つくる人と食べる人が支え合う豊かな暮らしをめざして

長野県伊那市

ウノ シュンスケ

宇野 俊輔

かぎろひ屋代表/LURAの会代表。 1955年11月30日生まれ。大阪府出身。 インドネシアやフィリピンでの農業支援活動をきっかけに農家に転身。 会員制の参加型農業プロジェクト『LURAの会』の運営も行う。

一どんな活動をしていますか?

化学肥料や農薬を使わない有機無農薬の米や野菜の栽培をしていて、自然食品やオーガニック食品を扱うお店、個人宅に出荷しています。つくっている作物は40~50種類ほど。また、2011年に立ち上げた会員制の参加型農業プロジェクト『LURAの会』の運営も行っていて、会員の方々と一緒に畑に出て農作業をしたり、収穫した野菜を送ってあげたりしています。現在、会員は30家族ほど。県外の方もいますが、近隣にお住まいの方が大半を占めます。

一はじめたきっかけはなんですか?

フィリピンの開発援助として農業支援に行っていたことがあるのですが、そこでの活動を通じて農業をすることの“意味”や食べ物が持つ“力”を知りました。自分たちが食べるものを自分たちで生み出せるということは、暮らしていく力があるということ。自分たちの暮らしを確立するためには、自分たちで食べものをつくることが何より大切だと気づいたんです。当時の経験を活かし、帰国後は地方に移住して、自分も自給生活を送ろうと決めました。

  • 畑の真ん中につくった屋根つきのコミュニティスペース。調理場をつくって、採れたての野菜を皆で食べたり、イベントを行うのが目標。右は妻の順子さん。

  • 順子さんが焼いてくれた焼きもろこし。まるで果物を食べているかのようにジューシーで、びっくりするほどの甘さだった。まるでスイーツ!

一一番大切にしていることはなんですか?

「健康的な作物をつくること」かな。 うちの野菜は化学肥料も農薬も使いません。なぜか? 土の中にいる微生物まで死んでしまうからです。 人間は見た目を気にしてしまいがちですが、見た目が整っているからといって健康的な野菜とは限りません。そもそも、私の農業は海外支援の際に習得したもの。「現地の人たちがいかに余計なお金をかけずに健康的な作物をつくるか」というところからスタートしているので、化学肥料や農薬を使うことなど、考えもしませんでしたね。『LURAの会』の会員は自分にとって家族のような存在なので、家族のために健康で安全な食べ物を届けてあげたいという想いもあります。

一今後の目標を教えてください

つくる人と食べる人が支え合う豊かな社会をつくっていきたいですね。『LURAの会』は会員の方に年会費を収めていただき、一緒に農作業を手伝っていただきながら野菜作づくりに関わっていただく参加型の農業プロジェクト。ふだんは私たちがかわりに作物を育てて、収穫した作物を会員の皆様にお届けしています。その年の天候によっては収穫が多いときもあれば少ないときもありますが、『LURAの会』のように、恵みとリスクを皆で分かちあうシステムが確立できていれば、生活をよりよいものに変えていくことができると思うのです。

アピールポイント

『LURAの会』を立ち上げて10年目。はじめは、収穫体験や稲刈り体験といった農業体験をサービスとして提供する組織にしようかとも考えたのですが、一過性のものではなく、暮らしや意識の中に潜在的に“農業”や“食べ物”の存在があるようにするにはどうしたらいいかと考え、今の形に行き着きました。ただ野菜や米をつくるだけでなく、大豆からは味噌や醤油を、米からは麹を、稲わらからはしめ縄を、といった具合に自給の幅は広がりを見せています。基礎調味料ぐらいは自分たちで確保できるようになりたいので、次は油をしぼれるようにしたいですね。参加者からも「はちみつをつくりたい」という声があがっていて、養蜂部の立ち上げも準備中です。現在は30家族50人ほどの会員の方がいらっしゃいますが、200人くらいまで数を増やしていくことが目標です。

-コーディネーター紹介-

朝マルシェに最初から参加頂き、惜しみない協力をこれまでもして頂いています。視野が広く、視点も多く、寛容さもとても深い。奥様の順子さんも素敵な方で、訪れた女子がほぼ全員、順子さんにまた会いたい、再訪したいというステキなご夫婦です。諸々、話せることも多く、長くなりますが、ただ今後ともよろしくお願いします!という人生の出会いではなかったかと勝手に思っています。またお世話になります!

ID9 長野県伊那市

さいとう しゅんすけ

齋藤 俊介

地域の有機農家と商店街の飲食店と市民の三者をつなぎ「母子で朝食の時間を過ごす」場を提供する「朝マルシェ」、南アルプスと中央アルプスという二つの山岳地域へ訪れる登山者に地域ならではの価値提供を行い街や人をつなぐ「ASTTALプロジェクト」を企画しオルタナS・地域デザイナーズアワードをダブル受賞。16年は中心市街地全体を学校に見立て「路地の一つ一つに学びとの出会いがある」をテーマとした「学びのまちプロジェクト」のサポートを手掛け、持続的な取り組みへと伴走している。