美味しいイチゴをつくる -バイオマスエネルギーの可能性-

長野県駒ヶ根市 

カスガトモナリ

春日知也

南信州駒ヶ根市。中央アルプスの麓でイチゴ園を営む春日さん。6年前に東京から家族とUターンして農業研修を始め、3年前に就農しました。冬でも快適な温室ですが、イチゴが元気に美味しく育つように、環境をつくることは大変なんです。信州の厳しい寒さをしのぐには、暖房が必須。その燃料を地域でまかなうことができたら、お財布にも地球にも優しい!?今回は美味しいイチゴとバイオマスエネルギーの小さな取組について、お話をうかがいました。

一どんな活動をしていますか?

イチゴ栽培のかたわら、地域のバイオマスエネルギーの利用研究会を主宰しています。

一はじめたきっかけはなんですか?

農業の視点からエネルギーについて、ずっと考えていました。信州の冷え込みはかなり厳しいです(-15℃以下の夜もあります)。温室とはいえ、昼間も雪や曇りだったら暖房機が動きます。美味しいイチゴを育てるために、大量の燃料を購入するわけなんですが、海外からくる価格変動のある化石燃料に依存し続けることがどうなのかな、って疑問に思っていました。本来、地域由来のバイオマス(再生可能な生物由来のエネルギー資源)があるんですよね。例えば里山から切り出す薪(まき)だって、昔から重要な生物由来エネルギーです。私たちは、これらの地域資源を有効活用するために伊南バイオマス利用研究会を立ち上げました。

  • 研究会の様子。先生による講義に真剣に耳を傾けています。様々な先行事例を勉強しながら、駒ヶ根に最適なバイオマスエネルギーを検討します。農業はもちろん、様々な立場から意見交換が続きます。

  • バイオマス施設の視察研修の様子。実際の施設機器を見ることで、導入後のイメージを膨らませます。施設に合わせて機器の規模も変わります。見慣れない機器に研究会員も興味深々でした。

一一番大切にしていることはなんですか?

まずなんといっても、美味しいイチゴをお客様に届けることです。美味しいイチゴって姿・輝き・濃厚な味わいが全然違います。そんな、美味しい農作物をつくるために、エネルギー問題は避けて通れません。農家だからこそ実践できることはないかと、いつも考えています。

一今後の目標を教えてください

もちろん、バイオマスエネルギーで育てた美味しいイチゴを沢山つくりたいですね(笑)。そのためにも、まず先行事例として自分の温室にバイオマス施設を設置したいです。仲間と勉強会を重ねることで、当地では木質バイオマス(ウッドチップなど)を利用することが、価格・効率の面で良いことが分かりました。勉強会には、花き(カーネーションなど)農家や林業・製材関係者、地元の企業など参加しているので、それぞれの立場から地域ぐるみでバイオマスエネルギーを推進したいです。

アピールポイント

駒ヶ根は晴れの日が多く、空気と水がきれいな場所です。スタッフと大切に育てたイチゴ(紅ほっぺ)は瑞々しく甘さと適度な酸味のバランスが好評で、贈答用やお菓子職人さんなどに多くご用命頂いています。新鮮な旬のタイミングで収穫したイチゴは特に美味しいですので、ぜひともお問い合わせください。また、伊南バイオマス利用研究会は誰でも参加可能です。詳しくは下記リンクをご覧ください! <問い合わせ先> 信州駒ヶ根いちご園 http://komagane-ichigo.com/ 伊南バイオマス利用研究会 https://www.facebook.com/inanbiomass/

-コーディネーター紹介-

農業といっても、施設園芸(温室を使って農作物を育てる)というジャンルでは、室温を維持するため、特に燃料エネルギーと重要な関わりがあることが分かりました。例えば、日本全国、里山が荒廃している中で間伐材を燃料として使えたら、地域にお金が循環するし、CO2の削減にも期待が持てます。これからも、地元の地域資源の可能性に注目したいですね。あと、研究熱心な春日さんのイチゴは、甘くて味が濃厚で美味しいですよ!

ID141 長野県駒ヶ根市

ふくとみ がく

福冨 岳

栃木県出身。淡路島にある景観園芸の専門機関で勉強した後、造園会社で東京を中心に指定管理者として都市公園の緑地管理やマネジメント、市民ボランティア事業の実務を担当しました。 2015年から3年任期の地域おこし協力隊として駒ヶ根市に移住。現在は農産物の6次産業化をテーマに商品開発などの推進・掘り起しの業務をおこなっています。雄大な中央アルプスと南アルプスを身近に感じながら四季折々、今日も市内各所に出没中です。facebook / instagram # fukutomi_botanical