地域全体がわたしの家族。地方での新しい働き方を見つけたい

島根県津和野町

しもむらあきこ

下村明子

神奈川県川崎市出身。19歳から陶器屋で10年働き、バイトスタッフから店長へ。古き良き日本の魅力にとりつかれ、川崎での仕事を辞めて津和野へ。地域おこし協力隊として3年間活動したのち、現在は農業研修生として‘自立‘をテーマに生活を育む。

一どんな活動をしていますか?

今は、農業研修生です。この道の先輩、山田達郎くんの農家が研修先なので、彼のお手伝いをしています。先1年間、研修補助が出るんです。もともとは3年間地域おこし協力隊任期が終わって今4年目でこれ(農業)をやってるんです。

一はじめたきっかけはなんですか?

これはわたしの人生の話になります(笑)高校生の時に母の勧めでピースボートに参加したの。何も考えずに1人で乗って、でも中でお友達ができるんですよね。いろんな人と関わって、異国に行って、異国の空気に触れて。その旅行中に物乞いの子を見たんです。そのときに自分の悩みの小ささに気づかされて、すごい世界が広がって、、、日本で当たり前に生きていたけど、世界を見たらもっと違う生活をしている人がいるし、すべてが当たり前ではなかったことに気づいたんです。でも、ピースポートから帰ってきて、成田から東京に帰る途中に電車に酔っ払ったサラリーマンのおじさんたちが乗って来たの。そこでなんかもうウダウダ塒を巻いとるのをみて、こういう大人にだけはなりたくない。はじめて『日本くだらねー』という反発心みたいなのを抱いたんですよ。そんな中、19才から川崎の陶器屋さんでバイトを始めたの。陶器には一切興味はなかったんだけど、販売員としてお客さんに説明しないといけないのよ。陶器の専門店だから文様の名前とか、専門的な知識が必要だったの。で、自分で勉強したり、陶芸を習いに行くうちに四季のある日本の良さがわかってきたんです。楽しかった。なんだけど、10年間もそこ(職場)にいて、自分の将来が見えてしまってて、自分の人生スタイルとか30代以降の生き方を考えてたんだよね。それに、プライベートでも仕事でも周りの顔色を伺うようになって、だんだんと自分の意思が無くなってたの。そのタイミングで東日本大震災の原発事故が起きて。。自分の中で何かがブツって切れたんだよね。そのあとも2, 3年は陶器屋の仕事は続けてたの。何が起きたのかわかってなかったんだよね、覚えてないの。そんな感じで過ごしていて、ある日雑誌で島根の古民家が今も使われている写真を見て、こーーーーれすげえってなって、「感動しました!」って古民家に手紙を書いたのよ。そしたら、一旦こっちにインターンシップで来てみる?って、返信をくれて、「行きます!」ってそれが島根との最初のご縁。で、1週間仕事休んで行ったの。それが31、2才かな。そこで田舎の静けさを初めて体験して、田舎の魅力に気付いたの。都会に帰ってきても、うるさいし空気も汚れてるし、そこに気づいたから都会もうダメだ、田舎を目指そうってなってIターンを決めたの。定住する上で周りの環境がすごく大事だと思って、人の良さを重要視したの。津和野町の自伐型林業に惹かれたこともあったのと、そもそも自然を大事にするひとに悪い人はいないって思って(笑)、それでここに決めました。

一一番大切にしていることはなんですか?

大切にしていることは、3つあって、、1つは地域の人たちとのコミュニケーション。「絶対にわたしはここに定住します!ここにいたいんです!」って覚悟をしてみんなに言い回って、関係を築いていくの。周りの人たちが一緒にやっていこうっていう雰囲気で助け合えるし、地域全体がわたしにとってファミリーなんだよね。日原というところに住んでいる人たちはわたしを本当の家族として迎え入れてくれてるのよ。2つ目は、そんなコミュニティの中にいても、“いい距離感”を保つこと。近すぎず、遠すぎず、甘えすぎず、ただの依存ではなくて、相互依存の関係でいること。3つ目は、やっぱり、楽しくいること!ここは時間がゆっくり流れているから、自分の時間をもてて、自分のことを考えられる。だから、いちいち自問するの。「その楽しさって偽ってない?自分、流されてない?」ってね。こうやって、自分を大事にしているの。

一今後の目標を教えてください

一生追いかけていく目標は、自立すること。補助金とかではなくて汗水垂らして自分の力で稼げることが自立と思っていて、そこを追い求めてるの。あと、もう1つあって、それは地方での新しい働き方を見つけること。どんどん人は減っていくでしょ。だからそこで仕事先を1つに決めないでいろんなことをするような働き方っていうのを試行錯誤しているの。百姓っていう言葉があるでしょう。農業してる人が百姓っていうわけではなくて、お百姓さんって100のことができるんだって教えてもらったのよ。野菜作ったり、お米作ったり、小屋も造れたり、なんでもできるでしょう。それをできないかなって。でも今の時代、現金は必要だからお金も得ながら、自分一人でなんでもやりますっていう昔の百姓の姿を追ってます。

編集後記

泉 咲希 (イズミ サキ) 20歳
人生何が起こるかわからない、そしてそのきっかけもまた何気ないことだということ。自分の心情の変化に気づいて、いかに素直に行動を起こせるか。当初のインタビュー会場を変更し、お仕事先でもある栗畑の中でお話をお伺いしました。ゆったりとした自然の中で、自分に周りに実直に向き合い未来を語る姿から、人としての豊かさを感じました。

-コーディネーター紹介-

島根県

だいがくせいらいたー

大学生ライター