"地元でとれるもので、その地域ならではの文化を作っていく"町並みの女性竹細工職人

愛媛県内子町

アキヤマ トキコ

秋山 登紀子

神奈川県横浜市出身。12月10日生まれ。趣味は音楽鑑賞。 大学、一般企業就職を経て、京都伝統工芸大学校伝統工芸学科で2年間竹工芸を学ぶ。卒業後、宮城県で4年間の修行を経て、愛媛県の「武工房」へ拠点を移す。

一どんな活動をしていますか?

ざるを中心とした竹細工を作っています。 京都にある伝統工芸の専門学校で竹細工を学んだ後、自分が竹で何を作りたいかと考えたとき、生活に密着したざるを作りたいと思いました。卒業後は、ご縁があって宮城の職人さんのもとで4年間の修行を積み、2016年、愛媛にある「武工房」へ拠点を移すこととなりました。 「武工房」は、専門学校時代の先輩である武智さんの構える工房。お互い学んだ場所は同じですが、使用する竹や製作しているものは全く違います。そこがまた、この工房の良さだと思います。

一はじめたきっかけはなんですか?

以前から美術系の仕事やものづくりに憧れがありました。大学卒業後、一般企業へ就職しましたが、その思いが忘れられず、会社を退職し、ものづくりの世界に飛び込もう!と一念発起。その中で興味を持ったのが竹細工でした。 専門学校時代は、竹がうまく割れないことが悔しくて泣いたこともありましたが、不思議と嫌にはなりませんでした。自分に竹細工は合っているんじゃないかと思っています。 また、京都では茶道に使われる茶筅や茶杓、米どころの宮城では米研ぎざるの生産が盛んだったりと、地元で自生している竹を使いながら、その地域の生活に根ざした竹文化がある。そういうのって、すごくいいなぁって思ったんです。 "地元でとれるもので、その地域ならではの文化を作っていく"。私も愛媛に来て、「地元の竹を使ってざるを作りたい」、そう思いました。しかも、私の場合、地元にはない作り方。おもしろいんじゃないかなって。

  • 「口へぎ」という方法で、竹の皮を剥いでいるようす。竹細工の材料をつくるための工程です。 竹の先端にナタで切り込みを入れて、そこを口にくわえ、作るものに適した厚みにしながら皮を剥いでいきます。右手の親指と人差し指で、1本1本の竹の硬さや竹質を確認しながら行うこの作業。長年の経験が必要となります。 また、材料の良し悪しが編み方にも影響するため、最も重要な工程。難しい作業ではありますが、さまざまな竹と向き合える楽しい時間だと秋山さんは言います。

  • 内子町は、江戸後期から明治にかけて木蝋生産で栄えた町並みが今も残ります。歴史情緒にあふれ、ゆったりとした時間が流れる町並み。その通りに秋山さんの製作拠点である「武工房」はあります。 「武工房」は、江戸後期の古民家を活用した工房であり、販売所、体験もできます。全面開放された工房からは、それぞれ違った竹を使う2人の製作のようすが目に飛び込んできます。職人さんとのやりとりも「武工房」の魅力のひとつ。訪れた際にはぜひお声をかけてみてください。

一一番大切にしていることはなんですか?

製作に使用する竹は愛媛県産のものを使い、11~2月には材料になる竹を自分たちでとりに行きます。寒い季節に竹を伐る作業は大変ですが、「良いざるを作りたい!」と思うと苦になりません。 伐り出してきた竹は、女竹(めたけ。愛媛では苦竹と呼ぶ)という竹で、2~3ヶ月かけて乾燥させます。製作前に、ざる作りに適した太さに切り、2~3日水に浸し、やわらかくしたものを使用します。 竹は人間と同じ。それぞれ個性があって、頑固な子もいれば、素直な子もいるし、ひ弱な子もいれば、頑丈な子もいる。その個性を見極め、天候や季節、状態に合わせながら下準備や製作をしなければなりません。 また、今の販売スタイルは、直接お客様とやりとりする受注生産。お客様に用途やご要望を聞いて、編み方やサイズをお好みのものに仕上げます。お客様の声を聞く中で、学ぶことも多く、顔を思い出すと製作にも熱が入ります。

一今後の目標を教えてください

まずは、製作のスピードを上げること。ざるの完成を楽しみに待ってくれているお客様に、少しでも早くお届けできるようにしたいです。 そして、将来的には自分が本当に納得できるものを作り、人に伝えることができたらと思います。自分が「おもしろい」と感じるものに興味を持ってもらい、それを伝えていけたら嬉しいですね。 また、最近気付いたのは、私は"竹"がおもしろいだけじゃなく、"竹を通して見えるもの"がおもしろいんだなって。竹を通して人と会話することで、その人の人となりだったり、考えていることが伝わってくる。工房の中で製作に没頭するスタイルもいいけれど、店先でお客さんと気軽に会話ができるオープンなこの工房が、私には合っている気がします。

アピールポイント

秋山さんが作ったざる。竹ざるは金ざるよりも軽く、水切れが良いことが特徴です。 秋山さんが材料として使う女竹(苦竹)は、竹細工の材料としてポピュラーな真竹よりもやわらかい素材。なめらかな手ざわりで手にもやさしく、入れたものを傷つけません。秋山さんのざるは、さらに竹を面取りするという一手間を加えることで、よりやさしい手ざわりに仕上がっています。 良いものをお客様にお届けするため、つねに勉強や研究を欠かさない姿勢にこだわりを感じます。

-コーディネーター紹介-

「こんにちはー!」 町並みの通りに響く、秋山さんの元気な声。いつも明るい秋山さんの姿に、元気をいただいています! 秋山さんが内子にいらっしゃると聞いた時、私と同じ宮城からの移住、女性の職人さんと知って、嬉しかったことを思い出します。あれから約1年。今ではすっかり町並みの顔となり、移住して1年とは思えない存在感を発揮しています。 "地元でとれるもので、その地域ならではの文化を作っていく"。 宮城で培った技術と愛媛の竹を使った、秋山さんにしか作ることができない竹細工で、彼女自身がその担い手になっています。

ID111 愛媛県内子町

しみずかな

清水香奈

宮城県仙台市出身。東京の美容専門学校卒業後、仙台で10年間美容師として勤務。2015年4月~愛媛県内子町地域おこし協力隊(観光振興担当)に着任。 内子の町並みを、あでカワイイ(あでやか+カワイイ)着物姿でいっぱいにするべく、2016年5月~「内子あでカワプロジェクト」企画・運営に携わる。着物の着付け体験を通して、内子の魅力を感じてもらえるよう日々奮闘中! ご縁はあったけれど、ゆかりのない愛媛で移住lifeを楽しむアラサー女子☆