一どんな活動をされていますか?
私は1969年にカーオーディオの専門店を開業いたしました。日本で最も古いカーオーディオの専門店です。創業よりずっと音質向上の研鑽に努め経験で培った技術ノウハウを活かした商品を開発して、音のマーケットに提供させて頂いています。
仕事の一例を紹介しますと、医学教育用の「聴診装置」を作りました。
心臓専門医の先生から、『聴診の仕方について“どこに当てるのか” “どの位の時間をかけて聴くのか” “聴診の体勢” などは教える事が出来るが、明瞭な聴診音を学生と共有して聞くことが出来ない』との相談を受けて、
私は、医学生全員で聴診所見を共有できる赤外線ヘッドフォン方式の「高音質集団聴診装置」を作り提供しました。ワイヤレス方式のこの装置は、医学生、指導医の他、患者さんにも聴診所見の意義を説明できるため、患者教育にもつながると好評を頂いています。
また、横浜のみなとみらいにある、海と港が一望できる高級フレンチレストランのオーナーシェフさんから、“厨房をはじめお店の雰囲気が重く、違和感を感じる” “スタッフの声がこもっている” “社員の離職率が高い” 何か改善策はないかとの相談を受け、現場のレストランへ行ってきました。建物内の磁場と電場を測って問題のある場所に、音響デバイス ピュアポイント(弊社開発商品)、吸電シート(弊社開発商品)などを設置して音環境の改善を行なってきました。ピュアポイントは電磁環境内の音のこもりを改善する商品です。電子化が進む近年の生活環境は、人との電磁干渉や、音の聞こえの問題が山積みです。ピュアポイント等の施工後に、レストランの方からは「お店の雑音が無くなった」「店の空気が感覚的に透明に感じる」「壁や人がはっきり見える」などの感想を頂きました。
このように私はカーオーディオだけでなく「音」に関するいろいろな分野で活動しています。時には、ドイツやオーストリアで活躍されているプロの演奏家の方々から、音や響きに関する相談や改善依頼を頂いています。
私はこの仕事を通じて、多くの良き方々に出会えたこと、そして独自の感性を得られたことに深く感謝しています。
一今やっていることについての課題はなんですか?
スマートフォンの普及、IoT、ICTの台頭で私たちの日常ははめまぐるしく変化しています。ITネットワークがあらゆる生活シーンで提供され、モノとモノ、モノと人 、人と人 がオンラインで縦横無尽に繋がりました。職場や家庭をはじめ、小中学校もICTの活用に取り組んでいます。電子黒板を使った授業やタブレット端末で資料を作成するなど、一昔前には考えられなかったパラダイムへシフトしています。ユビキタスと言う言葉も消えかかっている今日、私たちの身の回りにはWi-Fiや5Gの電波が無秩序に溢れ飛び交っています。専用の測定器で測るとけっこうな値を示しています。電気磁気に囲まれた環境が増えると同時に、人のやすらげる空間が減っている様にも思います。
現在、高圧線の電磁公害に対する考え方は、人やモノに障害を与えない事です。国やWHOは癌や白血病などの健康問題についての見解を述べていますが、私が進めているのは健康等の問題では無く、“電磁気の多い場所は 音が遠くまで届かずにこもって聞こえる“ “音が響き難く詰まって聞こえる”など音の聞こえに関する問題です。それらの要因を抽出して、明瞭に音がはっきり聞こえる環境する「聞こえのバリアフリー」に取り組んでいます。
音の聞こえは、目に見えなかったり、ある程度は慣れたりして、気付き難いために、他の問題案件と比べ優先順位は低くなっています。しかしそれが学習の場である学校で起こっているとしたら、見過ごすことは出来ません。気づかないうちに生徒や先生が電磁的ストレスを受け続けてしまいます。安全安心であるべき学習生活環境が蝕まれて行くものと危惧しています。聞こえにくい、話しづらい、うるさい、などが常態化することは、気づかぬうちに心身が麻痺することに通じ、子どもたちの未来に影響するものと思っています。
私は、永年に亘り「電磁環境内の音の聞こえ」に取り組んできました。大学や高専の先生方、民間の企業、研究所、等と共同研究を行っています。これまでに、公立の小中義務教育学校、盲学校、県アンテナショップ、銀行、道の駅、工場、レストランなど電磁環境下の聞こえ改善の実績があり、大学で啓蒙の講演も行ってきました。行ってきた「電磁環境下の聞こえ改善」を私の周辺だけではなく、県内および全国に広めて行きたいと思っています。今後の課題は、仲間やサポーターを集めること、そして後継者を育成することでしょうか。
一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことはなんですか?
以前 ある大学から機会を頂き『人との調和 ー ポラリティを人に合わせる』と題した講演をさせて頂いた事があります。その内容は電気磁気の極性を人に合わせると言う内容でした。
『進んで止まることを知らない科学は、我々に立ち止まることを許してくれたことが有りません。科学の発展を止める事は出来ません。しかし、これからはもっと人間に寄り添った、健康的で快適さを感じられる発展でなければ、真の発展とは言えない』などを訴えました。課題を超えたその先で、私自身が真の発展を実現できる可能性を信じています。
ITは目的への手段と捉えています。ITを使ってやっている事が、自分の目的になっているかをチェックして行きたいと思います。
私は毎週SNSを通していろいろな方とやり取りをしています。FacebookのメッセンジャーやLINE、最近ではクラブハウスの集いも1年間継続しています。日本国内だけでなく海外の方々ともお話をしていますし、音の響きの話題は少しずつですが広がっています。海外へ商品を直接お送りしたり、直接来店されたりする方もいらっしゃいます。こうしたITを通じた不思議な繋がりは有難くこれからも大切にして行こうと思っています。
一今後の目標はなんですか?
音と人のより良いつながりを提案すること、時代にふさわしい健全な商品をお届けすること、そしてこころ豊かな地域社会づくりに貢献することです。
編集後記
高橋様のインタビューを通して、私たちの身近にある「音」の影響度、大事さを非常に強く感じました。高橋様へのインタビューも終始笑いありの和やかな雰囲気で実施させていただいたのですが、後半高橋様より、実はこの取材中もサウンドテック社の商品を使って、店舗内の音の響き、また高橋様の声も通る状態でインタビューに答えていただいたと教えていただきました。比較でその商品を外した環境にすると、今までとまるで違う環境の違和感や声の響き方の違いに一同驚かされ、音の大事さや空間作りを思い知らされた時間でした。
「音」のスペシャリストとして、長年音を聞き、私たちの身近なものや生活にもプラスになる技術を生み出している高橋様にお話を伺うことができ、私自身勉強になったことはもちろん、今後の高橋様の活躍も楽しみになった取材でした。