地域一の地域愛 〜赤字経営から始まる町おこし〜

美郷町

なんばひでゆき

難波秀行

島根県美郷町出身。平成 19 年まで広島でサラリーマンをした後、平成 20 年に親の介護をきっかけに美郷町へ戻り、地域おこし協議会に参画する。現在は合同会社だいわもんど 道の駅の駅長。

一どんな活動をしていますか?

合同会社だいわもんどの社員として道の駅グリーンロード大和の運営をしています。カフェ・直売所・小売店の3つの面を持つ道の駅です。
まずカフェについては、道の駅が国道沿いにあることもあり訪れるお客さんの多くがドライバーさんたちと地域の方々です。ここは地域住民にとって憩いの場にもなっていると思います。このカフェでは山くじらの料理の提供も行っています。
次に直売所は、この道の駅の核を担います。産直組合の農家さんの野菜を販売しています。現在は約 30 の農家の野菜が並んでいます。こちらの直売所に出荷されているものの特徴は「多品種少生産」している農家さんの生花や野菜であることです。販売されている野菜一つ一つに農家さんの名前が書いてあり、作り手の分かる安心で安全な商品です。また学校給食用に野菜を出荷していますが、余ってしまった野菜も扱っています。
最後に小売店では、食料品から生活必需品までお客様のニーズに合わせた商品の販売をしています。この道の駅がある長藤地域からは別の地域にある商店へのアクセスが悪いです。そのため交通手段に悩む高齢者をはじめ子連れのお客様がこの小売店「だいわマート」へよくいらっしゃいます。
ちなみに「だいわもんど」由来は、立地地域名にあるダイワとフランス語であるル・モンド=大衆を混合させて地域住民間での循環が生まれる場所となって欲しいという思いが込められています。

一はじめたきっかけはなんですか?

この道の駅は平成5年から営業しています。当時、全国的に道の駅が少なく、実はこちらの道の駅が「島根県第1号店」です。当時は株式会社グリーンロードだいわ(第三セクター)が経営を担っていましたが、長期にわたる赤字経営でした。
今から10年ほど前、広島からUターンで帰って来た私は都賀・長藤地域協議会に所属し住民による地域振興に力をいれていました。そんな時、こちらの道の駅の経営難問題の解決を起点に地域住民による町おこしの見える化をしていく動きがおきました。平成27年、地域協議会から出資や仲間を募り合同会社だいわもんどを立ち上げ、道の駅の指定管理を受託したことが道の駅事業の始まりです。立ち上げ当時は周辺地域である長藤・都賀西・都賀本郷・上野の4つの地域に各1人、計4人の地域おこし協力隊が配属され企画、産直等の部門ごと事業展開がスムーズに行われました。特に産直部門については、当時の協力隊メンバーのカヌーの里おおちへの試験的出張売り出しで町民への周知ができ、集客を迅速に行えることができました。このように道の駅は新たな戦略を講じることができ、様々な挑戦が出来る環境でした。こうした地域おこし協力隊の働きかけは民間だけではできません。今後協力隊のような道の駅から地域をよくしていきたいという人がいれば、喜んで迎えたいです。

一一番大切にしていることはなんですか?

売上を上げることよりも、道の駅だいわもんどを利用している地域の方々の生活を維持することが第一目標です。道の駅を拠点に新しく消防出張所ができ、新築住宅が周辺にも建設されています。道の駅で人と人との交流が生まれることで、道の駅のみならず新たな企画が生まれます。そして地域内の交流にとどまらずインバウンドや国内観光客誘致にも繋がっています。

一今後の目標を教えてください

今後は次世代の道の駅の駅長を担う後継者を探していきたいです。現在は駅長として道の駅の運営をしていますが、活動作業に追われてしまい、他地域の道の駅との交流に全く手が回っていない現状です。新たなメンバーを加え、これから新規事業の開拓など挑戦をしていきたいと考えています。

編集後記

黒鎺知也(くろはばきともや) 20 歳
今回取材をさせて頂いた道の駅グリーンロード大和は島根県では最初の道の駅であり、その後全国に広がった道の駅ブームの先駆けです。尚且つ、地域おこし協力隊も島根県は全国 3 位(2018 年現在)と若者が地域に入り活躍できる状態が確保されていると実感しました。道の駅グリーンロード大和の活動によって地域活性化が実行されていることが地域の人の交流の増進だけでなく、ハード面の変化にも現れていたのを目にすることができました。またローカルでは、税金以外で収益をマネタイズすることの難しさも知ることができました。今後、私自身が地元である長野県飯山市に戻り事業を展開する上でローカルという点で存在する課題点は共通しているので、この学びを生かしていきたいと思います。

-コーディネーター紹介-

島根県

だいがくせいらいたー

大学生ライター