また、戻りたくなる町をつくりたい

美郷

はやし ともひろ・にしはら まさぎみ

林 朋宏・西原 真公

***林朋宏*銀山街道 江川河畔の宿「亀遊亭」/観光協会会長/ 高校まで美郷町で育つ。大学進学を機に地元を離れ東京へ。その後、酒造メーカーにて勤務後、結婚を機に30歳で美郷町に戻り、亀遊亭を継ぐ。   ***西原真公*浄土真宗本願寺派 西原山 浄土寺の僧侶/ 大学で京都に出る。その後修行をし、実家のお寺を継ぐため、美郷町、浄土真宗本願寺派 西原山 浄土寺の僧侶となる。

一どんな活動をしていますか?

林さん:亀遊亭を経営しながら、粕渕地区のコンテンツづくりを行っています。
西原さん:住職をしながら、社会教育委員として、人づくり活動を行っています。現在は、「かすみの里」という小さな拠点(公民館)を中心に、事務局の方と一緒に人づくりのお手伝いをさせていただいています。
このかすみの里では、生け花や短歌、ヨガ教室等の習い事の教室や、イベントを行っています。先生を核にして、興味のある人を集め、コミュニティをつくっています。

一はじめたきっかけはなんですか?

林さん:地元に戻ってきて、地域の縁の強さを感じたからです。今までは、仕事とプライベートだけでしたが、こちらに戻ってくると、商工会など様々な方と関わる機会があり、人間関係に幅が出ました。地域の方からお客さんを紹介してもらうこともあります。そうやって関わっていくうちに、自分もこの地域のために何かしたいと思うようになり、活動を始めました。

西原さん:少子化や過疎化で、人が段々いなくなっていく状況に危機感を持ちました。町、村が消滅することも嘘じゃなくなってきています。粕渕地区は美郷町の中心地区ですが、今まで行政に任せきりで、横のつながりも少なく、まとまりがあまりありませんでした。そんな中で、少子高齢化が進み、地域の力として、自治会などを巻き込んだ町づくりが必要になりました。さてどうするかとなった時、「ここに暮らす人たちでなにか楽しいことをやっていこう」と盛り上がり、人づくり活動が始まりました。

  • 林朋宏さん 亀遊亭にて

  • 西原真公さん 浄土寺にて

一一番大切にしていることはなんですか?

林さん、西原さん:「帰りたくない町」にしたくないです。色々な理由があって帰れないかもしれないけど、「やっぱり戻りたい」という町にしたい。親や大人が、「地元は何にもない」「町を出ていったほうがいい」とか言ってたら、若者は本当に帰ってこないでしょう。逆に、大人が「いい町だよ」と伝え、いい町にしようとして活動する姿を見せていけば、一旦外に出てた若者もまた戻ってきてくれると思うんです。一旦は外に出たとしたらそこで何か技術などを学んで戻ってきてくれるような町、色んな人が関わって繋がりを持っていこう、そして子どもたちもその繋がりの中で育っていき、学校を出て町を離れても、また戻ってきたい町、地域にしていこうという想いが強いです。

一今後の目標を教えてください

西原さん:今の人づくり活動に新たな人に関わって欲しいです。そこをどうするかかが課題でもあります。自治体にどれだけ人が関わっていけるか、顔と顔が見える距離感が大事です。下町は下町のなかで、横の繋がりがあるからこそ町の良さがある。関わっていくなかで、一人ひとり、誇りや喜び、楽しみ、生きがいが出てくるのが地域の在り方だと思います。

林さん:新しい意見を取り入れたい。新しい人に入ってもらうことで地域は活性化しますから。特に、地域おこし協力隊の方たちなど新しい人たちと、お互い視点や価値観を交わしながら考えていけたらよいと思っています。また、
美郷町商工会の会員数がこの十数年で100以上減少しているので、既存の事業の継承なども行っていけたらいいですね。

編集後記

橋本理沙 (はしもと りさ)21歳
島根県の中でも少子高齢化・過疎化が進む美郷町。林さんと西原さんの生の声は、非常に重みがありました。また、お二人の「若者が帰りたくなる町にしたい」という強い意志には心を揺さぶられ、どんな人でも家族のように想ってくれる、温かい方が多い町なんだと感じました。今回の取材で、自分がなぜ地域創生に興味を持ったのか、どうして地方のために活動したいと思ったのかという原点を思い出すことができました。この経験・想いを一人でも多くの若者に伝えていきたいと思います。

-コーディネーター紹介-

島根県

だいがくせいらいたー

大学生ライター