淡路島の観光を切り口に、島を盛り上げる循環を生みたい

兵庫県洲本市

ふくうら やすお

福浦 泰穗

一般社団法人 淡路島観光協会 事務局長
25歳で淡路島に帰島し、実家の老舗旅館で働く。40歳で観光協会へ所属。約18年間の観光協会人生の中において、市町村合併の観光協会融合に尽力する。現在は同協会の事務局長として住民や観光客、新たな挑戦を志す方々をサポート。

一どんな活動をしていますか?

今年で観光協会に所属して18年となり、今は淡路島観光協会の事務局長として、“淡路島の魅力を発信する”、“多くの方に関心をもってもらう”、“一人でも多くの人が淡路島を訪れてくれるようにする”、これらを念頭に置いて活動しています。平たく言うと、淡路島の観光収入をいかに増やすかということです。淡路島には昔、1市10町ありました。観光協会ももともとは、11の市町にそれぞれあったのですが、2005年には各市町村が現在の3市に統合されて、2010年には観光協会も一つにまとまりました。各市で観光を盛り上げるというよりは、『淡路島』として盛り上げることで、観光協会が一つにまとまることも必然的なことだったと思います。

現在は、各市から1名の計3名、県から1名と合計4名に出向していただいており、総合戦略と合わせて推進していこうと思っています。

主な活動例として、観光協会会員の方を中心に、島外・島内の方のネットワークを作り、挑戦をサポートしていくための支援を行っています。12年前から、淡路牛を使った牛丼を打ち出しました。当時は、カレーと悩んだのですが、カレーは各店舗の特徴を出すことが難しかったです。こういった食のPRは、『レシピを作ってこれを売ろう!』と企画するケースが多いです。しかし、淡路島の場合には、使う素材だけ決めて、レシピはお店に決めてもらおうというやり方をしました。そのやり方がとても面白いとバズって、取材もいっぱい来てくれました。淡路牛をアピールするために、複数の飲食店が趣向を凝らした牛丼を一枚のパンフレットにまとめ、キャンペーンを行ったりしています。実はもともと板前なので、ポスターに載せている牛丼は自分で作りました。

現在では、いろいろな島グルメが出てきています。例えば生シラス丼・生さわら丼・淡路島ぬーどる・淡路島スイーツ・淡路島バーガーなどです。最近はサクラマス・由良の赤ウニ・三年トラフグ・ワカメなどもあります。今は、先ほど挙げた新たな目玉食材と目玉食材を組み合わせて新たな商品を生み出すということが自然発生するような段階まで来ていると思っています。

一今やっていることについての課題はなんですか?

やはり、まだまだ観光客を増やしていかなければなりません。実は、観光客は、京阪神地区から訪れる人がほとんどです。外国人観光客や首都圏からの観光客の割合は少ないです。しかし、コロナ禍の中においては、逆にこのような構成が幸いしました。京阪神地区からの観光客はそこまで減少していません。Gotoトラベルなどの利用もあり、ホテルなどは客足が7割以上戻ってきています。それでも、まだまだ観光客を増やしていきたいと思っています。

今は明石海峡大橋ができて、自家用車で訪れること人がほとんどとなりました。過去には船での来島や団体客のバスツアーがあり、七福神巡りなどのツアーが人気でした。淡路島への流入方法の変化に伴う、“団体客”から“個人客”への転換はうまくいっていると感じています。しかし、個人旅行が増えた分、ニーズが多様化していることも感じています。そのニーズをどう受け取り、対応していくかが観光地の底力であると思っています。

淡路島には幅広い魅力があり、ちょっと考えるだけで、歴史、伝統、文化、食、自然、癒しなどが浮かんできます。また、それぞれに詳しい人もちゃんといます。ただ、その魅力を個人のニーズに合わせて全体をコーディネートして訴求できるような方はまだまだ不足しています。実際、コーディネートを仕事にする人もおらず、まだまだ善意のボランティアの方に頼っている状況です。

近場である京阪神以外の観光客、具体的には“首都圏”や“海外”から訪れてもらうことを考えていくうえで大事なのは、淡路島に来てからの『交通手段』だと思っています。自家用車がない方でも、淡路島までは新神戸からバスが出ています。ですので、淡路島に来ることはできても、島内の移動が満足にできなくなってしまいます。免許を持っていない方や海外からの観光客がレンタカーをいきなり運転するのは難しいので、ストレスをかけずに観光スポットを回れる仕組み・方法を整備するのが必要だと考えています。

一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことはなんですか?

ITやデジタルの力などを活用しマーケティングを行い、どこに投資すべきかを判断していきたいと考えています。観光協会で保有している様々なデータを可視化することが出来れば、多様化しているニーズを把握することが出来ると思っています。その結果を受け止めて、『どのようなキャンペーンを行っていくか』、そこがIT・デジタル活用の可能性だと考えています。

正直、今は勘と経験で進めているところも多いです。ただ、次の淡路島の観光ステージを見据えると、デジタル活用の必要性は感じています。コロナの影響もありますが、時代の流れに合わせて淡路島も変わっていかねばならないと感じています。一方では、費用対効果などをしっかり検討しないと、取り組みが進めづらいというのも事実です。説得力のあるデータ・数字・資料を基に新たな施策の検討ができることがITやデジタルが持つ可能性だと思います。

現在は、インスタグラムを使って、淡路島の魅力を知ってもらう取り組みなども行っています。インスタ映えするようないい写真はあるのですが、見てもらわないことには話になりません。SNSなどを使って発信を強めていきたいと考えています。しかし、積極的に誘致していきたい海外観光客にどう届ければよいのかが定まっていません。実は見てくれている人がいるということもあるかもしれませんが、現時点ではそれをキャッチすることもできていません。

『 “どこに”、“だれに”、“どうやって”情報を発信していくのがよいのか?』ということを常に考えています。そして、閲覧実績をもととしてPRの内容や方法を変えていく、この2つが次の課題であることは間違いないと思います。

協力者をどんどん増やしていき、より効率的な方法を見つけ出すことによって、発信力を高めていきたいです。

一今後の目標を教えてください

端的にお伝えすると、『「食」に代わる新たな目玉をみつけること』、『京阪神以外の新しいターゲット層に向けた発信を強めること』の2点があげられます。もちろんそれらは淡路島に来ていただくためです。 

「食」に代わる新たな目玉として、現在は「絶景」を狙っています。“明石海峡大橋が見えるサービスエリアの観覧車”や“明石海峡大橋を渡るときに見える淡路島の遠景”で観光のスイッチが入るようにしたいです。まだまだ知られていない絶景ポイントも多くあります。ぜひお知らせしていきたいですね。今は、絶景コンテストなどを行ってもインスタグラムのフォロワーが激増するということはありません。一時的なものに終始してしまうので、ブームが継続するような取り組みをしていきたいと思います。

淡路島には『日本の始まりの島』という神話があります。洲本城など歴史的な建造物や遺産があります。その一方で、著名な方の建築物やゴジラ像といった最近の物などもあります。古いものと新しいものが混在しているので、流行にも意識しつつ、揺るがない・変わらない、良いところをミックスした観光地を目指したいです。そのあかつきには、日本の観光地として淡路島をしっかり根付かせ、それを海外に発信していくというアプローチも期待できます。

まだ知られていない淡路島の魅力を、まだ知らない方に知ってもらうことで、より多くの観光客の流入を実現し、それをきっかけに挑戦を志す人が淡路島に増え、その取り組みを知った人がさらに淡路島を訪れる。そんな良い循環を生み出すことを狙っています。

編集後記

淡路島観光の未来を、淡々と静かに、ただ確かな熱意をもって語っていただきました。洲本市に25歳で戻ってきて、そこから淡路島全体の観光に対して考え続ける福浦さん。ご自身が新たな挑戦を始めた経験があるからなのか、新しい挑戦をサポートしていきたいと語っておられたのが非常に印象的でした。

-コーディネーター紹介-

ID 兵庫県洲本市

かわはた けんご

川端 健吾

ITエンジニアとして社会人のキャリアをスタートし、VSNへ入社時に営業へとキャリアチェンジ、大手企業を歴任し、営業マネージャーとして勤務中。
現在の趣味はゴルフ(100前後)と高校生時代に行っていたラグビー観戦。また、最近はジムに通って体型のシェイプアップに努めている。