一どんな活動をしていますか?
うちの主人の世代で6代目なんです。もともと初代は山口県から入ってきていて、今後は娘婿が後を継いでくれることになっているので、今の若夫婦で7代目になります。仁木町の中でも歴史あるほうだと思いますね。
観光化したのはお爺ちゃんの世代だから、40年ほど前になります。1年を通して営業することを目的に、計画的に様々な果物を植樹して、数年かけて育てなくてはなりません。もともと後継ぎのことは考えていなかったので、徐々に縮小するつもりでした。そのため、体への負担が少ないブルーベリーなど背の低い作物も計画的に導入しています。
これは、すべて主人が計画を立てて事業運営してくれるので、私たちはついて行くだけなんです。先代から継承し、先々の事までしっかり考えてくれる主人は、本当に偉大な生産者だと思っています。
一今やっていることについての課題はなんですか?
後継者問題というのもありますが、やはり人手不足でしょうか。果樹園はやはり手間がかかります。「テッカ(摘花・摘果)」、りんごを赤くするための「葉摘み」、枝の剪定など、一年を通して人手が必要になるんです。
今は家族やパートを含め5名の従業員で運営していますが、土日に親戚が手伝いにきてくれることもあり、なんとかやっていけている状況なので、あと2名ほど従業員を増やす必要があると考えています。あとは、先を見据えてどのような品種を作付けしていくか、でしょうかね。例えばプルーンの場合、ここ数年好まれているのは粒の大きな「べーラ」という品種になります。
さくらんぼではサミットという品種は大粒でアメリカンチェリーのような品種が人気です。試してみないと分からないという部分が大きいので、売れる品種になるかどうかは運のような部分もありますね。
一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことはなんですか?
生産・出荷だけでなく、観光業として経営していくなど、6次産業化にむけた準備は、すべて主人の考え方、経営計画がありました。本当に偉大です。
娘夫婦は、北海道ではまだまだ少ない、“いちご“にチャレンジしています。味に厳しい主人が「美味しい」と言って食べている様子をみると、今のところ成功していると思います!
後継ぎ問題については、ほぼ諦めていた状態でした。そのため、農地を縮小しながら自分の世代で終わらせるつもりだったんです。そんな時、突然、娘の旦那さんが「農家をやる」と言い出しまして、正直想定外でしたね。
~娘さんの話~
実家の果樹園を継ぐ事は、まったく考えていませんでした。小さい時から、7代目だとか色々言われて育ちましたので、意識していない事はありませんでしたが、結婚して家を出るつもりでしたから。ところが、主人と付き合うようになって、彼が実家の果物を食べる機会が増えて、今まで感じた事のない美味しさに興味をもち、後を継ぐ事を決めたという奇跡的な流れでした。
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美味しいものしか売らない、迷った場合も売らない、文句を言うなら辞めろ、というポリシーで続けてきた果樹園です。このようなプロフェッショナルの主人が居るからこその山田農園です。
私も一番の旬の状態で口に入れていただきたい!という想いが強く、郵送でお届けする際にはお客様の口に入るとき良い状態だったのか心配で、胃が痛くなるんです……。インターネットの時代なので、ネット販売やオンライン果物狩りなど、考えていく必要がでてくると思いますが、それは次の世代が考えてくれるのかな、って思っています。
一今後の目標を教えてください
インバウンドの方は、富裕層の方が多く、ニセコなど周辺の観光地に長く滞在するので、何度も来てくれます。高速道路ができたことで札幌から1時間で来られるようにもなりました。現在、お客様の半数はリピーターです。少し足をのばせば、そこには美味しい果物やワイン、景色も楽しめる「北海道の軽井沢」みたいな地域・ブランドになってくれたら嬉しいですね。
娘夫婦は3年前からいちごを始めました。「けんたろう」という品種で、道内にしか流通していません。いちご狩り自体、北海道ではまだまだ少ないので期待しています。
2月頃から5月頃まで高設栽培のいちご、6月頃は路地栽培のいちご、そして、7月からのさくらんぼに繋げていく。そのように年間を通して、季節ごとに旬の果物を味わえる果樹園でありたいと思っています。
編集後記
インタビューをお引き受け頂いた、山田美惠子さん、娘さん夫婦には、本当に感謝です。暖かく迎え入れてくれて、農園を回りながら、気さくにお話して頂き、この農園の歴史から未来に向けた話、生産者としての想いなど、盛りだくさんなお話を伺う事ができました。本当にありがとうございました。
7代目としてスタートを切った娘さん夫婦、特にゼロから始める決意をした旦那さんには、歴史ある果樹園を継ぐ事に、大きなプレッシャーがかかっているのかと思いきや、単純に果樹園で獲れた果物の美味しさ、それを生産する事自体が「魅力的」だったそうです。
農園の歴史を守るという責任感ではなく、自分が“やりたい”という想いから7代目を継ぐことにした娘さん夫婦には、実物に触れる、本物に触れる、という実体験の大切さと必要性を、改めて教わった気がします。
データを活用したお客様ニーズ把握、新しい品種の導入、四季折々の北海道で季節ごとに多くのファンに囲まれた果樹園、母国からインターネットで注文する外国のファン、品質を落とさずお客様の口に届けられる梱包などなど、8代目、9代目・・その先の世代が、どのような山田農園を築いているのか、楽しみにしています。