一どんな活動をしていますか?
松本電機商会は1951年、祖父の代に創業して家電販売、修理、リフォーム設備などのサービスを提供しています。私の生まれは茨城県阿見町で16年ほど前は車の整備会社で働いていました。知人を介して看護学校に通っていた妻と出会い、結婚を機に矢祭町に移ってきました。
越してきた当初は知り合いがほとんどいない状況だったので大変でした。商工会青年部や消防団に入り、そこでの仲間の繋がりから徐々に地域の方々との関係値を築いていきました。
パナソニック系列店でもあったのでマーケティングスクールに通って学び、あとは実際の体験を通して学びながら親の世代から経営を引き継ぎました。昔のやり方だけでは通用しないことも出てきているので自分なりに考えて路線を変えて、地域に密着した細やかなサービスを提供するように取り組んでいます。
一今やっていることについての課題はなんですか?
一番大きな課題は人口減少だと思いますが、矢祭町はまだ町に3件の電機屋が残っていて元気な方だと思います。全国でも電機屋さん難民がいると言われるほど、電機屋が少なくなってきています。量販店では物は買うことはできても取り付けや使い方が分からないといった問題やメーカーに出張で来てもらえば費用もかさむといった問題が起きています。
今はネットを検索すれば分かることも多いですが、高齢者の方は簡単に行うことができないのです。高齢化や人口減少の影響から顧客数も減少傾向にあるので、現在は矢祭町だけでなく隣町や若いユーザー層の開拓が必要となっていて、頭の中の記憶だけではなくメーカー提供のマーケティングツールのデータを活用して取り組んでいます。電球1つも交換できないお年寄りがたくさんいらっしゃいますので、電話がかかってくれば、電球1個でも交換に伺うといったお客様に寄り添ったサービスが求められています。
また、子育てや教育にはとても手厚いサポートを受けられる矢祭町ではありますが、義務教育が終われば、町外に進学し、自宅から通えない場合は下宿やアパートを借りることもあります。そして矢祭町の中での就職先もないので都会に出て行って戻ってくることは稀な状況です。
一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことはなんですか?
矢祭町は光回線環境が抜群に良い町でもあります。矢祭小学校の保護者家庭環境で見れば85%くらいは環境が行き届いている状況です。矢祭町と塙町ではIP電話も敷設されています。
また、出生率も高く、子育てに優しい町とも言われていますが、町には高校がありません。通学には専用バスなどが配備されていますが、交通費負担が大きく降り懸かります。それに加えて宅地も多くないため、若い世代は町外に引っ越す方も多いです。
コロナ禍によって近所の方が実家に戻ってきてテレワークをされている状況もあるので優れたIT環境を有効活用し、矢祭町でテレワークをされる方々が増えてくれば地域経済も活性化し、新たな仕事の創出にもつながると思います。そうすれば、矢祭町で働きたいという想いを持っている子どもたちも住み続けられる町になっていけると思います。
一今後の目標を教えてください
根本的には昔から変わらず「お客様が困っていることの解消が一番」です。先ほどコメントしたIP電話には朝と夕に地域の情報配信もされていたり、新聞「夕刊矢祭」は矢祭町の大人から子どもまで地域のほとんどの方が見ていて、地域のつながりがとても強い町です。
また、盆踊りも商工会が独自主催したり、成人式では祝い餅といって餅つきをしたりと様々な取り組みを行ってきています。イベントではゆず部会や鮎部会から出店を構えて、地元産物のアピールにも取り組んでいます。今年はコロナ禍の影響でこのようなイベントが実施できなかったこともあり、県内初めての試みだと思いますが、オンライン抽選会を企画しています。
このような活動を通じて子供たちの郷土愛を育み、「住んで楽しい町作り」を進めていきたいと考えています。
編集後記
ゼットシューズやファイテン磁気チタンネックレスからも野球を愛し、地域の暮らしを守り続ける松本さん。「洗面所の電球が切れちゃったから交換してとお客様から言われれば、あのメーカーのあの型番のものだねと分かる」というエピソードからも「お客様が困っていることの解消が一番」という想いが伝わってきました。コロナ禍により震災時と同様に影響を受けていると言うお話ですが、「笑」という文字に込められた夢に向かって頑張る息子さんと共に「住んで楽しい矢祭町」へとこれからも地域を支えていって頂きたい。