一どんな活動をされていますか?
旭川家具をつくっているメーカーの会長としてものを作る人の環境を整えています。地域性を活かし、地域と共存することを何よりも大事に考え、ものづくりとはどういうものかを地域住民に理解してもらい共栄していくことを意識しています。
具体例としては、東神楽町の小中学生に使う物のデザインを考えてもらい、匠工芸の若手社員がいくつか選抜させていただき、実際に使う物を作り上げるという「君のアイディアが本物になる」という取り組みを過去10年間実施しました。作った物を自社で展示し、デザインした学生はもちろん、そのご両親や祖父母など地域の住民に足を運んでいただくことでものづくりについて触れていただける機会を創ることができたと思います。
一今やっていることについての課題はなんですか?
地域住民との交流機会の創出です。上述したイベントと同様に、地域住民との共存を目的として外で音楽を流して運動会をして、子供たちが気づいて遊びに来たらいつでも輪に入れるようなものにして一緒に楽しんだり、オフィスに地域住民を招き、楽器の生演奏を鑑賞する“星空コンサート”を主催しましたがゲストとしていらっしゃった農家の方からジャガイモやかぼちゃ、とうもろこしなど農作物の差し入れなども多くいただいたので、それらを軽食にしてお出ししていました。
自分で作ったイモを久しぶりに食べた、なんていう声もありましたね。いらっしゃるお客様は約300人くらいでオフィスに入りきらないほどの方にお越しいただけるほどご好評をいただいていました。
また、展示会で家具を見て触って感じていただく機会を設けていましたが新型コロナウイルスの影響で少なくなっています。一年に何度かはそういった機会を創り、地域住民やその他の一般顧客とつながるための取り組みは必要だと考えています。
一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことはなんですか?
“心に届ける”の企業理念や”つくっているのは、心地です。”といったスローガンを掲げていますが、我々は家具づくりをしながら使い手に心地良く伝わる製品を創造しており、使い手はそれらを触れて、仮に椅子であれば座って感じてもらうことができます。
そもそも地域にいる人たちが自分たちで暮らしを楽しむことを創り出しながら生活することで都会から目を向けられ、結果として都会との間で人や情報が行き来し新しいものが生まれてくることや、地域活性化に繋がるのだと考えています。インターネットは匠工芸の家具に関心を寄せてくださる消費者に情報を届けたり、人と人をつなぐためのツールとして使うなど、新しい世代がそれぞれのアイディアでITを活用していってほしいです。
一今後の目標はなんですか?
人を育てる会社になることです。小さな会社でも人と情報のネットワークによって持続できると考えています。プロとして、ゆくゆくは独立するような気持ちで技術を高めてほしい思いがあるので、面接の時にもまずものづくりとはどういうことかを聞いています。独立を奨励しているというわけではないですが、一通り技術を習得して仮に独立した後にもやりとりは続き、自社で対応できない案件を頼んだりその逆もあると思います。
今は息子が社長になり、若い世代が会社の基盤になっています。これだけ安い製品やモノ余りの現代で、生活道具としての家具をいいデザインや付加価値などのこだわりを持ち提供して、次の世代を担う従業員に会社で学び育ってほしいと願っています。
編集後記
ご自身が職人としてキャリアをスタートさせた当時の徒弟制度や職人の世界の厳しさを経験したからこそ、作り手の環境を配慮するという考えに至ったのだなと感じ尊敬の念を抱きました。ご自身は農家の三男として父親から好きなことをやるように言われ、就職も勉強もしたくなかった当時に先生から紹介された職業訓練校が木工との出会いだったという話や、その後就職した家具メーカーでも膠(にかわ)という動物の骨を溶かして作る天然の接着剤の作り方が職人によって違ってダメ出しが厳しかったというお話は当時のリアルな体験談として興味深く、おもしろかったです。
様々なことに持続可能性を求められる時代となった今、一貫して“人”、そして“地域”を大事にする桑原会長の考え方に非常に共感しました。