進路指導は生き方指導!生徒の人間力を養う先生

栃木県小山市

たなか まさき

田中 正樹

栃木県立小山高等学校 進路指導主事
教員として34年ほど従事しており、担当科目は数学。進路指導には30年ほど携わっている。「将来幸せになること」を進路指導の最終目標に掲げ、日々生徒と向き合っている。

一どんな活動をされていますか?

栃木県立小山高等学校で進路指導を担当しています。小山高校に着任したのは11年ほど前で、これまでに鹿沼高校、矢板東高校、黒磯高校も経験しました。担当科目は数学で、進路指導は30年ほど従事しています。

これまでに様々な高校や地域を見てきましたが、小山市は住みやすいまちだと思います。一部には工場がたくさんありますが、まちが広々としており、都心にも出やすい立地ですね。ただ、交通の便がいいので、小山市以外の進路を希望する生徒も多いです。小山高校では国公立大学を志望する生徒が多く、特に理系は全国様々な大学に進学するため、進学を機に小山市を出てしまいます。一方で、実家から首都圏の大学に通うケースも最近増えているようです。昔は女の子を家から出したくないと考える家庭が多かったですが、男の子の場合でも実家から通わせたいと考える家庭も増えているようなので、家庭教育が昔から変化していると感じます。

一今やっていることについての課題はなんですか?

携帯電話やSNS等の普及により、昔に比べて生徒の時間管理能力が衰えてきていると感じます。デジタルツールは便利ですが、普段の生活の中で触れる時間がどんどん増えており、勉強や部活動に打ち込む時間を削ってまで触ってしまうケースも散見されてきました。このままだと、高校生活だけでなくその後の人生まで影響が出てしまうことも考えられます。生徒たちがデジタルツールに使われてしまわないように、自己管理できる能力を身に着けることが必要だと思います。

また、小山市には良い意味でも悪い意味でも「いい子」が多いです。素直な一方で、指示待ちの姿勢や主体性に欠ける面も見かけることがあります。人生では場面ごとに「当面の目標」を掲げて進んでいく必要があり、部活動等が終わった3年生の当面の目標は希望する進路を実現することになります。しかし、自分で当面の目標や目標を実現するためのアプローチを考えることができないと、目標のないふらふらとした人間になってしまいます。そのため、当面の目標はなくてはならないものだと考えています。

一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことはなんですか?

希望する進路を実現するという当面の目標を達成させる過程で、「人間力」を育成・強化することに繋がります。人間力が養われることで、人生の究極の当面の目標である「将来幸せになること」を実現する可能性が高くなると思います。
私は、進路指導は「将来幸せの道に進むための指導をすること」だと考えています。これを達成するためには、人間力が必要です。人間力とは、知力、体力、心の力で、その中でも体力と心の力が重要だと考えています。体力はすべての基盤なので、心も体も常に健康を意識する必要があります。心の力とは、「絶対やり遂げる!」、「自分はできる!」と強く信じることです。当面の目標は、何も学習しなくても実現できてしまう簡単なものではなく、高い目標の方がいいと考えています。高い目標を掲げることで、何度も失敗することもありますが、「失敗に学ぶこと」が何よりも重要です。
受験における失敗として、まずは失点が挙がります。間違い直しをする際に、二度と間違いたくないという強い信念を持ち、繰り返し問題を解くことで知力が後からついてきます。また、最終的に第一希望の進路が達成できなくても、「自分はできる!」と強く信じて努力を重ねた経験が、人間力を養う唯一の手段・方法だと考えています。失敗してもやり遂げた生徒は、たとえ第二希望の進路でも納得して進むケースが多いです。逆に、第一志望に合格したからといって、今後の人生で必ずしも幸せになるとは言い切れませんよね。そのため、受験を通して人間力を養うことは、将来幸せになるための最も重要な経験で、受験の本来の目的だと考えています。

一今後の目標はなんですか?

今後も自分の信念を少しでも多くの生徒に伝えていきたいです。高校だけでなく、大学や特別支援学校等でも伝える機会を設けることができるといいですね。そのためにも、まだまだ自分自身の人間力を磨く必要があると考えおります。

他には、小山市は教員目線で見ると教育がやりやすいまちだと思います。穏やかな生徒が多く、住みやすいまちであるため、首都圏のような密集した地域より教育がしやすいと感じます。また、新しくどこかに住もうと考える人は、就職先があるか、学校教育は充実しているか、医療が充実しているか等を重視する傾向があると思います。その点、小山市は学校教育が安定しているので、家賃や交通の便等の住みやすさと併せて、親目線だと魅力的に映るのではないでしょうか。私自身、これからも一教員として教科書の例題をただ解くだけのような接し方ではなく、毎日魂を込めて生徒と向き合いたいと思います。

編集後記

取材の日に初めてお会いした際、田中先生に対して最初はクールな印象を持ちましたが、お話を聞いていくうちに非常に熱い方だと感じました。特に、取材の中で、進路指導は「人間力指導、生き方指導である」と仰っていたのが強く印象に残っています。受験に対する姿勢や、人間力の強化・育成が必要なことは、自分が高校生の時に聞きたかったな…と胸を打たれました。学校の風景や教室の雰囲気にどこか懐かしさを感じる一方で、聞くお話一つ一つが新鮮で、人生との向き合い方を楽しく学ばせていただきました。田中先生、また是非お話を聞かせてください!

-コーディネーター紹介-

ID 栃木県小山市

よしだ たかとし

芳田 貴敏

2015年に株式会社VSNへ入社。主にWEBサイトやアプリケーションの運用や開発業務でお客様先にて従事。普段の業務を飛び越えて、多種多様な人たちと何か一緒に成し遂げたいと思い、地方創生VIの活動に参加。頭を使うことよりも体を使うことが得意で、ジムでのトレーニングが趣味。