料理人歴55年 仁木町の名物板さんが育てた北海道一の紫陽花

北海道仁木町

きのした よしみつ

木下 義光

樺太出身、夕張育ち。8人兄弟で家計を支えるため、12歳から北海道夕張で日本料理の修行を始める。その後、東京新宿、銀座で修行を重ね、板前として日本各地で腕を磨く。2015年に仁木町で季節料理こぶしを開き、現在に至る。 72歳になった現在も現役で、全国から訪ねてくるファンのために料理の腕を振るう、言わずと知れた仁木町の名物板さんである。Youtubeチャンネル「こぶしの板さん」のチャンネル登録者数は、4万人を超える人気チャンネル。(2022年10月時点)

一どんな活動をされていますか?

7年前から「季節料理こぶし」を開き、板前をやっています。地図では見つけにくい場所にお店を構えていますが、有難いことに地元の方々やSNS(食べログ・YouTube)を見た方々など、多くのお客さんが来店されます。

女将さんと2人でお店を切り盛りしていますが、週末には、特に多くのお客さんが来店されるため、ボランティアの方々にお店を手伝ってもらいながら営業しています。「改めて多くの方々に支えられているのだな」と実感しています。

23年前から女将さんと店の裏山に紫陽花を植え始めました。始めた当初は、夜通し作業を続けたりと大変苦労しましたが、ようやくここまで沢山の紫陽花が咲き誇るまでになりました。約4000株の紫陽花が咲いていますが、仁木町、後志管内でこれだけの紫陽花が咲いているのは、この場所だけではないかと思っています。来てくれたお客さんには宣伝していますが、まだまだ周知されていないのか、仁木町内でもあまり知られていません。

一今やっていることについての課題はなんですか?

72歳になりましたが、やはり板前の後継ぎについてよく考えています。能力が高くなくても好きな人間がやってくれれば良い。と考えていますが、ある程度料理の経験や包丁の技術がないと板前は務まらないと思います。

私の息子が40歳になりますが、この店をどうするかと聞いてみたら、「父さんだから人が来る。俺に変わったら誰も来なくなって終わるから俺は継がない」と言われました。なるほど、後を継ぐということは、血の繋がった子どもでさえも難しいことなのだと思いました。

後継ぎとなってくれる人には、私が引退するまでに料理の技術や板前の心構えを身につけるだけでなく、自分らしさをどんどん出していってもらいたいです。それが修行だと私は考えています。

一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことはなんですか?

これからの時代、自分という確固としたものがないと何もできないと思います。私には自分の個性や料理人としての腕前があったため、お客さんからお店が愛され、板前としてやってこれましたし、YouTubeでも芽が出たのだと思っています。そういうものを皆に持てと言っても難しいかもしれません。

人生の中で、苦労した経験や修行となる期間を過ごした方々が、どれくらいいるでしょうか。会社員として40歳、50歳になってから会社が倒産し、職を失った時、会社を離れて自分の力で生きていく力はあるでしょうか。

仮に自分の人生の3年、5年を何かに全力で打ち込んでも、一体何に後悔するのかと思います。真剣に取り組んだことは身につくので、自分の財産になります。若い方々にはやりたい事に全力で取り組み、自分なりの人生の修行の期間を過ごしてほしいと思っています。そうすることで、これからどんな困難や苦難に直面しても自分の力で乗り越えていけるようになると思います。

一今後の目標はなんですか?

これからもこの場所に紫陽花を植え続け、世界一沢山の紫陽花が咲き誇る場所にすることです。東藻琴の芝桜を見たことはありますか。中鉢さんという方が植えたのですが、60歳を過ぎてから芝桜を植え始めました。今では、眼前に広がる芝桜は、世界一ではないかなというほど絶景です。初めて見た時は、驚きと感動を覚えました。花の力は凄いですよ。

内地では、紫陽花が有名なところは沢山ありますが、北海道ではあまりありません。だからこそ、この場所に紫陽花を植えようと思いました。道内のあちこち見て回りましたが、この場所ほど紫陽花が咲いている場所は知りません。この場所にこんなに沢山の紫陽花が咲いていることをもっと多くの方々に知ってほしいです。ここの紫陽花を見に来て下さる方々が増えれば、仁木町の町興しに繋がるのではないでしょうか。

編集後記

木下さんの魅力とも言える軽快な話術や独自の着眼点で、インタビュー中は、終始楽しませて頂きましたが、一方で、戦後の南樺太の集団引き揚げの生い立ちなど、大変貴重なお話を伺わせて頂きました。様々な苦労も、木下さんの負けん気の強さで跳ね返し、力強く人生を歩んで来られたのだと窺えるお話で大変勉強させて頂きました。

全国のファンの方々が、こぶしを訪ねて来られます。木下さんもお客さんとの交流を楽しみにしているとのことで「もう俺の店ではない、みんなの店。みんなのお店だから勝手に閉めれない」と仰っていました。
まさにファンに愛され、ファンに支えられるお店ですね。皆さんもぜひ季節料理こぶしで板さんとの楽しいひと時をお過ごし下さい。

-コーディネーター紹介-

ID 北海道仁木町

にしむら まさゆき

西村 雅幸

2019年にModis(旧VSN)へ入社し、インフラエンジニアとしてシステムの導入からシステム設計に従事。
2021年からパブリッククラウドの提案や設計を行っている。地方創生VIの活動理念や地域課題の解決に貢献したいとの理由から2022年3月に本活動へ参加。