『南伊豆×東京』 ハイブリッドな目線で南伊豆町を盛り立てる地元企業

静岡県南伊豆町

おさだ よしお / おおくら あきお

長田 芳郎 / 大倉 暁雄

長田 芳郎(おさだ よしお)さん (写真右)
南伊豆町出身。東京の大学に進学後相模原で10年ほど働く。大倉さんが前職の都合で南伊豆から離れなければならない状況になった際「家と車」を用意し、南伊豆での活動継続を支援した。

大倉 暁雄(おおくら あきお)さん (写真左)
東伊豆町出身。東京の専門学校へ進学。東京でデザイナーとしてキャリアを築く。紙媒体での広告代理店での地方創生事業立ち上げ時には1,200近くの町村に電話をかけ続け、全国を巡った経験を持つ。

一どんな活動をされていますか?

(長田さん)
90年以上続く建設会社の3代目です。今は「地域から愛される企業」であり続けるために建設業にとらわれず、宿泊業や制作業等の他業種への進出や異業種との連携も行っています。
宿泊業では【らいずや】という温泉宿泊施設を運営していて、この施設の中に【BLUE LaIZU】という会社の事務所を構えています。
育ちは南伊豆ですが、大学時代は東京、それから卒業後の10年ほどは父親の指示もあり、相模原のゼネコンで実家を継ぐための修業をしていました。当時は年に数回しか実家に戻らず、南伊豆のことはあまり頭にありませんでした。そのせいか戻ってきたときには時間の流れ方など都会との大きなギャップを感じました。地方創生的な取り組みを始めるにあたり、先代自身は「外の考え方」というものを知っていたので特に大きな反対もありませんでしたが、当時の役員からは反発もありました。田舎や都会という枠組みにかかわらず、新しいことを取り入れないと相対的に退化してしまう。そういった話に実感を持ってもらえなかったのだろうと考えています。
今では職場見学や職場体験の積極的な受け入れなど、地域の子供たちのための取り組みも行っています。

(大倉さん)
【BLUE LaIZU】の一員として活動しています。
東京の専門学校を卒業後、東京でデザイナーとして働いていました。親の指示がなければ上京しようなんて思わないくらい地元が好きだったので、出身地である東伊豆がどんどん寂しくなっていくことに思うところはありました。紙媒体の広告代理店に勤務していた際、新しい事業の企画をしなければいけなくなったので、元々関心があった地方創生の事業を立ち上げ、全国を渡り歩いて「よそ者」の視点で自治体と仕事をしていました。そのときは入札資格の関係などで腰を据えて大きな仕事をすることはできませんでした。今は【BLUE LaIZU】で夏の間の海の家の運営等に携わったりデザイナーとしてクーポン付き南伊豆ガイドブックである「南伊豆ツアーパスポート」の制作に携わったり、南伊豆を盛り上げるための仕事を手がけることができています。

一今やっていることについての課題はなんですか?

(長田さん)
建設会社としては「働き方」というものが課題だと考えています。他の業種と同じように週休2日が叫ばれていますが、日雇い労働者も多くいる建設業界の構造的に、毎週土曜日が休みになってしまうと収入面で困窮する人が出てきてしまいます。国や県もそこはわかっているので補助もありますが、全額とはいかないうえに根本解決にはなりません。一方で若い人たちの価値観に適応するために週休2日を取り入れる必要もあると考えています。
地域貢献という側面ではコロナ禍ということもあり、現場での職場体験というものが難しくなってしまったという点です。住宅の内見ではオンライン内見なんてものもできるようになっていますが、建設現場でそれをやったところで実際の現場の状況をうまく伝えられないのではないかと懸念しています。
地方創生は正直何ができれば成功、正解が分からない状態になっているのが課題だと捉えています。また、外から来た人を地元の人がうまく受け入れられないという状況があるのも現実です。

(大倉さん)
南伊豆町としての課題は多いですが、その中でも顕著なのは高齢化だと思っています。8,000人を切る人口なのに半数以上が高齢者です。南伊豆は観光業で成り立っている地域なので今高齢者が運営している民宿がどんどん空き家になっていくという現実があります。ただ、その高齢者には元気で協力的な人が多くいます。
南伊豆は何かやるなら元気な高齢者がたくさんいる今ですね。それを町内での継承に任せるのではなく自分たちのような企業が引き継いでどんどん形として残していく必要があると思っています。

一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことはなんですか?

(長田さん)
「働き方」に関しては海外の休日日数を多くして成功している国に学んでどうにか改善する方法がないかとは考えています。学生の採用はITをもっとうまく使えれば現場のイメージを伝えられるようになれば面白いのではないでしょうか。
地方創生に関して今は後ろ向きな人を巻き込めたらもっと進んでいくと思います。実際、大倉さんが来てからは彼自身のキャラクターもあり地方創生が進んだという実感があります。外から急に来た人が説得するよりも何年も南伊豆で過ごした外の価値観を持つ人が話したほうが耳を傾けてもらいやすいです。

(大倉さん)
先ほどあげた空き家問題も【BLUE LaIZU】が不動産業を始めて、民宿をやりたいという他県の人にバトンタッチをして活用する方向に持っていこうとしています。自分たちのような地元に根差した企業が間に入ることで手つかずの自然がある南伊豆らしさを損なわずに続けていけると考えています。

一今後の目標はなんですか?

(長田さん)
事業も地方創生もどんどん広げていきたいです。地方創生は【らいずや】を拠点に人員を増やしていきたいと思っています。
その中で人口というものは何をするのにも大切な要素だと考えています。当初は人口が多ければ得るものが多いと考えていましたが、幼い頃12,000人ほどいた人口が今では8,000人を切ってしまった現状を見ると、人口を維持していくことが重要だと思うようになりました。
移住をしてもらうのもよいと思いますが、一度出て行ってしまった若い世代がもう一度戻ってきて結婚と出産をするというサイクルが作れるようにしたいと考えています。

(大倉さん)
高齢者が多くなると台風等の災害が起きた際の逃げ遅れなどの心配があるので、そういった災害時のネットワークづくりをしていきたいと考えています。まだ大きくは稼働していませんが「MINANET‐ミナネット‐」という地域助け合いネットワークの準備をしています。災害が起こる前に町内のネットワークを強固にしておき、実際に災害が起きたときにスムーズに動けるように事前準備をしておくイメージです。
地方創生はビジネスとして成立しなければならないと思っているのでこの考えを念頭に置いて活動していきたいと思っています。

編集後記

取材時はお二人のスケジュールの都合もあり、別々にお話を伺うことになりましたがお互いへの信頼を感じることができました。大倉さんの「地方創生はビジネスでなければならない」というお気持ちと長田さんの「100投資して1返ってくればよい」というお考えが見事にマッチして今に至っているのだと思います。今の南伊豆だけではなく今後の南伊豆のためにという信念を持つお二人の活動をもっともっと大きくするためにITというツールを導入するお手伝いが出来たらうれしいなと感じさせていただきました。

-コーディネーター紹介-

ID 静岡県南伊豆町

やました ゆか

山下 裕加

茨城県取手市出身。大学以降、昼は東京、夜は茨城という首都圏郊外の典型的な生活を送ってきた。2019年7月に営業として勤めていた印刷会社を辞めVSNに入社。現在はインフラエンジニアとしてわかったような顔で「よくわからんな」と思いながらプロジェクトマネージャーへの道を歩んでいる。