スポーツが洲本市を元気にする!

兵庫県洲本市

かたやま じゅんぺい

片山 純平

関西大学からオーストリアのサッカーチームを経験し、現在はFC淡路島のGMとしてチームを運営。淡路島発のJリーグを7年で目指す。それだけでなく、選手のセカンドキャリアなども意識したチーム作りを行っている。個人としては地域おこし協力隊として、スポーツを通した洲本市の活性化の活動をしている。

一どんな活動をしていますか?

FC淡路島というサッカーチームのGM(インタビュー時点)をしています。チームは私とオーナーが大阪で立ち上げました。オーナーが淡路島の出身という点や、淡路島にアスパ五色というグラウンドあることから拠点を淡路島に移し、選手やスタッフも移住して来ています。

FC淡路島は7年でJ3に上がるという目標を持っています。2019年に兵庫県内の2部から1部への昇格を果たし、2020年は兵庫県1部を無敗で優勝しました。12月からは関西リーグ昇格を目指し、関西の府県代表2チーム(全12チーム)が出場する戦いが始まります。本来だったらJ1を目指すところですが、財務的な面や環境面などを考えるとリアルにとらえにくい面があるので、最短である7年でJ3というビジョンを掲げています。そのため、常に上のカテゴリで戦えるチーム作りを進めていますし、選手も上のカテゴリを意識して戦える人がチームに来てくれるようにしています。

チームを知ってもらう為に、地域のお祭りやイベントにも参加しています。コロナの影響が大きかった時期には、「出前FC淡路島」という、ユニフォームを着た選手が自転車で宅配サービスを行い、多くの反響をいただきました。現在は選手も完全にサッカーだけで生活しているわけではなく、島内で提携している企業で午後から仕事をしています。病院で介護補助などをしている選手が多いです。介護業界は、若い人がいないということもあるので、職場では空気が変わったという喜びの声も出ています。他にも、海外でプロを目指す選手たちにサッカーができる環境を提供する「FOOTBALL ISLAND 淡路島プロジェクト」という取り組みも行っています。

私個人としては、地域おこし協力隊を2020年7月から始めました。まだまだこれからですが、スポーツを通して、洲本市を元気にしていきたいと思っています。

一今やっていることについての課題はなんですか?

GMの立場で苦労している点は資金調達というリアルな面です。覚悟をもって移住している若い選手もいるので、チームにお金がないからという理由で解散させるわけには行きません。しかし、バランスも難しく、良い環境を用意しすぎても上手くいきません。サッカー選手ということで脚光を浴びる面もありますが、サッカーを引退したらその後のキャリアにおいてギャップに苦しむという事実もあります。世間のイメージとして、30歳で引退した元サッカー選手が他の仕事で活かせそうなことといったら、ストレス耐性が強そうというくらいではないでしょうか。とはいえ30歳でスキルが無く、年齢的に何か仕事をお願いするのも気を遣ってしまうとなると、企業としては新卒の方を採用したいと思う気持ちもわかります。

私たちは、チームの選手たちが自ら主体的に物事を考えられるようにしていくことが必要だと思っています。 サッカーは流れているスポーツなので、フィールドに立つ選手がどうにかして対応をしないといけない場面があります。ドイツのチームと日本のチームをデータで比較すると、主体性に差があるという結果も出ています。両チームの練習を調査して、ドイツは練習の中で選手からトレーニングの発案をとても積極的にするといわれています。

選手たちに主体性を持たせることは、彼らのセカンドキャリアにもつながります。選手のセカンドキャリアについては、ほかの多くのスポーツでも課題を抱えていると感じます。一昔前は、実業団でプレー後は企業に就職ということがあったかもしれません。しかし、大手企業でも終身雇用ができないといっている時代です。個人で力をつけて、「何ができる」ということを伝えられるようにしていく必要があると感じています。企業に選手を送り込むだけならば、現在は売り手市場なので、できると思います。しかし、それをセカンドキャリアとは呼びたくありません。「人としての可能性を広げてあげたい」、「必要とされる人間になってほしい」と思っています。

一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことはなんですか?

ファンを作っていくことが一番大切なので、エンジニアやデザイナーの方の力も借りて、カッコよさを追及したブランディングをしています。インスタ、ツイッターなどでのメディア発信もしています。ファンの方との交流会なども企画しています。

Youtubeで試合の配信も始めています。当初からライブ配信の案も考えていましたが、コロナになって「試合を見に来てください」と言えなくなってしまったので、本格的にライブ配信をどうやるかから考えました。実際、音と映像が合っていない、山奥の会場だと電波が途絶えるといったトラブルがありました。張り切って解説していたら、音声が入っていないということもありました。改善を繰り返しながらやっています。ただ、コメント見るといろんな地域から視聴してくれていました。ただ見てもらうだけでなく、プレゼント企画や、試合のスコア予想企画などもしています。地域の企業に協賛でプレゼントの品を出してもらうなど、地域をアピールすることにもつなげています。自分たちの挑戦が、島内で完結するのではなく国内、海外も視野に入れて、応援して貰えるようにしたいと思っています。

HPの選手紹介のページは一人一人に権限を持たせています。自分でブログを更新したり、SNSを公開したりしています。選手は影響力があります。まちなかを歩いていてもサインを求められるのは選手です。その影響力をどう生かすかを考える必要があります。例えば、企業訪問などを通じてつながりができると、セカンドキャリアの幅も広がります。チームのファンでなく、個人のファンがどれだけできるかを考えてもらっています。その一つとして、クラウドファンディングは個人で選手のファンがどれだけいるかを知る機会となっています。プロになりたいという選手には、「サッカーがうまいからプロではなく、見に来てお金を出す人がいるからプロであり、買う人が0人だったらプロになれると思うか?」と問うこともあります。どの選手も自分の価値を最大化することを目指すべきだと思っています。自分の価値をどれだけ売っていけるか、チャレンジしていけるかによりお金を得られたとき、成功体験も得られると思っています。

一今後の目標を教えてください

7年で勝ち上がっていく中で選手の入れ替えも当然あります。しかし、私は強いだけのサッカーチームというのは全く興味がありません。チームとして選手のセカンドキャリアなど、幅を広げられる気づきを与えたいと思っています。理想は、淡路島で自分の仕事を作って生きていきながら、常にサッカーに関わり、引退後は選手一人をマンツーマンでサポートし、セカンドキャリアまで面倒を見るような形ができると良いと思います。

「ファンを集める」といってもサッカーを好きになってもらうだけでなく、チームとして取り組んでいることを応援してもらうようなファンを増やすことで、企業などと一緒にコラボができるようにしていきたいと思っています。そういう意味で、スポーツはビジネス的な付き合いを感じさせないというメリットがあると思っていて、それはサッカーに限った話ではありません。スポーツをしに淡路島に来る人が増えれば、移住者なども増えると思います選手を引退したあとも島にとどまってもらうためには、企業の誘致なども進めたいと考えています。アスパ五色のスタジアムは、絨毯みたいな天然芝のコートが2面と、体育館や会議室もあります。企業研修とかでも使えるのではないかと思います。研修して体育館でフットサルや、芝生で瞑想、海に行ってヨガなどもできます。

教育の分野でも地域に入っていきたいと思っています。選手はスポーツに関しトップレベルの教育を受けています。地域の指導者の高齢化もあり、若い選手が地域に落とし込めるものがあるはずです。ですので、スクールなどをやっていきたいと思っています。単純にサッカーを教えるだけでなく、学生の試合動画を基に、好きな選手を指名して指導してもらうなども考えています。FC淡路島では洲本市と連携協定を結んでいて、市内の学校に交流に行こうとしていた矢先にコロナの影響がありました。今後、洲本市とさらに連携し、チームとしても個人の地域おこし協力隊としてもより良い活動をしていきたいと思います。

編集後記

サッカー場でのインタビューは、裏で選手の声が響き渡る中で行われました。ビジョンに共感する選手、スタッフが集まるチームは活気にあふれていました。FC淡路島、片山さんの7年の戦いも半分が終わろうとしています。これから、より厳しい戦いが続いていくことだと思います。今後の戦いを応援しつつ、チームの取組なども楽しみにしたいと思います。

-コーディネーター紹介-

ID 兵庫県洲本市

さかもと しおり・たまがわ ひろゆき

阪本 志織・玉川 博之

阪本 志織
オンラインインタビュー担当
2016年 新卒で地方銀行に入行 法人融資渉外を務める
2019年 株式会社VSNに入社 未来創造グループ唯一の営業として新商材の販路開拓を担う。

玉川 博之
現地インタビュー担当
2009年 株式会社VSN入社
2016年より社内の教育部門に在籍し、エンジニア育成に取り組む。社内のセキュリティ分野立ち上げなどに従事し、同年よりセキュリティ系の業界団体への活動に参加。現在では業界団体のWG活動にて、セキュリティ人材のキャリアデザイン検討を行っている。