一どんな活動をしていますか?
幼少期に三重県の父方の実家にあったミカン畑、家庭菜園で過ごしたことがきっかけで、中学生のころには農業を志し始めました。大学では植物病理学を専攻し、茨城県で野菜栽培の経験と、自然栽培との出会いを経て、東京都有楽町で行われていた移住フェアで高知担当の方に相談をした際、土佐文旦で新規就農できると知り、地域おこし協力隊の制度を利用して東京から土佐へ移住しました。
慣行栽培や勘を頼りにするのではなく、土壌分析結果をもとに肥料を最小限に抑えて、自然環境に配慮した生物農薬等を使用し、環境にできる限り配慮した土佐文旦の栽培を実践しております。
一今やっていることについての課題はなんですか?
開花時期における訪花害虫や、カミキリムシの防除です。商品の見た目が悪くなってしまったり、果樹そのものへ致命傷を与えてしまうことがあります。農薬も選択肢を誤ると、魚毒性、水質汚染、ミツバチの帰巣本能阻害など周囲環境に影響が出るので気をつかっています。
園地を次世代へバトンタッチするシステムがうまく機能していないように思えます。害虫が増加する原因の1つとして、高齢で規模縮小される農家や引退された農家の園地が、次の担い手がいないまま、耕作放棄地となってしまう現状があります。
県内だと販売単価が低い傾向にあるため、地産外商を進める必要があります。ただ、土佐文旦の知名度はまだまだ低く、かつて流通が多かった高齢者世代には懐かしいね、と、手に取ってもらう事はありますが、若い世代は知らない人の方が多いですね。
一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことはなんですか?
投資価値は検討した上での導入になりますが、害虫の防除にIoTを取り入れることができるとより効果があると思います。センサーを用いて得られるデータをビックデータとして集め、害虫の発生時期や生息域を予測して対策がとれます。
また、耕作放棄地の引き継ぎも円滑になれば、より多くの仲間が増え、手付かずだった部分への新しいアイデアも生まれると思います。
食育事業も絡めた若い世代への展開や、首都圏の方々へ興味を持ってもらえる仕掛けが増えると嬉しいです。
一今後の目標を教えてください
環境に最大限配慮し、食べる人はもちろん、作る人、周りに住む人にも安全に作られた農作物を消費者の方々へ広めていきたいですね。また、地域おこし協力隊の残り任期1年間で、即戦力となる土佐文旦の畑を確保することや、茨城県での経験を活かし野菜栽培にも挑戦していきたいです。
土佐市定住に向けて、協力隊で果樹栽培を学ぶのみならず、地域の清掃活動や消防団、青年団に参加をして更に積極的なコミュニケーション、情報交換をすることで地域に溶け込めるよう努めています。
編集後記
幼少期から一貫して、やることを突き詰めて諦めない心を持っている方です。常にチャレンジングな精神であると共に、どうしたらできるか、よりよくなる方法はなにか、常に考えて行動に移している水谷さんの話は、私にも活力を与えてくれました。私個人としても土佐文旦をひろめるため、知人や親族にもインタビューで聞き得た事実を伝え、魅力を発信しています。
生産者のこだわりと「おいしくて、からだにいいもの」の付加価値を生み出せる同志が集まるよう、お手伝いさせていただけたら幸いです。