『新陳代謝』が起こる観光地、津和野を目指す

島根県津和野町

ふじやま こう

藤山 宏

商工観光課に15年間勤務し、2022年3月に課長として定年を迎える。 商工観光課長時代には、コロナ経済対策として全国で初となる 商工事業者への直接的な運営費補助を具体化するなど多種多様な活動を行う。 商工観光課と商工会、観光協会が連携して活動してきた実績もあり、 定年後に商工会からお声をいただき事務局長として現在に至る。

一どんな活動をされていますか?

商工観光課の課長として去年3月に定年を迎えたため退職し、その次の日から以前よりお声掛けいただいていた商工会事務局長に着任しています。商工観光課に勤めていた時から、早期段階でコロナの対策として地域事業者にクラウドファンディングを活用するなど支援を行ってきました。また、そのほかにも商工観光課、商工会、観光協会には風通しの良い連携文化があり、コロナ禍での支援策を一緒に検討し、30を超えるプログラムを実施していました。

現在は、津和野町が観光庁の「地域一体となった観光地の再生・観光サービスの高付加価値化事業」に採択され、観光地の整備のほか、観光客の宿泊に備えてゲストハウス開業などの、新規事業による「新陳代謝」が起こるよう支援を行い、津和野町の観光インフラの整備を目指しています。

一今やっていることについての課題はなんですか?

津和野町の全盛期は町民より貸し自転車の数が多かったり、泊まるところがなくてタクシーの運転手の家に泊めてもらった人がいるくらい観光地として栄えていました。町合併前のピーク時には154万人の方々が観光で訪れる町でした。それに伴い、観光業がどんどん大きくなっていましたが、修学旅行や団体ツアーへと旅行形態が変化する中、じり貧となり、やっと回復したと思ったらコロナをきっかけに観光客が減少し、現在の観光客は合併前で換算すると70万人程度となっています。

それに対して新しい取り組みや企画ができないかと検討しておりますが、栄華を誇った時代からの衰退を経験しているのと高齢化や過疎化も相まって、何か新しいことをやろうとしてもあきらめムードが先に立ち、なかなか活動が盛んとなりません。

また、今まで盛んだった観光業の衰退や人手不足等の原因により、宿泊施設などが廃業となっており、町として観光客が宿泊できる施設のキャパシティが減ってきています。そのため、商工会として観光業を中心に盛り上げていこうと活動しておりますが、公共交通のJR、バス、タクシーなどが夜遅くまで動いておらず、夜まで営業している飲食店が少ないといった観光に関する様々な課題を抱えており、なかなかうまくいかない状況です。施設や店舗を新しく作れば良いというわけではなく、少子高齢化の影響もあり働き手がいないのです。既存の事業者も雇用の基盤が弱く過疎化や高齢化の影響もあり、事業者のパワーが減っていることも課題と感じています。

津和野町は私が商工観光課にいた以前から観光地としてポテンシャルのある要素は揃っており、さまざまな事業を行ってはきましたが、まだまだそれを活かし切れていないのです。それをどう、どのように観光に活かしていくのか。そういったところも今後考えていきたいです。

一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことはなんですか?

町全体の「新陳代謝」となるよう、すでに海外からの観光客へのツアーやレンタルサイクルを用いた体験プログラムなどの新規事業の具体化や検討をしており、そういったものがこれからの津和野町の観光業への刺激になればと感じています。

また、コロナで停滞していた観光客の宿泊可能人数を増やす活動がようやくスタートしており、ホテル事業者を誘致したり、一棟貸しのゲストハウスの整備などの動きが見えてきました。若い人たちは古民家などに興味があるようで好評をいただいており、それを目的にした観光客も多く来られています。そのように、日本遺産なども活用した新規事業がどんどん増えれば宿泊施設もでき、町をめぐる楽しい要素も生まれ、滞在時間の延長につながり、町に活気が戻ってくるのではないかと期待しています。

それ以外にも、働き手といった面では若い人が副業として働くのも良いかと考えています。新しい事業として、店舗を利用されると思うのですが、地方ということもあり若者を中心に認知度が低くアクセスもしにくいため、津和野町に興味を示すことが難しいと感じています。そこへITの力を利用して空き店舗のデータベースを作り、認知に寄与できないかと考えています。また、マターポートなどのVRの技術を使って、店舗空間を遠隔地から簡単に把握できることも面白いですね。そのようなITの技術で情報を発信し、津和野町で新しく事業を始めたいという方がでてくると嬉しいです。

商工観光課で勤めていた時や、商工会で勤めている今も変わらず、新しい事業による「新陳代謝」で観光業が再び盛んになり町に活気が戻ってくること、それが様々な課題を解決したら見えてくるんじゃないかなと思っています。

一今後の目標はなんですか?

観光地として「新陳代謝」がおき、新しい人が事業を起こすことのできる津和野町を私のテーマの一つととらえています。

そのため、町外の人だけではなく町民も、津和野町の良さや魅力を知ってもらい、国の補助金なども利用して一緒に活動したいです。町内外関わらず事業を津和野町で起こすことに興味を持っている人にこちらからアクションすることも大切ですね。そこにITなどを使い、興味を持った人が新規事業をどんどん行なっていくような新陳代謝が活発になることで、津和野町に活気が戻ってきてほしいです。

また、経済循環を促進するために日本遺産なども活用した付加価値活動(例:長期滞在型体験プログラム)の企画や滞在時間の延長に資する工夫を引き続き行い、地域の活性化に寄与したいと考えています。

編集後記

町の課題を商工という目線からどう行えば事業者が増えるのか、事業者が増えるには利用者である観光客がどうすれば来るのか、観光客が来るには観光をどうすればいいのかといった、先の原因まで考えている。これが商工会のお店のみならず人として頼られる藤山さんの考え方なのではないかと実感いたしました。

新しい技術や制度も積極的に取り入れようとしておられ、これが技術を持ったエンジニアとつながると加速度的に観光業が活性化するのではないかとワクワクしています。

また、テーマに『新陳代謝』という言葉があるように新しいものを取り入れるだけでなく、古い廃屋などをどう使うかといったことも考えられております。津和野町としての問題点をうまく長所として利用する、そんな活動が津和野町の小京都をさらに魅力的なものにするのではないかと一緒に活動できるのがとても楽しみです。

-コーディネーター紹介-

ID 島根県津和野町

やぎゅう ひろき

柳生 大樹

2018年にModis(旧VSN)へ入社。
インフラであるサーバやネットワークの設計構築のエンジニアとしてお客様先で業務。
その後、データサイエンスの知見を深め、データサイエンティストへ。
2021年からは地方の交通課題の解決のMaaS事業や、 地方創生プロジェクトなど、得意なコミュニケーションをもとに地域の数々の問題を解決する立場となる。