課題解決を目指すプログラムで、現地で活躍するキーマンの方々を取材しました。