よりよい津和野という町を未来へ

島根県津和野町

くすのき ゆたか

楠 寛

津和野生まれ、津和野育ち。 大学進学後、退学し津和野に近い広島で勤務。 父親が他界したのを機にUターンし津和野町役場へ就職。 その後教育委員会に異動となり、つわの学びみらいの事務局長にも従事。

一どんな活動をされていますか?

父親の他界をきっかけに津和野に戻って役場に入り、現在に至っています。
よりよい未来の津和野町を目指し、教育委員会として学校や町の意見を県に伝えたり、つわの学びみらいやHAN-KOHを通じて津和野高校の魅力化や地域が学べる環境の創出を行なっています。 高校の魅力化は、今までのいわゆる学力を高めていく学校教育だけでなく、「対話する力」「課題を見つける力」「社会に出たときに生きていく力」をプラスしていくことだと考えております。その高校の魅力化に魅力を感じる学生に来ていただきたいと思っています。

そして、島根県の高校だけでなく全国の名だたる有名校と比較してでも「行きたい」と思える津和野高校にしたいと思っています。そのような津和野高校の実現のため、日々学校現場や県などとの調整や橋渡しを行っています。教育もそうですが、仕事を通じて地域社会へ貢献し、未来へよりよい津和野という町を残していきたいと考えています。

一今やっていることについての課題はなんですか?

津和野高校の魅力化がまだまだ道半ばだと感じています。 原因の一つとして教育委員会が「教育そのもの」に対する活動に追いついていないという現状があります。例えば津和野高校は様々な活動の結果県外からの進学が増えておりましたが、進学者の増員に寮の受け入れが間に合っておりませんでした。県立高校であるので本来は県にお願いしたいところですが、町の予算で寮を整備することとなりました。

ところが、町営の寮を作ったはいいものの炊事担当が見つからない、寮の規律をどうしたらいいかわからないなど、県立高校という事もあり、町だけの判断でできないことや役割の切り分けなども多く、県の立場も理解したうえで対話も行っていかなければいけません。 ちなみに今朝も寮の食事が本当にできるのかが心配で朝の5時から寮を見に行きました(笑)

こういった寮の運営も含めて、地域の人たちにももっと教育に関わっていただきたいですし、学校の魅力化をさらに進めるためにもつわの学びみらいの組織としての成長や地域との連携がさらに必要だと考えます。 また教育に限らず、医療や産業などの視点からも、津和野という地域の高齢化が進み、行政への依存度が高い状態であり、そこを行政の力だけで支え続けるわけにもいかないので、そこを民間の力や国の補助をうまく使って乗り切っていかなければいけない…そんな課題が山積です。

一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことはなんですか?

前述の多くの課題を乗りこえるためにつわの学びみらいや魅力化コーディネーターがいると思っていますし、コーディネーターのみなさんも忙しい中で意見をぶつけ合いながらよく頑張ってくれていると思っています。組織としての力を整え、同じ方向を見ることができればもっとできる事があると思っています。 つわの学びみらいは、教育の仕事だけをやる組織だとは考えてはいないため、いずれはいろんな事業に取り組んでいってほしいですね。

また、IT 分野は決して強くないので民間の力を借りたいと思っています。特にエンジニア等のICT人材の育成です。 生徒が専門分野に進んでくれれば将来津和野に帰ってきて働くこと、起業することが可能になり、そこから雇用の創出につながるかもしれません。 高校からそういった地域へのよりよい循環が生まれるととてもうれしいですね。 そこに対しても学校側の了解や調整、どの程度の時間や責任をだれが持つのかなどの課題がありますし、役割分担も必要になるでしょうね。

つわの学びみらいのメンバーの多くが地域の外からきてくれていますが、彼らや IT スキルを身に着けた人材が外部視点をもち続けたり、既成概念を払拭したり、刺激を与え続けたり、行政にできない役割をもってくれることで津和野によい循環が生まれるのではないかと思います。

一今後の目標はなんですか?

県立高校という枠組みはありますが、地元の子どもたちはもちろん、全国から行きたいと思われる独自性、魅力を持った津和野高校にしていきたいです。 多様化も大事だが、より津和野高校の特色を出したり、最終学力へのコミットメントという面も大事にしていかなればいけません。

行政としてつわの学びみらいをこれからも育てていき、つわの学びみらいやHAN-KOH とともにもっと地域にアプローチし、企業誘致などを含めた地域が学べる環境づくりを大事にしていきたいと考えています。一方でいろいろなことにトライして力をつけてきた実感もあるのですが、蓄積してきた情報から舵を取り向かうべき方向を見定めていきたいですね。 そして未来によい津和野という町を残していくことができれば、私は嬉しいです。

編集後記

終始穏やかな語り口調でお話しいただいた楠さんですが、教育という津和野町が持つ資源で津和野高校の魅力化、さらにそこを起点に津和野の未来を創っていきたいという強い想いはひしひしと伝わってきました。
その一方で県、町、教育委員会、学校現場、そしてつわの学びみらいというそれぞれの間に立っておられる難しいポジションという事もあり、理想と現実のギャップやそこを埋めるためにどうすべきかを相手の立場も含めて考えておられる難しさも伝わってまいりました。
なんとかそのギャップを埋める道筋を一緒に考えていけたらと思います。

-コーディネーター紹介-

ID 島根県津和野町

かんば ゆういちろう

神庭 雄一郎

鳥取県米子市出身。2008年にアデコ株式会社に入社し、首都圏の派遣部門を中心に従事。
現在はコンサルティング事業を行う部門で営業、新規事業企画などを担当。
パラレルキャリアとして東京日本橋において地域コミュニティ・イベントの運営企画、オンライン配信企画などを行う。