“あたりまえ“という価値の再認識

北海道仁木町

うじがわ のりお

宇治川 徳夫

清水建設株式会社、所属。 現在、北海道新幹線、二ッ森トンネル(尾根内)工事を担当。「清水・岩倉・札建・吉本 特定建設工事共同企業体」の所長職として現場を管理されています。 一つの現場につき複数年その土地に住みながら、全国のインフラ事業を経験。20年以上このような生活をつづけながら日本のインフラ整備を牽引してくださっています。

一どんな活動をされていますか?

日本全国でトンネルや道路を作る仕事をしています。
現在、仁木町では北海道新幹線のトンネル工事を行っており、この先も数年継続する予定です。単身で現場に来ており、自宅のある関東には月に1回ほど帰省しています。このような生活を20年以上も続けています。

仁木町の印象は、”とても理解があり協力的な土地” でしたね。この先、長く関わる土地になりますので、地域の皆さまと良い関係を作る事が最も大事だと思っています。
仁木町では、町内会長さんをはじめ地域の方々から、いろんなことを教えて頂きました。
これは、全国的に見ても稀で、北海道の良いところなのかもしれませんね。外部の人間を受け入れる温かさがある地域だと感じました。

一今やっていることについての課題はなんですか?

時代と共に、価値観が変わってしまった事でしょうか。
土木建築業者のイメージは悪くなってしまった事については、とても残念です。
もちろん、騒音や危険を伴う大型車の往来など、住民にとって迷惑な存在ですから。
昔は道路や鉄道など社会インフラが整っておらず、道もなくて不便だった時代には、工事現場の作業員はヒーローのような扱いで、お茶を出してくれたり、ねぎらってくれたり、その工事を歓迎してくれていました。
しかし、今は十分に整備され、道路や鉄道があることが当たり前という時代になりましたね。その結果、住民の意識の中で、ありがたいという想いが薄れてしまったように感じられます。
今回のトンネル工事にしても、その意義や価値、現場でどのような技術が使われ、どのような工夫とともに工事が行われているのか、もっと多くの人に知って貰いたいと思います。
この仕事の魅力を伝えられなければ、将来この仕事を目指す人が現れなくなるかもしれません。

一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことはなんですか?

少子高齢化という難局を迎える日本において、全国各地でスマートシティ化が進む可能性が高いと思っています。その時、もっとも重要なのは、まちとまちをつなぐ新幹線や高速道路といった高速交通網です。
災害時にすぐに駆け付けられるように整備しておくなど防災の観点としても重要ですし、仮の話ですが、他国からの侵略に対する防衛という観点からも、大型車両がすぐに駆け付けられ、大量物資等が容易に輸送できる鉄道網を整備しておく必要があるかもしれません。
また、デジタル技術を活用する事で、維持管理に関する負担やコストの軽減ができるかもしれませんし、新しい機能をもった道路や鉄道に作り変えていく、という観点が新たに必要になってくると思っています。

一今後の目標はなんですか?

インフラ工事の重要性や価値向上をめざして、この仕事の価値や魅力について、どんどんアピールしていきたいと思っています。業界全体としても、力をいれて取組んでいる所です。
この仕事の価値や魅力を、多くの人々に知ってもらい再認識してもらった時には、この仕事を目指してくれる子供たちが増えることを確信しています。
そんな未来を実現するためにも、まずは「知ってもらう事」が大事です。情報格差の是正ですね。
知っていないと意味がない、伝わらないと実装されない、これはあらゆる業界に共通する課題だと思います。デジタルが発達してきた今だからこそ、可能になった情報発信の仕組みもありますので、色々と工夫をして伝える努力をしていきたいと思っています。
早く、仁木町の銀山地区にも光回線が整備されると嬉しいですね!

編集後記

トンネル工事の現場を見学させて頂きました。まさに異世界。もしかしたら、一生に一度の体験かもしれません。小さいころに、この現場を見ていたら、トンネル工事ができる職業を目指していたかもしれない、、、、と本気で思うほど、現場で働く作業員の皆さまはカッコよく見えました。

工事車両が通る道には、「ねこ優先」の看板が置かれていました。
工事現場の皆さまによる地域住民への配慮でもあり、良く対話され良好な関係を構築されている事が伺えました。

・・・・仕事の価値や魅力、使われている技術の継承。

工事現場だけでなく、農業や町工場にも蓄積されている、その仕事の魅力やスキルや伝統は、その後の社会にとって重要な財産。~デジタルデータとして残す事ができたら、今は衰退していく産業だったとしても、遠い将来、別の土地でも、これを引き継ぐ者が現れる可能性に期待できる~。帰路の車中、運転しながら、強く仰っていた役場職員の方の横顔が印象的でした。

-コーディネーター紹介-

ID 茨城県鉾田市・北海道仁木町

たねはた けいじ

種畑 恵治

種畑 恵治(たねはた けいじ)。1976年、札幌生まれ、44歳。
大学卒業後の1999年、VSNへ入社のため上京。主に組込み系のソフトウェア開発エンジニアとして、約10年お客様先にて業務。2008年から社内の委託・請負サービス部門にてプロジェクトマネージャーとして、プリセールスや受注したプロジェクトの管理業務を実施。
2018年1月から2年間、技術研修部門の管理、2020年1月より未来創造グループ長として、VSNのアセットを使った新たな価値創造を目指し活動中。