東京から益子へ、ひたむきに進む陶芸の道。

栃木県芳賀郡益子町

キタガワ チカ

北川 チカ

1982年生まれ。東京都出身の陶芸家。玉川大学で陶芸専攻し、卒業後に母親の実家がある石川県の九谷焼技術研究所で陶芸の基礎やデザインを3年間学ぶ。2010年に東京に戻り、個展、グループ展を中心に制作活動を始める。2014年から益子町の陶器市に出店し、翌年益子町に拠点を移す。

一どんな活動をしていますか?

2015年に東京都から益子町に移住し、陶芸を行っています。作品は、石川県南部の伝統工芸である九谷焼の技法を基本とした、色絵の磁器です。具体的には、アラビア半島のモスク等の建造物をモチーフにした、絵本の世界を表現したアラビアンナイトシリーズや、一珍技法で立体的に仕上げたハート形をお花にアレンジし色鮮やかな染色を施したスーパーフラワーシリーズを制作しています。 東京都内の百貨店や益子町内のギャラリーでの展覧会を中心に活動しており、益子陶器市にも出店しています。

一はじめたきっかけはなんですか?

高校生の時にアメリカ合衆国ボストンの高校に留学をしましたが、言葉が通じずに苦労していました。アートの授業では、現代アートについて学習した後に学校の敷地内で空間を表現したのですが、言葉なしでも思いを伝えることができるという経験ができ、言語を超えることが出来るアートの素晴らしさを感じました。それからは、ボストンでアートの授業が楽しみになり陶芸の経験をすることも出来たのです。 帰国後には、大学で陶芸を専攻しましたが、より深い技術を身に付けるために、九谷焼の色使いに魅かれていたことと、母親の実家もあり縁もあったため石川県立九谷焼技術研修所で2年間陶芸の基本を学びました。卒業後、東京に戻りましたが2年間は卒業生向けの支援授業を受けるために石川県に通っていました。 東京では、作家としてどのように活動したら良いかわからず手探り状態でしたが、小さなアパートに電気窯とろくろを置いて制作活動を続けていました。少しずつ活動の幅を広げていきたいと考えていた時に、益子町は、東京から通いやすい距離にあり、既に県外からの移住者も多く、県外の作家が受け入れてもらいやすい風土にあると知り、益子陶器市の見学に伺いました。その時に益子町で作家活動をしている方も紹介していただき、たびたび訪れるようになりました。半年後には、陶器市に初出店しました。翌年の2015年、益子焼作家の方と縁があり結婚することになったため住まいを益子に移し、工房を構えました。

  • 色鮮やかな焼きあがった作品。

  • 九谷五彩の絵の具が載ったパレットが収納されている。

一一番大切にしていることはなんですか?

作品を見る人に楽しんでもらいたいと考えていますが、まず自分自身が楽しみながら作れる作品を制作することを心がけています。

一今後の目標を教えてください

移住してから1年間は、家と仕事を整えることで慌ただしい毎日を送っていましたが、夫も仕事が忙しく、益子での知り合いが少ないため孤独を感じることもありました。最近は、益子での生活にも慣れ始めたので、町のスポーツクラブに参加するなどで少しずつ交友関係を広げて楽しんでいます。少しずつ関わるコミュニティを増やしていけたら嬉しく思います。 大好きな陶芸も、このまま長く続けていけるようにと考えています。益子焼は釉薬の種類も九谷焼とは全く違っているので、最近は益子の素材についても研究をしています。これまでの、九谷焼の技法にどう応用できるか検討していきたいです。

アピールポイント

呉須(ごす)と呼ばれる青藍色の顔料で線描きと、九谷焼の特徴である5種類の色を用いる九谷五彩を使用した色鮮やかな絵付けを行う。モチーフは、ハートや花、東京のビル街やアラビアのムスクなど身近にある物や、おとぎ話の世界観を表現している。磁器は薄くて軽いが、丈夫で割れにくいため、食器として使いやすい。

-コーディネーター紹介-

一人で新しいコミュニティに入ることは不安もあると思いますが、飛び込まれていった方です。使う人の気分を盛り上げてくれそうな色とりどりの作品と同様に、いつも明るい笑顔が印象的な北川さんですが、このまま地域でのつながりを築いていって頂ければと思います。

ID88 栃木県芳賀郡益子町

いわさきまきこ

岩崎真紀子

1986年生まれの益子町出身。学生時代は神奈川県ですごし、Uターンして益子町役場へ。小さな地域でもつながりにくいヒトやモノ、コトをつなぐことに必要性を感じ、2009年に町内の陶芸をはじめとするクリエイター、農家、勤め人ら有志でつくる地域コミュニティヒジノワの立ち上げに参加。以後、運営に関わっている。