現場第一主義のさくらんぼ戦略経営者!

北海道仁木町

やまのい ひでゆき

山野井 英幸

北海道出身。仁木町で「さくらんぼ農園」を約50年にわたり経営。お客様のおもてなしを第一に考え、現地に来てくれたお客様のためにサービスを行う。1年目では30人のお客様も今では年間5万人の方が来園。さくらんぼは過去に天皇陛下に献上されるほどの品質を持ち、他にも高島屋、三越、プリンスホテルなど多くの有名な取引先を抱えていたこともあるが現地に赴く人を優先するため、有名所の取引から今の現地サービスの形態にシフトチェンジ。多くの人が押し寄せる今でもお客様一人一人のことを考え、新たなサービスを生む努力を続けている。

一どんな活動をしていますか?

さくらんぼ山観光農園を経営しています。18haの広さと、約5000本の果樹と約1500台の駐車場を抱えていて、年間5万人前後のお客様が来てくださります。形態は複合経営をしていて主にくだもの狩りではさくらんぼだけでなく、ぶどうやプルーン、リンゴなどあらゆる種類の果実などを扱っています。最近ではシャインマスカットも人気で、SNS(Facebookなど)でも随時、収穫状況などが分かるように更新しています。

果物以外でも農園内には1500人を収納できるレストランがあり、そこでのオリジナルのジンギスカンや旬のシャインマスカットとコラボしたソフトクリームも大変好評を得ています。バスツアーも催行していて、たくさんの団体様に来ていただいています。

様々な趣向のお客様にも満足していただくため、さくらんぼ、ブドウ、リンゴ、プルーンやマスカットなど様々な種類のくだものを定額で食べ放題、時間無制限にて提供できるように工夫しています。

私は現場第一としており、足を運んでくださった方のために”おもてなし”を一番大事にしてサービスをしたいと考えているからです。お客様からの新しいニーズがあれば積極的に取り組み、果実の品種も年々増やしていき、新しい魅力を作っています。これからも時代の変革と共にここの観光農園でしか食べられない果実を作って行こうと思います。

一今やっていることについての課題はなんですか?

まず話したいのは環境整備についてです。私の観光農園は団体のバスツアーが多いため狭い道路を大型バスが往来し、歩行者が危険に晒されています。また、大きなイベントが町で行われる際、フルーツ街道沿いにあるフルーツパークにき入口周辺は渋滞もすごくて立ち往生することもあります。仁木町では今後、新しい高速道路が新通するため、ますます渋滞が避けられなくなると心配しています。

渋滞が発生すると分単位で動くツアーのお客様の体験する時間が少なくなり、満足度に影響が出るため、町の道路整備が課題に感じています。

あとは今、通常時は30~40人ほどの従業員がいますが、忙しい時期には80人ほどの従業員を抱えます。なので毎年、雇用を安定して確保するのが難しいですね。毎年、実習生を数人採用していましたが、最近は東南アジアから農業系の大学生のインターン生を取り入れることが決定したのですが、今年はコロナ禍の影響で取りやめになってしまいました。

また、最近は嬉しいことに若い人の新規就農者が増えています。しかし、いきなり農園を経営するのは難しいのでまずは小さく質の良いものを栽培し、経営を安定化していくのが得策だと思います。さらに、新規就農者が抱える資金や住居問題、加えて、仁木町には所有者不明の塩漬けとなった耕作放棄地も沢山あり、土地の流動化が滞っているため、行政におけるサポートが必要だと感じています。

そのため、新規就農者を支援する補助金制度の整理や、耕作放棄地の管理・整備が行われることで、後継者へスムーズにバトンが繋げると思います。

一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことはなんですか?

環境整備が整えば、仁木町は交通の核になり得ると思います。例えば、流通センターなど誘致できる立地条件になる可能性もありますよね。他にも人も集まりやすくなるため、道の駅などもより作りやすくなるのではないでしょうか。

あとは、もし新規就農者を支援する制度が整えば、新規就農者に対して私も観光農園のノウハウや栽培方法の伝授、人脈作りで貢献できる部分が増えると思います。同じ農園者同士などの横のつながりも増えやすくなるかと思います。

仁木町に今あるものを活用するとしたら芸術家の卵たちである芸術高校の生徒たちがまちづくりに活用するのも良いと思います。

今の時代はテレワーク者や新規就農者が短期間でも住んでみることができる場所を提供すれば、全国にPRする材料になると思います。それがシェアハウスや貸事務所でも良いので、若者が力を発揮できる機会とそのための環境を整えることで新たな魅力ある創作をすることができる可能性があると思います。

一今後の目標を教えてください

現代はIT社会のため色々な施策が試せると思います。しかし、だからこそ私は現場に足を運んでくださる方のための現場サービスに特化したいです。

ただ、お客様が現代の観光農園に求める内容も中身の濃い観光へと変わってきています。仁木町に来たからこその体験を提供していかなければと思います。

例えば、今、仁木町はワイナリーが有名になってきていますよね。なのでさくらんぼのワインなども良いかなと思います。ワイン用のさくらんぼなど品種から作り直す必要がありますが、このようなあまり国内にないような取り組みもしていくべきですね。

現在、ワイナリー特区の認定を受けているので、ワインの研究所などが作られれば仁木町全体で取り組めるかと思います。

編集後記

率直な感想は、山野井さんはさくらんぼ農園を自らの手で一から作ってここまでの大型の農園にまでした凄腕の経営者だなと感じました。町内の制度や仕組みにも詳しく、国内の情勢も把握しており、国外の雇用事業にまで携わられていて、それに加えて産業のトレンドも追っている。足を運んでくださるお客様のためにサービス改善を努める考え方にはとても感銘を受けました。お客様が求めるサービスはすぐに作り、改善する行動力にとても触発されました。また自分たちだけのことではなく、これからの担い手の流入や将来の町の展望までお持ちになっておりもっとお話を聞きたいなと思いました。
観光農園も同じ値段で好きな果物を食べ放題というのにとても惹かれ実際に行きたいです。いや、行きます!

-コーディネーター紹介-

ID 北海道仁木町

いとう たかひと

伊藤 貴人

東京都生まれ、東京都育ち。幼少期から大学時代までサッカーをしていて、中学、高校とクラブチームで二度の全国大会を経験。現在の趣味はゴルフ。大学卒業後はSIerに入社し、名古屋で自動車メーカーのシステム開発に従事。2018年に株式会社VSN(現Modis)入社。現在Web系のプロジェクトにて社内システム、サイトの作成、運用・保守などを担当。大学時代のゼミで地方創生について研究、社会人になりゼミでの活動を活かせないかと思い地方創生VI、北海道仁木町チームへ参画。