一どんな活動をしていますか?
地元の材木を使ってキャビネットやチェスト、ダイニングテーブルやチェアなどのオーダーメイド家具をつくっています。 そのかたわらで、2011年に仲間たちと立ち上げた地域の有志団体『西地区環境整備隊』の隊長としても活動していて、月に2回、チェーンソーを持っては山に入り、間伐や伐採などの里山整備にも励んでいます。 隊員は、私も含めて全部で12名。 Iターン者がほとんどですが、地元出身のメンバーも活動していますよ。女性も2名ほど在籍しています。
一はじめたきっかけはなんですか?
もともとは美容師に憧れていたのですが、時代は就職氷河期。 安定した職業として公務員になることを勧められ、郵便局員になる道を選びました。 が、「自分で何かをつくってみたい」というものづくりへの想いを抑えることができずに脱サラ。 29歳のときに、お客さんだった建具職人さんのもとに弟子入りしました。 森林整備の活動を始めたのは 「自分たちの手で里山を守っていかなければ、良質な木材を手に入れることができなくなってしまう」 と思ったからです。
一一番大切にしていることはなんですか?
「職人の技と、森を守っていこうという意識」。 手入れをされずに自由気ままに伸びた木は、一般的に材木としての価値がほとんどありません。 ぐねぐねと曲がっていたり、節のたくさんある“扱いづらい木”に付加価値を与えられるのは、私たち職人だけだと自負しています。 材木自体には価値がないので、森林を整備する人がますますいなくなる……これでは悪循環。 森の恩恵を受けて仕事をしている以上、その環境を整えていく責任が自分にはあると思っています。
一今後の目標を教えてください
未来のためにいい木を育ててあげること。 昭和30年代に植えられた木が、いま伐期を迎えています。新しい木を育て始めるいまこそが、良質な木を育てていくチャンスのとき。 森を整備しなければまた同じ過ちを繰り返してしまいます。 そのためには仲間を増やして、森を守ることの大切さを普及していく必要があります。 森の恵みは材木だけではありません。きれいな水や空気も森林がくれる恩恵。 地域で協力しながら、森を守っていけたらいいなと思っています。
アピールポイント
手入れをされずに自由に育った木は、節が多かったり、ぐねぐねと曲がってしまっているのですが、こういった木は「ボタン押して機械で加工」というわけにはいきません。機械加工には向かない木のウィークポイントも、私たち職人ならば、それぞれが持つ“個性”として、唯一無二の作品に変えてあげることができます。木目や節、曲線を取り込んだ味のあるデザインは、手づくりだからこそなせる技。上伊那は薪ストーブが普及している地域なので、ともすると、加工しにくい木は薪にされてしまいがちですが、エネルギー資源として使うのは最後の手段でいい。職人が手をかけてあげれば、たとえば100年自由に生きた木を、家具としてさらに100年生かしてあげることができるのですから。
【こうあ木工舎】
HP:https://www.koaglobal.com/woodworks/woodworks.html
-コーディネーター紹介-
人とつながりと循環をとても大切にされています。肩書きの「木を伐る木工職人」と呼ばれると、ついつい職人がイメージの中心についてしまいますが、個人的には生き方の土台があってこそ、これらの選択があるという風に感じています。僕も中村さんも体育会・団体競技出身なので、感覚や認識のゾーンが近いところがあります。地域での新しい挑戦は、ぜひ共創していきましょう!