矢板をアクティビティで遊べる街に

栃木県矢板市

うるしばら くにかず

漆原 邦和

栃木県矢板市出身。栃木県内の鬼怒川でアウトドアガイドとして活動した後、2014年に地元である矢板市で独立し、オムーチェ アウトドア&スポーツクラブを設立。観光案内所の管理なども担当。仲間とコミュニティを作り、矢板市のイベント企画にも積極的に取り組んでいる。

一どんな活動をしていますか?

アウトドアガイドとして、矢板市を拠点としたアクティビティのインストラクターをしています。夏は塩田ダムでカヤック、冬は高原山でアイスクライミングやスノーモービルができます。

中学生のときに始めたウィンタースポーツは好きだったものの、昔からアウトドアガイドになることを考えていたわけではありません。たまたま友人に誘われたことがきっかけで、鬼怒川でラフティングのガイドを始めました。3年ほど続けていく中でアウトドアにはまり、地元の矢板で働けないか考えるようになりました。矢板にも魅力的な自然がありますし、特に塩田ダムが活用できるのではと目を付けて起業を決意しました。

観光客だけではなく、地元の方にも矢板を楽しんでもらうための活動もしています。最近では新型コロナで打撃を受けた観光業を元気にしようと、市の補助制度を利用して矢板市民向けにカヤック体験を企画しました。60名もの家族連れに集まってもらい、自分の仕事を知ってもらう機会にもなりました。

一今やっていることについての課題はなんですか?

自然のアクティビティは天候に左右されるため、中止となると売り上げを確保できません。夏はウォーターアクティビティなので、台風で増水すると危ないので中止せざるを得ません。昨年は暖冬で苦労をしました。雪がないとできないアクティビティですし、アイスクライミングは自分たちで岩肌に水をかけて凍らせて準備しました。
稼ぎ時を襲った新型コロナもつらかったですが、不安定さの点で天候の方が悩みは大きいです。

また、アウトドアは繁忙期と閑散期があるため、スタッフの確保も課題です。ダブルワーカーや長期休暇中の大学生が繁忙期に来てくれると有難いのですが、なかなか人が集まらないのが現状です。繁忙期は周りに手伝いをお願いしていますが、それ以外は1人でやらなければなりません。ホームページも慣れない中、自分で作っています。
同業者とも話していますが、アウトドアガイドで生計を立てるのは大変です。

あとは矢板には魅力的な資源があるのにも関わらず、有効活用されてないのも課題です。例えば国や市の持ち物だと役所に交渉しなければなりませんが、認めてもらうまで非常に時間が掛かります。

カヤックをやっている塩田ダムも、現在のように常時使わせてもらえるまでに5年も掛かりました。最初は単発のイベントで少しずつ役所に認めてもらいながら交渉を続けて、やっと実現しました。
今は許可があっても、担当者が変わって急に使えなくなる可能性があるのも心配です。
せっかく矢板を盛り上げたいという動きがあっても、ネガティブに思われることもあって活動が難しいと思うことがあります。

一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことはなんですか?

ネットや動画といったツールを使い、矢板の魅力を伝えて上手く集客に繋がれば良いなと思います。例えばアプリを作り、矢板市内に設置したQRコードを読み込むことで、スタンプラリー感覚で矢板を巡るようなこともできると思います。矢板は日光とオリエンテーリングをやっているのですが、それを観光向けにしたものですね。

あとは矢板には体験型の施設が少ないので、VRを使うのも良いかもしれません。カヤックといったアクティビティや、関東7選にも入った矢板の星空はどうでしょうか。
矢板には使われてない大きな工場跡地があるので、天井の高い建屋内に木を植えたり、水を流したフィールドを作ればキャンプ体験もできそうです。屋内施設があれば天候にも左右されないため、安定した売り上げも見込めます。

テレワークやワ―ケーションが当たり前の世の中になり、苦労しているスタッフの確保が楽になれば、イベントの企画や運営に集中できます。集客サイトの作成などITに強い方に来ていただけると、さらに有難いです。
魅力的なコンテンツが増えてアピールができれば、矢板の活性化に繋がるのではと考えています。

一今後の目標を教えてください

塩田ダムでキャンプを行える環境を作りたいです。矢板は自転車イベントも盛んなため、電動アシストのeバイクでまわるのも良いと思います。
塩田ダム活用の第一段階としてカヤックに取り組みましたが、より活用したいと考えています。

塩田ダムから5分のところにスマートインターチェンジができるのですが、矢板に立ち寄ってもらうチャンスだと思っています。矢板は日光と那須に挟まれていて観光するところがないと言われがちですが、資源はたくさんあるので、もっとアピールしても良いはずです。わざわざ混んでいる観光地ではなく、近くの矢板に立ち寄ってアクティビティを楽しんでもらう可能性もあるのではないでしょうか。

それから矢板にいる自分たちが遊ぼうと思えるところでないと、観光も魅力的に映らないと思います。例えば脱出ゲームができるフィールドを用意して、地元の子どもたちが学校帰りにリアルな体験できるような環境も作りたいです。

前に水鉄砲などを使ったウォーターサバイバルゲームを開催したことがあるのですが、100名近く集まって盛り上がったことがあります。このイベントを通して、資源が豊富にある矢板はいくらでも楽しめる余地があると感じました。矢板にあるものを活かして、自分も遊びながら活動を続けたいと思います。

編集後記

漆原さんが運営している宿泊施設HINOKIにも泊まらせていただきました。山小屋をイメージしたという漆原さんお手製のベッドは、ヒノキの香りにつつまれた穴蔵のような空間で、幸せな気持ちで眠ることができました。残念ながらHINOKIは新型コロナの影響で閉めるとのことで、もどかしい気持ちでいっぱいです。エンジニアとして働いていると気付かない観光業の苦労をより感じました。
取材中はアクティビティのアイディアが止まらず、矢板の魅力をたくさん教えていただきました。四季折々に魅力がある矢板でアクティビティをやってみたいと思います。

-コーディネーター紹介-

ID 栃木県矢板市

よしもと みや

吉本 美夜

東京都出身。
2014年にModis(旧VSN)に入社し、ケミストリーエンジニアとして航空エンジンやロボットのセンサーの材料開発に従事。2020年に社内教育部門に異動し、IT未経験者向けデジタル教育や企画に取り組んでいる。地域へのデジタル教育に可能性を感じ、2021年から地方創生VIのあわら市チームに参画。
大学入学後に北海道と熊本に移り住んだことがきっかけとなり、趣味は旅行と食べ歩き、温泉巡り。