商工会会員に寄り添い、多岐にわたった支援を

静岡県南伊豆町

たかはし けんじ / きのした かずたか

高橋 健仁 / 木下 和孝

高橋 健仁(写真左) / 木下 和孝(写真右)
共に南伊豆町出身で、高等学校等で得た商業に関する知識を活かすため南伊豆町商工会に入職。 以降長きに渡り、地域の事業者を親身に支えている。 地元ということもあり、同級生や親せきを含め身近な人々の事業サポートができることが魅力であり、サポートすることで会員の経営が少しでも良くなった時に、一番やりがいを感じている。

一どんな活動をされていますか?

(高橋)静岡県の南伊豆町商工会の一員として、地域事業者に対して多岐にわたった支援を実施しております。昔は金融指導や税務支援が中心でしたが、今は事業承継や地方創生、補助金申請の支援などの仕事が中心になっています。

(木下)2年ほど前からは、首都圏の中小企業診断士と連携して地域のキーパーソンに話を聞き、町へ提言するといった、地域活性化を目的とした事業にも取り組んでいます。これまでに、観光客の呼び込み、特産品の販路開拓、移住促進、移住者の就労支援、などの観点で提言を作成し、実際に南伊豆町の第6次総合計画策定に際して参考にしていただきました。

(木下)商工会が支援をするのは基本的に中小企業ですが、南伊豆で特徴的なのは家族経営の民宿ですね。自宅兼民宿という形態の事業者さんが多いです。また、最近はゲストハウスのような新しい形態の宿泊施設も増えてきています。

(高橋)私たち南伊豆町商工会の一番の強みは、会員に寄り添って動けることですね。中小企業診断士の資格を持った経営指導員が役場と連携して動いており、会員さんから何か要望があればすぐに対応しています。気軽に訪問してきてくれる会員さんも結構多い状態でして、会員数が少ないからこそ親身なサポートが可能です。

一今やっていることについての課題はなんですか?

(高橋)難しいね……。

(木下)やれる範囲でやっています(笑) 税務や金融関係の支援など昔ながらの仕事はそのまま残りつつ、地方創生や事業承継業務など新しい業務がどんどん増えてきて……。

(高橋)制度などもいろいろ変わってきますし、どうしても残業時間や休日出勤が多くなってしまうのかなと思いますね。職員の方も疲れ気味のところがあるのではと感じています。

(木下)コロナ以前から仕事は増えていましたが、コロナになってから一気に急増しました。直近で言うと、コロナ関連で影響を受けた事業主への協力金や補助金の申請業務が増えていて、私たちとしては結構時間に追われている部分もあるかなと。そういう状況で、事業者さんへの個別訪問や景況調査などを行う余裕がなくなってきているというのが現状ですね。

一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことはなんですか?

(木下)もうちょっと余裕があれば、事業者さんに「最近どうですか?」と聞いて回る定期巡回ができるのかなと。現状、商工会に来た人と話して情報収集をする形でやっていますが、定期巡回でニーズを拾ってきて支援の方法を検討するというような、能動的な支援ができれば良いなと思います。

(木下)ITという点では、最近Zoomを活用してオンライン経営相談や体験イベントなどを実施していますが、まだ全体を使いこなせていないのではないかなと。以前、竹細工の事業者さんなどと一緒にZoomを使った体験イベントをお試しでやってみたのですが、実際に実施したことでオンラインイベントのやり方が少し掴むことができ、イメージが具体化できたと思います。そういうことができるのであれば、事業者さんたちの事業の幅も広げられるのではないかと模索しています。

(高橋)あとは、商工会の業務ではないですが、ITがあれば何か観光資源が活かせるのかな、とは想像します。例えば、テレワークを行う技術者の方が必要な環境を整備すれば、そういう人たちが来てくれるのかなとか。そういう風に特定層に特化した、他とは差別化したものができないかなとか。やろうと思えばまだまだできることがあるのかな、とは思いますね。

一今後の目標はなんですか?

(高橋)少しでも若い世代の方に、南伊豆に残ってもらえるようなことをやっていきたいなと思います。もう十数年来の課題ですけどもね。南伊豆では人口が減少していて、勤める場所も本当に少ない状況です。伊豆半島には短大や専門学校、4年制の大学がほとんどなく、多くの方が首都圏に出てしまいます。そうするとだいたいは首都圏の会社にお勤めになる。一度外で学ぶことは良いことだと思いますので、その後南伊豆で就職して、町を元気にしてもらえるように頑張ってもらいたい。そのために勤め口を増やすという点で何かできないかなと。企業の誘致などは地理的に厳しい状況ではありますが、何とか町と連携しながらやっていければ良いなと考えております。

(木下)人口減少を抑えるという意味では、移住者が増えるのもありかなと思います。

(高橋)商工会では南伊豆にある空き店舗を借り受けて、「お試し店舗」という形で主に移住者の方などに提供しています。「お試し店舗」を利用して短期間出店する中で、地域に根差していけるように勉強してくださいと。これまでに取り組まれている方にそこをうまく利用していただければ、今後空き店舗を利用して出店してくれる方が増えてくるのではないかなと期待していますね。

(木下)行政も移住関係に力を入れている町なので、移住者の取り組みを事業化できるように支援していきたいなと思っています。

編集後記

直前に対面でお会いすることが叶わなくなり、急遽オンラインで取材をさせていただきました。とても丁寧にお話ししてくださり、オンライン上ではありましたが、お二人の温かいお人柄が伝わってきました。それ故か、和やかな雰囲気の中で取材させていただくことができ、感謝の気持ちでいっぱいです。
取材では、業務量の増加をはじめ、課題についても伺いましたが、どのお話・お考えにも根底には「会員のために」というお気持ちがあることを強く感じました。また、オンライン体験イベントや空き店舗の活用など、既に幅広い取り組みを実施されていることに加え、今後の活動像なども様々伺うことができ、活動の幅の広さや柔軟さが印象に残っています。
お二人に直接お会いできるのを楽しみにしています!

-コーディネーター紹介-

ID 静岡県南伊豆町

とみより ゆうな

冨依 優奈

横浜市出身。大学卒業後、2020年にModis(旧VSN)へ入社。
ITエンジニアとして、セキュリティ診断やサーバー運用などに携わる。
人の生活と距離の近い活動がしたいと考えていたところ地方創生VIを知り、2021年から南伊豆町チームに参画。