夢をもってそれを叶えるために勉強!

茨城県鉾田市

みほや ともひろ

三保谷 智浩

葉物類と呼ばれる水菜・小松菜・ほうれん草を作っている。

一どんな活動をしていますか?

葉物類と呼ばれる水菜・小松菜・ほうれん草を作っています。
野菜は100%農協に出荷していますが、こういう形で今後もいいのか考えています。ただ、作った分だけ売れるので、コロナで契約先がストップする心配は無く、とりあえず農協に出せばという安心感はあります。一方で、それはただの生産農家なのかなという考えもあります。

父は茨城県で初めてパセリを作り始めた人であり、10年ぐらい前までは、パセリや春菊を作っていました。きっかけは、長野県にある会社の社長と知り合ったことがきっかけのようです。
パセリは涼しい環境が好きで、長野県の高原は、パセリにとって非常に環境が良いらしく、春から夏くらいまでは適切な気温のようです。鉾田は、その時期は暑いですが、秋から春にかけては寒すぎず栽培に適しているのです。
しかしながら、刺身や料亭の需要が減るなどの時代の流れで採算が合わなくなり現在の葉物類に転換しました。
ただ、現状の作物で今後もやっていけるとは思っていません。次は何なのかを常に考えています。爆発的に小松菜農家は増えましたが、3年もすれば専作農家は半分程度に減るのではないかと思っています。

余談ですが、パセリは、中からどんどん新しいものが出てきます。それを採っていき、袋に詰めて出荷します。春になるとトウモロコシみたいに2m位の大きさになりますので、根元から鎌で切り、野菜ジュース用にしていました。


Q.安くなる理由は何ですか?
鉾田では、根菜類を作っている人も沢山いますが、平らな土地にはハウスを立ててメロンやイチゴを作っている人が多いです。我が家の土地も比較的平らなのでメロンやイチゴを作っていました。バブル期が一番高く、徐々に価格は下がっていきました。このような中、メロンやイチゴをやめた人が葉物野菜に転換していきました。今もメロンやイチゴを作っている人は成功してる人だと思います。

葉物野菜に流れた理由は、同じビニールハウスを利用できるからです。また、使う肥料も似たようなものです。
メロンやイチゴは太陽の光が必要で、ビニールを毎年交換する必要があるのに対し、葉物用のものは数年間使用することができ、張り替え作業を軽減できますし何といっても処分費とビニール代が低減できます。
葉物類は年間最大で7作作れますが、メロンやイチゴは年間1作のみなので、収入のある期間が限られています。また、葉物はやり直しがききます。一番早い時期だと20日で収穫できますし、ハウスの回転率がいいのです。


Q:メロンやイチゴのように成功されている方は、どのような方なのですか?
職人です。葉物は大量生産型の野菜ですが、メロンやイチゴは、人によって味が違います。メロンやイチゴは「昔良かったら今もやっている」という人もいますが、研究熱心な方たちなのでやはり職人だと思います。


Q:農業の道に入られたきっかけは何ですか?
農家の長男だからです。子どもの時から「百姓やれ」「野球やれ」の2つでした。正直な話、野球は好きではありませんでしたが、父が「なぜ野球部に入らないのか」と怒ったので、中学・高校と野球部に入りました。野球部の練習は軍隊のようなものでした。結果的にあれ以上きつい事はないので、今は何でも楽に感じます。

また、「農家の長男だから、いつかはやるしかないんだろうな」とも思っていました。農業に対して子どもの時から興味があったわけではありません。
父が部分入れ歯をつけているのを見て、年をとったなと思ったことがきっかけとなり、結婚を機に27歳から就農しましたが、農家になるかどうか迷走した時期もあり、それまではいろんな会社に行ったりしていました。

なぜかというと、「野球やれ」「百姓やれ」と言われたことを真に受けていて、将来の夢を持てなかったからです。なので、小学校の文集の自己紹介の「将来の夢」の欄に怒られない程度に「プロ野球選手」と書いていました。本当は戦闘機のパイロットやミニ四駆が好きだったのでタミヤ社に入りたかったです。自分の子どもには「やりたいことをやれ」と話しています。「夢をもってそれを叶えるために勉強しなさい」と教えています。
しかし、結果としては、今の仕事は満足しています。

一今やっていることについての課題は何ですか?

葉物野菜は誰でも作れますが、課題としてはマンパワーが必要です。家族だけで収穫して出荷だと、たかが知れています。1日1人あたり20箱と言われています。そのため、外国人研修生を雇いますが、給料を払わなくてはいけないので、主要作物の空く時期に葉物をつくる人もいます。

研修生はほとんど未経験です。最大3年、日本にいることができます。個人差が出ますので作業の早い方、遅い方などいます。パートに関しては近所の方です。

葉物は年間やっていますので、従業員の仕事を切らさないように作付しています。ガソリンスタンドでバイト・店長をした経験もあり、雇用を削ることはしたくない思いがあるため、今雇っている人に関しては、絶対仕事を切らなさないようにしています。自分が生活していけるのは彼らが収穫してくれるからだと思っています。

一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことは何ですか?

葉物は収穫に関して自動化ができません。ほうれん草やレタスの収穫機はあるのですが、そう簡単にはいきません。下の葉も取らなくてはならないですし、根っこも長くても短くても駄目ですし、土もきれいに掃きとらないといけないので、これだけは必ず人の手で行います。種まきに関しては機械でできますが、種まき機は毎回清掃しなくてはなりません。穴が詰まったら種が出てこないので、収穫量に影響し、損してしまいます。

葉物収穫機ができれば最大の発明になると思います。水耕ならできるかもしれません。機械が取りやすいように、機械に合わせる作り方が必要になると思います。

また、AIに予測してほしいです。毎年作付ノートに出荷した数量や金額、売上、人件費、経費、営業利益を記録しています。電卓だと面倒なので、Excelをやっていましたが、1年くらい前からパソコン教室に通うはじめ、自分の理想の計算表ができるようになり、スキルアップしたなと思いました。グラフ化まではまだできていないですが、とくに給料計算が楽になりました。役に立つかどうか分からないですが、今も週に1回通っています。

データ化も大事ですが、手書きの作付ノートも大事です。種まきの増減の変化も記録しています。


Q:農業に対してやりがいや楽しさはありますか?
新しいものを作り始め、うまくいった時に特にやりがいを感じています。
パセリを父が茨城県で最初に始め、初めに「やめる」と言ったのが私でした。採算が合わず、ハウスの回転率が悪く、うどんこ病に耐性がついて勝てないと思いました。それから小松菜を始め、小遣い稼ぎとし作っていましたが、まさかメイン作となるとは思いませんでした。そのころ小松菜を作っている農家は少なかったのです。小松菜は水菜と年間同じくらいの値段で、一時に比べると平均単価は下がっています。作り方は、水菜と全く同じで、種を変えるだけです。種の大きさや、管理も収穫までの日数、値段も同じです。ただ収穫に関しては、小松菜の方が楽なので、労力一緒で箱数が増えます。
水菜や小松菜だけだと安定しないという面があり、ほうれん草も2年くらい前に始めました。ほうれん草は病気になりやすく難しいですが、年間単価が安定し、需要があります。

また、「やってみないとわからない」という考えもあります。
例えば、ナノバブルという、水の中に目に見えない細かい泡があります。泡の周りにマイナスの電子があるのですが、これを土にかけるとプラスのイオンである肥料成分を引き寄せます。我が家は、低い畑があるので大雨が降ると沼になり、作物が沈んでしまいます。根っこの酸欠を防ぐのに酸素剤があるのですが、これよりもナノバブルが良いと先輩から聞きました。この機械に対して初めは「騙されている」とバッシングを受けましたが、自分なりに調べて「間違いない」と思い購入しました。

効果は個人的には出ていると思います。使って収量が2割上がり、モノが良くなりました。一番の害虫であるダニはイオンが嫌いみたいで、ダニに食われた葉を取る作業がなくなり、3カ月で元を取ったと思いました。

一今後の目標を教えてください

去年目標の売上に達しました。ですが、その瞬間は一つも嬉しくありませんでした。お金ではなくて、面積と人からゴールが見えた感じがして、限界が見えてしまいました。葉物屋さんは人と面積でなんぼなんですが、面積広げて人を増やす分、維持費のコストがかかります。広げればよい問題ではなく、「コンパクトで高出力な経営ができればな」と考えています。

編集後記

先を見据えて新しい物事に興味を持ち、取り入れている三保谷さん。積極的に考えをもって行動する姿勢にとても感銘を受けました。この度は長時間のインタビューにも関わらず、ご協力いただき、ありがとうございます。

-コーディネーター紹介-

ID 茨城県鉾田市

くどう せいや

工藤 聖也

2018年 株式会社VSNに入社。以降メカトロニクスエンジニアとして勤務。
2020年 地元である茨城の課題解決や活性化に貢献したいと思い、本活動に参加。