一どんな活動をしていますか?
入社から約10年、緑化担当の専門技術者として「養命酒健康の森」の森林や緑地の整備、樹木の管理、野草の育成に取り組んでいます。工場に訪れたお客様が、四季を通じて気持ち良く散策できるように手入れをしつつ森を育てています。伐採作業もほとんど自営工事で行っています。
一はじめたきっかけはなんですか?
始めから森林や樹木の仕事をしていたわけではなく、35歳で編入学した大学で森林植生や森林景観についてイチから学びました。その後、養命酒が森の計画や管理、整備ができる人を探しているタイミングで、知人の紹介で入社しました。当時は「養命酒健康の森」がスタートして間もなく、「森のカフェや散策路を作ったのに人が歩いてくれない」という課題と松枯れの問題をきっかけに、「森の健全化」という根本的な森林整備計画を立てることから始めました。
一一番大切にしていることはなんですか?
美しい森をつくることです。それは多種多様な樹木や野草が共存し、多段な階層構造やギャップ(林冠の穴から陽の光が射し込む空間)、オープンスペース(明るい開放的な空間)や並木などで構成された多様な空間が有り、花実・新緑・紅葉といった四季の変化を楽しめる森づくりです。 私が携わる前の森は、「森を大切にする=木を伐らず」という考えと、画一的で美化緑化的な刈込みで、アカマツの幹とヤマツツジくらいが目立つ単調で薄暗い森でした。そもそも里山の森とは、人が生活のために木を伐り、落ち葉を掻くなど利活用することで森を若返らせ、その過程で野草が咲き、多様で美しい森林景観が人々の営みの中で維持されていました。 そこで「養命酒健康の森」の森づくりでは、自然本来の力を引き出すため、まず木を伐ることから始めました。カフェから眺めるこの森が、わずか7~8年の間に、私自身の手でも一千本以上のアカマツを伐採して作られた森であるとは、伐った本人でも想像できない劇的な変化です。森の中に陽の光が差し込むと山桜やカエデ、カンバなど様々な樹種が次々と生えて来て、現在は、アカマツが皆伐されて明るくなった空間で、将来の森を担う樹木を選択的に刈り出すことで育成しています。 いずれにしても森づくりに携わる者は、まず森の木を知るということが大切だと思います。
一今後の目標を教えてください
現在、構内の森林整備はまだ3分の1以上が手付かずです。また、整備した森も年々成長し変化しますから、まだまだ未知なる可能性があります。これからも目の前の森の姿を読み、未来を想い、自然の力を最大限に生かす森づくりを進めて行きたいと思います。 「養命酒健康の森」は訪れたお客様に癒しの空間を提供する森です。それとともに、現在、長野県の各地ではマツノザイセンチュウ病による松枯れが拡大しています。地域の里山の森として「養命酒健康の森」の森づくりが、アカマツ林を今後どのように導けば良いのかという課題に対して、一つのモデルケースを示すことができたら良いと思っています。
アピールポイント
四季を通じて気持ち良く散策が楽しめる森づくりをしています。また、森の楽しさを体感できるようなイベントや森のガイドツアーなども実施しております。機会がありましたら、森や樹木のことについてお気軽にご質問ください。 養命酒駒ヶ根工場・健康の森 〒399-4117 長野県駒ヶ根市赤穂16410 0265-82-3310 https://www.yomeishu.co.jp/komagane/
-コーディネーター紹介-
健康の森に足を踏み入れた瞬間、美しい木漏れ陽と若々しく育つ幼木がいたるところに生えて、よく見かける公園や植林された里山と全く異なる、瑞々しい森の雰囲気に圧倒されました。「森は手を入れることで活かされる」と伊藤さんは言います。時間をかけて人の手半分、自然の力と呼応しながら創られた森は美しく、とても居心地良いの良い空間でした。イベント時は、伊藤さんも健康の森でガイドツアーもやっているので、お気軽に質問もできるそうです!