牛の恵みに魅せられて。ナチュラルチーズで地域を魅力的に!

茨城県稲敷市

ニシヤマアツシ

西山厚志

1978年生まれ。神奈川県横須賀市出身。畜産関係の公務員として働くうちにナチュラルチーズ世界の深淵を覗いてしまい、40歳手前にしてチーズ職人の道へ。2017年夏、稲敷市内でチーズ工房を建設予定。

一どんな活動をしていますか?

 現在は開業に向けて東奔西走中ですが、開業以降は稲敷市産の放牧乳を使ったナチュラルチーズの製造と販売をします。ミルク風味豊かなフレッシュチーズはもちろん、茨城県内の地酒を使って発酵させた熟成チーズも製造予定です。私は茨城県外からの移住者なので、早く地域の方々に仲間と思ってもらえるよう、県内のあちこちで行われるイベント等に出店して、稲敷で醸したチーズを売りたいと思っています。

一はじめたきっかけはなんですか?

 在職時、チーズ工房を応援する仕事をしているうちに「支援する側ではなく仲間になりたい」と思ったのが最初の火種でした。ちょうどその頃、農村に移住就農した学生時代の友人と再会、生産者としての充実感を教えてもらったことが火種を大きくし、さらに稲敷市内で放牧酪農を営む上野さんと出会えたことがトドメになりました。消化できないほど延焼した心の中の炎を見て「これはもうチーズの道にいくしかない」と…。

  • 酪農家の上野さんと。「牧場は資源だ」と語る上野さんは、西山さんのような若者を積極的に応援しています。

  • チーズ工房を開業予定の牧場では、放牧による自然のままの酪農を実践しています。青々とした大地と稲敷らしい広い空は絶景!

一一番大切にしていることはなんですか?

 私のチーズ工房予定地がある地域は限界集落で、多くの人達が集落外へ出てしまっています。集落に活気を取り戻すため、移住者である私がこれから始めるチーズ工房を使って「この集落は面白い!」ってことを発信できれば、同じ志を持つ移住者を増やせるかもしれない…。そんな自分の可能性を試せることにやりがいを感じます。  やりがいというかロマンを感じる部分は、道なき道を自分で切り開かなければならないところ。  日本にホルスタインがやって来たのが明治18年。そこから日本に酪農が根付いたのだとすると、日本の乳文化はまだ100年ちょっとの厚みしかありません。「日々の食卓に当たり前のように乳製品が並んでほしい」という夢を叶えるためには、日本の乳文化を次のステップへ進める必要があります。  一方で、世界の乳文化は1万年前から始まっています。古から続く長大な道の果てに私は立っていて、「これから先の道を私が作れるかもしれない」「日本の乳文化を進化させる一助になれるかもしれない」と思うと、ロマンとともに大きなやりがいも感じます。

一今後の目標を教えてください

 まずは1日でも早く開業すること。そして美味しいチーズを安定して作れるようになることです。チーズの種類については、日本酒の風味がほのかに香る白酵母のソフトチーズ、炙って溶かして食べるウォッシュチーズ(アルプスの少女ハイジの作中で暖炉で溶かして食べていたいアレ)をメインに、5~6種類作ろうと考えています。

アピールポイント

 チーズ工房の予定地がある新利根協同農学塾農場は、都心から最も近い放牧酪農の地です。その地で生まれた牛がその地で育った草を食べ、搾ったミルクを稲敷の風土でチーズに醸す…。きっと稲敷の味と呼べるチーズになります。皆さんに愛されるチーズが作れるよう、日々精進する所存です。  最後に、新利根協同農学塾農場の主である上野さんは「牧場は資源だ」と言います。確かにその通り、ミルクからは様々な食材を生み出せるし、放牧地は観光スポットにも写生大会の題材にもなるし、命のやり取りが伴う酪農経営は教育資源にも研究資源にもなります。  今はまだ牛と放牧地しかないところですが、私のチーズ工房を始めとして牧場という資源を活用する仲間を増やし、また新しいカタチの地域おこしとして示していくことができれば嬉しいです。

-コーディネーター紹介-

創業塾の同期だった西山さん。バイタリティあふれる行動力とガッツで、ナチュラルチーズの工房を絶賛準備中です!工房予定地の牧場もまたステキな空間で、西山さんのチーズをきっかけに新しいコミュニティが生まれる、そんな気がしています。

ID169 茨城県稲敷市

たかしませいや

高島聖也

高島聖也(しましま) 稲敷市地域おこし協力隊(第1期)。地方在住Webライター。マルチワーカー。 「暮らしの編集」をテーマに、ライティング、リノベーションまちづくり、コミュニティデザインなどの複業を通じてじぶんの人生を組み立てています。