子どもたちの遊び環境づくりから究極の介護予防を目指して

栃木県矢板市

つかだ みどり

塚田 翠

健康運動指導士。医療法人社団 為王会 リハビリテーションセンターに所属。公民館や医療施設など、多様な場所で子どもからお年寄りまでの健康維持、増進活動を行っている。 究極の介護予防と子どもたちの将来の可能性を考え、「AKICHI」を主宰して子どもたちが外遊びを通じて学び、身体をつくる場の提供している。ふるさと支援センター「TAKIBI」とのコラボレーションを行うなど、多岐にわたり活動している。

一どんな活動をしていますか?

健康運動指導士として活動しています。疾患のある方、ご病気の方も安全に運動ができるようにサポートしています。また子どもからご高齢の方までの健康維持、増進にも携わっています。

以前は精密機器メーカーの生産管理部門で働いていました。祖父母の介護を経験したこと、また学生のころにアスレチック・トレーニングを学んでいたこともあって、少しでも介護を受ける方が少なくなればという想いから、現在の仕事をはじめました。

ほかには子どもたちが身体を使って、ほかの子どもと本気のかかわりをもち、且つ自由に遊べる場づくりとして「AKICHI」という活動をしています。誰でもそこにいけば誰かが居て遊べる、誘い合って遊びに行ける、そういった機会の提供をしています。

一今やっていることについての課題はなんですか?

いまの社会の考え方、仕組みですね。あらゆるものが便利になり、身体を使う機会がひと昔前とくらべて極端に少なくなったと感じています。とくに子どもの日々の過ごし方の変化に赤信号を感じています。遊びも変わりました。外遊びも少なくなりましたし、外に出ても公園でゲームをしていたりと、身体を使って遊ぶことが少なくなりました。

また遊ぶきっかけも今と昔では違います。多くの家庭では親御さん同士のやり取りで遊ぶ約束をしています。遊ぶ相手も場所もなにをするかも決めてくれますので、子ども同士でのやり取りがほとんどないのが現状です。子どもの安全や管理が大切であることは理解できますが、子ども同士が本気でぶつかり合うことがなければ、社会性を身につける機会も失うことになります。

遊びを通じてどんなことをすると危険なのか、怪我をするのか、自分の言動で他者がどのように感じて、どんな反応を得られるのかを経験する機会が少ないと感じています。そうやって過ごした子どもたちが成長して、はたして社会で戦っていけるのだろうかと不安を覚えます。

こういったことに対してなにかできないかと考え、始めたのが「AKICHI」の活動です。嬉しいことに賛同して参加してくれる親御さんや子どもたちがいますが、まだ子どもだけで遊ぶというところまでには至っていません。またこの活動をもっと多くの方に認知してもらうことも必要だと思います。FacebookなどのSNSで情報発信していますが、まだまだ足りていません。

一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことはなんですか?

子どもたちが身体を使って遊び、基礎体力を身に着け、遊びを通じて社会性を学ぶことで、チョットしたことで負けない人財づくりができるのではないかと思います。また子どもを安心して遊ばせられる場があれば、親御さんも付きっきりになることがないので、ほかのことに時間を使えるようにもなると思います。

「AKICHI」の活動を認知、賛同してもらうための情報発信、交流の手段として、ITが活用できるのではないかと思います。SNSの活用方法なども含めて、いま気づいていないツールや使い方が知れるとよいですね。

ほかには親御さんの安心と子どもの安全という観点で、子どもの行動が認識できるような手段があると良いと思います。たとえばGPSを使った行動追跡サービスなどが安価で簡単に使えると良いと思います。

一今後の目標を教えてください

「AKICHI」を通じて親御さんの意識を変え、子どもの経験の場を広げていくことです。そのために、なぜこの活動を始めたのか、この活動をしているのか、「想い」を伝えていくことですね。多くの方に賛同していただいて、「AKICHI」の活動がほかの地域にもひろがっていくと良いですね。

ほかには矢板出身のプロアスリートが生まれたら嬉しいですね。子どもたちが将来どのような競技に興味を持っても、基礎的体力と基礎的運動能力、つまり自分の身体を思ったように動かせるチカラがあれば、その先の成長の可能性が望めると思います。私の活動がそうしたことに寄与できれば良いですね。

将来的には昔のように、子どもたちが子どもたちだけで外で遊ぶことがあたりまえにできるような、それを見守ることができる社会の雰囲気づくりに貢献できたらと考えます。その結果、遊びを通じて身体と心をつくることで、将来の可能性を生み、大人や年老いてからも健康でいるための手助けができたらと考えています。

編集後記

介護というワードを考えるとき、年老いた方の健康やそれに従事する方を考えてしまいがちですが、人の健康は生まれた時からの過ごし方が影響していて、また身体だけでなく心と一体のものであるという考えはたしかにその通りだと改めて思いました。介護予防を子どものときの過ごし方から解決する。壮大な話ですが、今の社会に必要なことであり、この想いが多くの方にひろがっていけば良い、そう感じました。

いまの子どもたちの生活を通じて社会の在り方を見ている。そのためにいま必要と感じたことを実行している。塚田さんの想いと行動力に刺激をいただきました。

-コーディネーター紹介-

福島県矢祭町・栃木県矢板市

やまぐち りょう

山口 涼

静岡県静岡市出身。2000年に現VSN(当時ベンチャーセーフネット)に入社。機械系エンジニアとして、お客様先企業で半導体露光装置、硝子製品、医療機器の設計開発に携わる。自社においてはグループ・リーダーを担い、組織マネジメントの経験も積んでいる。近年はエンジニア志塾、次世代エンジニアラーニングスクエア、地方創生VI(本プロジェクト)など、社外フィールドへも活動を拡げている。知らない土地で敢えて迷子になるような手法の散歩が好きである。