過疎の集落に元気を

兵庫県洲本市

たけはらちょう

竹原町の皆さま

・水田 進(みずた すすむ)
竹原町内会会長
観光農園 あわじ花山水 運営
竹原集落出身

・太田 明広(おおた あきひろ)
千草連合町内会顧問
約30年前に竹原集落へ移住

・鷲田 晃大(わしだ あきひろ)

・坂下 未花(さかした みか)
淡路島に移住し、竹原集落でレストランの開業準備を行う

一どんな活動をしていますか?

(太田さん、水田さん)
竹原集落は洲本市内から10・20分程度の地域です。現在4世帯8名が住んでいます。竹原ダムができる時に集落を離れるお宅が何軒かありました。ただ、ダムができたのは一つのきっかけだったと思います。人口は減っていますが、50年たっても風景はほとんど変わっていません。だからこそ、この集落このまま残していきたいと思い活動をしています。

活動の一つに、「あわじ花山水」という名前でアジサイ園を行っています。もう15年程の活動になりますが、だんだんと知名度が上がってきています。何とか交流人口を増やし、若い人が移住するきっかけになればよいと思っています。

アジサイ園の見ごろは6月~7月10日くらいまでです。毎年東京から来られる方もいて、うれしい限りです。普通アジサイはお寺とかで坂道が多い所に生えているのですが、ここは階段もないのでバリアフリーになっています。観光バスなどを入れることが出来ればお金は稼げるかもしれませんが、それはしたくないです。原風景を残しながら行っています。

洲本市の域学連携事業に竹原集落として参画しており、6校ぐらいの大学とかかわりがあります。若い学生が来てくれるのはうれしいです。 そこからここに住むということにはまだならないですが、もっともっと知ってもらって“移住してもいいな”という人が1人でも2人でもいてくれればよいです。

市が域学連携事業に力を入れてくれたおかげで、大学との連携が強くなりました。特に、大学の授業だけで縁が切れるのではなく、卒業してからも繋がりをもってくれることが特長です。8年間に約400名の学生と関わりを持つことが出来ました。最初に卒業した方々だと、20代の後半にもうなられているはずです。

域学連携事業に参画するきっかけとなったのは、小水力発電施設の設置に向けたチャレンジです。以前から、竹原集落にあるダムや川を使って水力発電など出来ないかと市に提案していました。それを受けて、市役所の高橋さんが龍谷大学主催の再エネ塾などに参加し、大学の力を借りる足掛かりができました。その後、龍谷大学と九州大学との連携によって小水力発電施設が設置されました。そこからさらに多くの大学との連携につながり、最近も東京の大学の先生が柏原山道をロングトレイルコースに整備するための活動を続けています。

(鷲田さん、坂下さん)
2020年の4月に淡路島に東京から移住してきました。2021年に竹原集落でレストランのオープンを目指しています。東京で働いていたときにコロナの時期とちょうど重なりました。コロナのピーク時にはお店が開けない状態になったこともあります。なかなか先が見えない状態になりました。『不安定な中でやるよりもいい転機だと思って、新しくことを始めるのもいいのではないか』と坂下さんのお父さんにアドバイスをもらった事が一つの転機になりました。すぐにお客様が来なくても、準備期間だと思って自分たちのやることを固める時期ととらえています。移住してすぐにワイワイやるよりも、住民の方々とじっくり時間をかけて交流を深めていき、助け合える関係を築く時期にできればと思います。

もともとは宮崎出身(鷲田さん)で、新しい人の受け入れに抵抗がある地域も知っていたので、最初挨拶行くときにはドキドキでした。水田さん、太田さんは若い人”Welcome”で、集落のこれまでの取組なども紹介いただきました。自分たちの事も気にかけてくれたので、安心感はすごくありました。竹原集落には食事をする所がないから有難いとも言っていただけました。

アジサイ園に来られるお客様を見ていると、いろいろなところからきているなという印象を受けます。淡路の人が「同じ淡路とは思えない」と言っていたのは印象的でした。

一今やっていることについての課題はなんですか?

(太田さん、水田さん)
昔はあわじ花山水でシイタケ狩りができました。取ったシイタケをそのままバーベキューして食べることも出来ました。今はシイタケを栽培する原木も減っているし、自分で原木を切り倒せるような年でもなくなったので、やめてしまいました。自分で取ったシイタケを焼いて食べられる体験です。すごく人気もあり、今でも復活して欲しいという声があります。ただ、採算が合わないといった課題もあるため、復活できていません。

学生から『キャンプ場・コテージみたいな宿泊施設を作ってほしい』という提案があったので、あわじ花山水の敷地内に手作りしました。利用の問合せはあるのですが、コロナの渦中ということもあったので断っています。

市街地から集落に来るための一本の道路にも課題があります。道が狭くてすれ違いが難しい場合があるあるからです。人がたくさん来ることで道を良くしなければならないという盛り上がりにつながれば良いと思っています。そのために、最近は集落を訪れた車や人の数を集計しています。そのデータを示して粘り強く要望していると、部分的な補修作業はずいぶんスピーディーに実施してくれるようになりました。

竹原集落やその周辺の地域では高齢者が多いので、移動手段は今後も課題となる可能性があります。コミュニティバスの運行を行政の方にお願いしています。

一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことはなんですか?

(太田さん、水田さん)
「あわじ花山水」はホームページやフェイスブック、インスタを活用しています。アジサイはインスタ映えします!新聞記事にしていただいた時の来訪者は年配者が多かったという特徴がありました。SNSによる情報発信をしたところ来る人が若くなりました。まだまだ知らない人もいるので、若い人にもっと知ってもらいたいと思っています。

竹原集落での様々な取り組みは2人(太田さん、水田さん)で決めているので、意思決定は非常にスムーズです。もちろんできないものは却下しますが、若者の提案は基本的にウェルカムです。実証実験などで企業に関わってもらえるとニュースにもなるので、企業との連携にもチャレンジしたいです。ゴルフ場で使っているカートのようなものが自動走行していたり、ドローンの一人乗りが飛んでいたりしていたら面白いですね。免許返納後の高齢者の移動手段についての関心は高いと思います。

大学のつながりからZoomを使うことも増えました。オンライン飲み会などもしています。Zoomに良く駆り出されるのですが・・・若い人と繋がりがあるからこそ若くいられるというのもあると思っています。ネット環境として光回線が使えますので、リモートワークで集落に来てもらえる可能性もあるかもしれません。

一今後の目標を教えてください

(太田さん、水田さん)
『田園風景が広がるこの集落を絶やしたくない』という気持ちは変わりません。人口が減っていく要因としては、結婚、就職で出ていく人が多いですが、淡路島には住んでいるのに竹原集落には戻ってこないというケースがあります。集落にいつでも戻れるような環境を作ってあげられれば良いと思っています。将来的には子や孫に帰ってきて欲しいと思います。洲本市内から来ると、家がパタッとなくなります。都会の人が来るとそのギャップに驚かれることでしょう。車の音が一切しない、鳥の鳴き声くらいしか音はありません。都会の人の方が案外ゆっくりしているように思うので、是非そういう魅力を感じてほしいです。鷲田さんの取組も成功して一つのモデルケースになればうれしいです。

(鷲田さん、坂下さん)
ある日、レストランにする空き家の改修作業をしているとき、集落の一本道を誰も人が通らなかった事には驚きました。開業すると決めたものの、ほんとに大丈夫かなという気持ちになりましたが、コロナの時期の飲食業開業ということにも関わらず私たちを受け入れて応援してくれる集落の皆さんに応えたいと思っています。しかし、儲けだけに走るとオーバーツーリズムによって集落の雰囲気や原風景を壊すことになります。水田さんは、アジサイ園にお客様が多く来ても、ゴミが落ちていることが無いということが自慢であるとおっしゃっていました。自分たちのレストランも、そんな素敵な雰囲気や客層を目指したいです。また、一次ブームで終わるレストランが多いですが、細くても長く続いていけるお店にしたいと思います。

新しいことをやるのに、ビジョンが見えないなどで不安に思う人はいるはずです。『地域が協力してくれる』、『若い人を受け入れてくれる』そんな竹原集落で自分たちが成功することで、これからの若いチャレンジャーの不安を払しょくするモデルケースにしていきたいです。私たちはレストランに続いて宿泊もできればいいなと思っていますが、自分たちだけでやるのではなく一緒にやっていく仲間が増えていく、そんな連鎖が竹原集落で起こればよいと思っています。

竹原集落を訪れて楽しまれている人の年齢層が幅広い事に驚きます。年配の方々が一緒に回っていることもあれば、若い夫婦が子連れで来ることもある。コロナの中で窮屈なところもあるが、ここではのびのびやれていると感じます。子供の経験がまた次につながると良いですし、子供たちが大人になった時に来てくれるとさらに良いです。自分たちも最近、集落で稲刈りを初めて体験しました。このような非日常の体験は、大人でも面白いと思います。

編集後記

限界集落ということばからは想像もできないほど市内から近い距離、また生き生きとした4名が非常に印象的でした。あわじ花山水のような原風景を求める方はきっと増えていると感じていますので、夢を持った若人が新たな挑戦を行うための場所として、竹原町を残していこうとする皆さんには心を動かされました。

-コーディネーター紹介-

ID 兵庫県洲本市

かわはた けんご

川端 健吾

ITエンジニアとして社会人のキャリアをスタートし、VSNへ入社時に営業へとキャリアチェンジ、大手企業を歴任し、営業マネージャーとして勤務中。
現在の趣味はゴルフ(100前後)と高校生時代に行っていたラグビー観戦。また、最近はジムに通って体型のシェイプアップに努めている。