一どんな活動をしていますか?
ざるを中心とした竹細工を作っています。 京都にある伝統工芸の専門学校で竹細工を学んだ後、自分が竹で何を作りたいかと考えたとき、生活に密着したざるを作りたいと思いました。卒業後は、ご縁があって宮城の職人さんのもとで4年間の修行を積み、2016年、愛媛にある「武工房」へ拠点を移すこととなりました。 「武工房」は、専門学校時代の先輩である武智さんの構える工房。お互い学んだ場所は同じですが、使用する竹や製作しているものは全く違います。そこがまた、この工房の良さだと思います。
一はじめたきっかけはなんですか?
以前から美術系の仕事やものづくりに憧れがありました。大学卒業後、一般企業へ就職しましたが、その思いが忘れられず、会社を退職し、ものづくりの世界に飛び込もう!と一念発起。その中で興味を持ったのが竹細工でした。 専門学校時代は、竹がうまく割れないことが悔しくて泣いたこともありましたが、不思議と嫌にはなりませんでした。自分に竹細工は合っているんじゃないかと思っています。 また、京都では茶道に使われる茶筅や茶杓、米どころの宮城では米研ぎざるの生産が盛んだったりと、地元で自生している竹を使いながら、その地域の生活に根ざした竹文化がある。そういうのって、すごくいいなぁって思ったんです。 "地元でとれるもので、その地域ならではの文化を作っていく"。私も愛媛に来て、「地元の竹を使ってざるを作りたい」、そう思いました。しかも、私の場合、地元にはない作り方。おもしろいんじゃないかなって。
一一番大切にしていることはなんですか?
製作に使用する竹は愛媛県産のものを使い、11~2月には材料になる竹を自分たちでとりに行きます。寒い季節に竹を伐る作業は大変ですが、「良いざるを作りたい!」と思うと苦になりません。 伐り出してきた竹は、女竹(めたけ。愛媛では苦竹と呼ぶ)という竹で、2~3ヶ月かけて乾燥させます。製作前に、ざる作りに適した太さに切り、2~3日水に浸し、やわらかくしたものを使用します。 竹は人間と同じ。それぞれ個性があって、頑固な子もいれば、素直な子もいるし、ひ弱な子もいれば、頑丈な子もいる。その個性を見極め、天候や季節、状態に合わせながら下準備や製作をしなければなりません。 また、今の販売スタイルは、直接お客様とやりとりする受注生産。お客様に用途やご要望を聞いて、編み方やサイズをお好みのものに仕上げます。お客様の声を聞く中で、学ぶことも多く、顔を思い出すと製作にも熱が入ります。
一今後の目標を教えてください
まずは、製作のスピードを上げること。ざるの完成を楽しみに待ってくれているお客様に、少しでも早くお届けできるようにしたいです。 そして、将来的には自分が本当に納得できるものを作り、人に伝えることができたらと思います。自分が「おもしろい」と感じるものに興味を持ってもらい、それを伝えていけたら嬉しいですね。 また、最近気付いたのは、私は"竹"がおもしろいだけじゃなく、"竹を通して見えるもの"がおもしろいんだなって。竹を通して人と会話することで、その人の人となりだったり、考えていることが伝わってくる。工房の中で製作に没頭するスタイルもいいけれど、店先でお客さんと気軽に会話ができるオープンなこの工房が、私には合っている気がします。
アピールポイント
秋山さんが作ったざる。竹ざるは金ざるよりも軽く、水切れが良いことが特徴です。 秋山さんが材料として使う女竹(苦竹)は、竹細工の材料としてポピュラーな真竹よりもやわらかい素材。なめらかな手ざわりで手にもやさしく、入れたものを傷つけません。秋山さんのざるは、さらに竹を面取りするという一手間を加えることで、よりやさしい手ざわりに仕上がっています。 良いものをお客様にお届けするため、つねに勉強や研究を欠かさない姿勢にこだわりを感じます。
-コーディネーター紹介-
「こんにちはー!」 町並みの通りに響く、秋山さんの元気な声。いつも明るい秋山さんの姿に、元気をいただいています! 秋山さんが内子にいらっしゃると聞いた時、私と同じ宮城からの移住、女性の職人さんと知って、嬉しかったことを思い出します。あれから約1年。今ではすっかり町並みの顔となり、移住して1年とは思えない存在感を発揮しています。 "地元でとれるもので、その地域ならではの文化を作っていく"。 宮城で培った技術と愛媛の竹を使った、秋山さんにしか作ることができない竹細工で、彼女自身がその担い手になっています。