トマト農家兼トマトサイエンティスト!

北海道仁木町

うえはら わたる

上𠩤 渉

6年前に新規就農して、トマト農家となる。 3年前からアイコ生産組合の理事に就任し、日々、美味しいトマトが作れるかを研究。 大学中退後、22歳の時に知り合いの紹介でベトナムの日本食レストランで働く。その後、東京の会社を退社後、27歳の時に父の話で仁木町ではトマトが盛んで営農していける作物があることを知り、トマト農家は視野に入れていなかったが昔から興味のあった農家になる。 両親が作っていたジャガイモのような、他のジャガイモが食べられなくなるくらいの美味しい作物を作るのに憧れて就農。

一どんな活動をしていますか?

6年前に新規就農し、主に取り扱っている品目はミニトマトのアイコです。アイコ生産組合にも所属していてそこに出荷しています。最初はハウス8棟から始まり、今では18棟まで拡大しました。他にも趣味の範囲で他の品種を作っていまして、農協外の要望もあり、フラガールという品種の栽培も始めています。

あらゆる手法でトマトの改良を試みていて、1年に1度の試みですが、植物生理の原理(原因)と障害の結果がガチッとハマった時が特に面白いです。また、結果が出てお客さんに、特に子どもが「おいしい」と言ってもらえることが嬉しいです。

日々、液肥の配合などを考えては実際に使ってみて、常に美味しいトマトの味を追求しています。

一今やっていることについての課題はなんですか?

[渉さん(夫)] 人手の確保です。例年、最低2人は必要です。ちゃんと人手が確保できるなら規模は広げられますが、毎年来てくれる人がいないんですよね。また来てくれても初心者の方が忙しい時期に来ると、忙しさの上にレクチャーが相まっての手間を考えると難しいところがあります。短期のアルバイトでも良いんですけど覚える項目やチェックする項目が多いんですよね。毎年最初の時期から来てくれるならとても助かりますが……。

求人募集のために、SNSを駆使しようと考えたこともありました。Facebookもやっていますが忙しい時には疎かになってしまうため継続が難しく、見てくれる人はイメージしやすいから良いツールだとは思うんですがなかなか投稿できていないのが現状ですね。

ネット販売もできたら良いなと思いますが、それをするにしてもそこに人を割かないといけないので、人の確保がネックになって進まない課題があります。

また、組合に出荷している農家が多いので、ネット販売しているトマト農家は少ないのではないかと思います。

あとは冬の仕事があれば良いなとも思います。通年で雇用できる仕事があれば良いのですが、冬場に作物を作る設備がなく、除雪の機械も必要なんです。

[聖さん(妻)] 季節性の兼業農家の仕事があれば是非やりたいです。冬場無収入なので冬に仕事をしたい。いつ何が起こるかわからないし、余市川が氾濫したらなど考えるとリスクのためにも必要だと感じます。

ネット販売などする際に便利なアプリがあるのは知っているけれど、詳しく知らないんです。そういう販売方法などのセミナーがあれば行くのですがインターネットも通ってないのでなかなかそういう情報を得るのも難しいです。

一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことはなんですか?

例えば町内会長としてお知らせを全戸に配布する機会があるのですが、すごく時間がかかるんですよね。急に何枚も作らないといけない。そういう時にネットがあれば、ペーパーレスで届けられると思います。これから光回線が通るのでこれは解決できるのではないかと期待しています。

農作業においてはゴロゴロ(座って横移動できる椅子)があるんですが、それを自動運転化して欲しいですね。もちろんリモコンで半自動でも良いです。他にもセンサー式のロボット草刈り機(ルンバみたいなやつ)など出ているので家から遠隔で畑管理ができたら良いなと思います。

ネットが今まで繋がっていなかったため、ネットを利用した取組という選択肢がなかったのですが、光が開通するにあたり、田舎で暮らしたいけどネット環境が整っていないことを理由に諦めていた人も呼び込めるかもしれないですね。行政がITを活用した新しい政策を考えてくれたら良いなと期待しています。

農業技術についてですが、今の技術は機械に合わせた作物の仕立て方などが必要で農業ロボットも一般農家に普及するのにどれだけかかるのかわからないですが、これがあったらなというものは出来てきていると思います。金額だけが問題です。

今は私たちが動けるから良いんですが、将来のことを考えると重労働や単純作業はどんどん機械化していきたいです。すごいのが自動収穫機械などがあるんですよ。それに夜に収穫してくれるんです。昼は人間が収穫して夜は機械が収穫してくれることもできると思います。

一今後の目標を教えてください

まずは納得できる味を作って高くても消費者も納得できる価格と思われるようになりたい。同じ地域の農家の方が「天候に左右されずに、毎年同じ味を作るのがプロだから」と仰っていて、その通りなんだよなと思いました。確かにその方のトマトは値段が張りますが美味しいんですよ。そこを目指さないとなぁと思います。今はそれが目標です。
美味しかったからまたあそこのトマトを買おうと思ってもらいたい。リピーターを増やして、徐々にお客さんを獲得していきたいです。

本州のアイコが美味しいところがあるのですが、そこは小規模でなかなかの良い値段がします。今年そちらに見にいく機会があり、行きました。そこでものに対する考え方やセールスとしてのうまさなどを学べました。「味がよかったらどんな売り方もできる。味がダメだったらすべてがダメになる」それを言われて、味を追求していかなければと改めて思いました。

編集後記

夫の渉さんは科学者かというほど理にかなった栽培方法や成分研究を行なっていて驚きました。新規就農したばかりですが、すでに町内の中心として動いていて、美味しいトマトの追求する姿がとてもかっこよく思えました。
妻の聖さんも夫のトマト熱に負けないくらい、トマト栽培にのめりこんでいて話を聞くだけで大好きなんだなというのが伝わってきました。特に印象的だったのが、あらゆる改善策を行なって、やっぱり子どもが笑顔で美味しいって言ってくれるのが一番嬉しいっていう言葉でした。素敵なご夫婦でお互いが支え合っているのが伝わりとても引き込まれるような人間性で、こちらも楽しいインタビューの時間を過ごせました。自分も地元のスーパーでトマトを手にしてどこで誰が作っているのだろうかと気になるようになりました。

-コーディネーター紹介-

ID 北海道仁木町

いとう たかひと

伊藤 貴人

東京都生まれ、東京都育ち。幼少期から大学時代までサッカーをしていて、中学、高校とクラブチームで二度の全国大会を経験。現在の趣味はゴルフ。大学卒業後はSIerに入社し、名古屋で自動車メーカーのシステム開発に従事。2018年に株式会社VSN(現Modis)入社。現在Web系のプロジェクトにて社内システム、サイトの作成、運用・保守などを担当。大学時代のゼミで地方創生について研究、社会人になりゼミでの活動を活かせないかと思い地方創生VI、北海道仁木町チームへ参画。