「気ままに、人のために」まちに愛されるみんなの先生

益田市

みよし しげこ

三好 成子

島根県益田市出身。教師として益田市のあらゆる小中学校に勤務し、定年退職するまで「54年間」学校という教育のフィールドで過ごした。定年退職して20年経った今でも、多くの地元の人から「先生」という愛称で慕われている。現在は高齢者が集う きばらしの家「三の滝」を定期的に開き、地域の社会福祉拡充に貢献している。さらに自宅の空き部屋を活用した民泊「三四四」を経営している。

一どんな活動をしていますか?

きばらしの家「三の滝」という高齢者が集えるサロンを月一回ほどのペースで開いています。ちょっと気晴らしでもしようかな~という軽い気持ちでお年寄りが集える場です。体操やハーモニカ、あと参加者のお誕生日会もやったりします。最高齢で92歳の人も来られますよ。サロンの日程を知らせるチラシの配布が遅れたときは、今月はまだかいね?と催促されるほど皆さん楽しみにしてくれてます。それと自宅で「三四四(みよし)」という民泊も経営しています。全国各地から、時には中国やフランスなど海外のお客さんも来てくれます。やりがいがあって、楽しいですよ。

一はじめたきっかけはなんですか?

手段は何でも良かったんだけど、「人のために何を貢献できるのか」というのはずっと思っていたこと。地域に住む多くは高齢者で、みんな人と話す機会が少なく寂しいと言っておって。誰かが何かせにゃいけん。私もいずれは皆さんのお世話になる時が来る。だから出来る間は何かやろうと思っていたんですよ。ちょうど2008年度に匹見支所の方で地域づくり戦略プラン連絡調整会議ってのが立ち上がったんです。それを機に何かやってみようと気楽に始めたのが、高齢者がふらっと集える場としての高齢者サロンです。もともと元組地区を中心に始めたんだけど、他の地域にもこの活動のことが徐々に広まって参加させてもらえんかという声が増えましたもんで、どうぞどうぞと来てもらいました。今は全地区対象になっています。サロンを始めて今年で10年目ですね。
民泊もひょんなことから。大きい家に一人で住んでいるもんで、何か活用できないかと思って島根県の行政の方とたまたま話をしたことがあってね。その時に民泊をやってみてはどうかと勧められたのをきっかけに始めました。中国の方が来られたとき、そば打ちを教えてあげると物凄く気に入って宿泊の間は毎日一緒にそばを打ったりすることもあったりなんかして。人と繋がって、喜んでもらえるのは嬉しいですよね。

  • そばづくり。左から3番目、三好さん。

  • 民泊 三四四。中央、三好さん。

一一番大切にしていることはなんですか?

まず、「気難しく考えず、自然体で、身の丈に合った動きをする」こと。人が少ない地域なもんですから、それぞれがいろいろやらなきゃいかんのですよ。私は高齢者サロンや民泊、他にも公民館の管理等いろいろやっていますが、楽しくできているのは決して無理をしないからです。そうすると長続きもするでしょ。
そして一番大切なのは、「自分は何もしてもらえんかった」ではなく「自分は何をしてあげたか」と考えてみること。これが私の持論です。小さな地域だけん人との繋がりは何よりも大切。これまでも散々周りの人に世話になったんだから、自分が足腰丈夫なうちは自分が恩返ししなきゃという気持ちで何事もやっています。私は長いこと学校で先生をしておりましたけど、益田市の教育には「つろうて(連れ合って)子育て」という考え方があるんです。地域や人との繋がりを大切に、地域全体で集う機会を設けて協力し合いながら子供を育てる。特に匹見の人たちはそういう体験を小さいときから随分してきたもんで、周りの人を大事にします。いつも世話になっている御恩を周りに私も返していこうというのは心がけていますね。私は学校を離れて20年経ちますが、今も教え子が一緒に高齢者サロンの運営を協力してくれているんですよ。やっぱりみんな地域に対する思いがあるんよね。

一今後の目標を教えてください

今やっている活動をやり続けること。これまで出来ることはやってきたし私も80歳過ぎていていつまで健康でいれるかわからんので、これから自分で新しいことをやりたいというのは特にないかもしれんねぇ。でも、今私たちがやっている活動を後継者に継いでほしいという思いはありますね。この町や人の繋がりを守ってくれるのは若い世代です。彼らが継いでくれたらそんな嬉しいことはないね。若い皆さんに大いに期待しています!

編集後記

2018.12.02 屋 優美(おく ゆうみ)21歳
地元の方々にとって「先生」といえば三好さん。インタビューの最後は、私たちを優しさで包み込むような朗らかな表情で「皆さんのような若い世代に期待してるけえね」と、未来を担う若者の背中を押してくれるような何とも先生らしい言葉を贈ってくれました。民泊「三四四」にも宿泊させて頂きましたが、壁の至るところに三好さんが大切にされている持論や教訓が。“「自分は何もしてもらえんかった」ではなく「自分は何をしてあげたか」と考えてみる”という言葉もその一つです。それらはなんとなく、小学校の頃教室に貼られていた学級目標や習字作品などを思い出させるような懐かしさとあたたかさがありました。「三好先生にまた会いたいから、益田市にもう一度行きたい…」三好さんと出会ってそう思うのはきっと私だけじゃないはず。

-コーディネーター紹介-

島根県

だいがくせいらいたー

大学生ライター