都会でのIT系会社員からトマト農家へ、家族を養う覚悟のUターン。

群馬県片品村

ホシノショウイチ

星野勝一

1980年1月6日生まれ。片品村出身で、大学進学を期に片品を出て、滋賀の大学へ進学。卒業後、東京の会社に就職し、10年間IT系の会社で働いていた。子どもを自然豊かな地で育てたいという想いから、5年前にUターン。夫婦でトマト農家を営み、妻、子(3人)と共に暮らしを育んでいる。

一どんな活動をしていますか?

5年前にUターンして、トマト農家をしています。
やりがいは、自分の仕事がほぼ100パーセント自分に帰ってくることですね。失敗しても成果が自分に帰ってくるからへこまないんですよ。失敗も、納得ができる。これは、組織にいたんじゃ味わえないものです、組織にいると、へたしたらいい仕事をしたことで怒られたりするからね(笑)
家族を養わなきゃという思いがあるので、収入を確実に確保する事は大事に考えてます。農協への出荷はお客さんの反応は見えないけれど、東京のレストランにトマトとジュースを直接おろしているので、そこのリアクションがモチベーションになっていますね。

一はじめたきっかけはなんですか?

Uターンする一番のきっかけは、子どもを自然豊かな地で育てたかったから。 あとは、東京で生活すること、サラリーマンに疲れて…いろんなタイミングが重なったから。
奥さんは、反対でしたね。でも、なんとか説得して。元々田舎育ちの人じゃなくて、トカイナカ的なとこで育った人なので、抵抗はありましたね。サラリーマンとして年収が安定してたところから、収入不安定になるのはこれから子どもも大きくなるのに不安だっていうのもあったり。ただ、自分がどうしても、農業やりたいっていうのと、これからの人生設計を考えた時に、どこに住むか?って考えて。都会でマンション買って住むのか、田舎に家を建てて子育てして歩んでいくのどっちがいいかって考えて、半年くらいかけて説得しました。あと、家に入るんじゃなくて、戻ってくるのを機に新しく家を建てました。そうじゃなければ、難しかったでしょうね。

  • トマトのハウス20棟が並ぶ築地の地域は、山に囲われた片品村の中でも開けた風景の美しい農地が多い地域だ。

  • 山の湧水を、毎日定量トマトに送る装置。勝一さんのお手製で、効率化の設計にITでの経験が活かされていると感じる。

一一番大切にしていることはなんですか?

この水の装置なんです。片品の普通の農家は1週間に1.2回トラックで水を汲んできてどばっとあげるんですけど、うちはこれで毎日あげてます。 山の、湧水をホースで1キロくらい引っ張ってきてます。その水が、タイマーで決められた時間に定量の水が肥料と一緒にがトマトに送られる仕組みになっています。
たぶん人間と一緒で、栄養とか水分とか必要なものを、一度に大量に摂取するより少しづづ必要な分だけ吸収していった方が健康なトマトができるんじゃないかと。
たぶん、一個のトマトをもっとおいしく育てる方法はあります。水分を絞るとか。濃い味のトマトができる。でも、そうすると木に負担がかかって実る期間が限られてしまう。だから自分は最初から最後までを同じ品質でつくり続けること、そのための工夫をしています。
最初から最後までいいトマトをつくり続けようと思ったら、一度にいい味をつくるよりも平均的にいいトマトをつくり続けることが重要だと自分は思っている。そこそこのいいトマトを長い期間つくり続けることを目標にしています。

一今後の目標を教えてください

今、最大の課題は8.9月が忙しすぎる事なんです。
自分も妻も二人めいっぱい時間をとられてしまうから、夏休みの時期に子どもと遊ぶことができない。
従業員を雇えば、時間がつくれるけれどそのために規模を大きくするとまた、収入とのバランスが、崩れちゃうので。今5年目で20棟までトマトのハウスを広げてきて、ここが二人でやるちょうど境目なので。大型化して、人をやとう体制がとれれば、とも思いますが。そこが今の課題ですね。 子どもが孤立しちゃうのは、片品中の農家の課題ですね、子どもが自分で歩いて遊びに行く場がないので。
あと、今年からワイン用のぶどうを仲間と育てています。まだ始めたばかりですが、いずれ醸造まで片品でできれば、冬の仕事になると思っています。冬、スキー場へアルバイトへ行かなくてすむようになればと思って。子どもが成人して就業するまでに仕事をつくりたいという思いでやってます。子どもに帰ってこいと言えるくらいに安定した収入を得られるようにしたいですね。

アピールポイント

5人の仲間で今年植えたワイン用の葡萄の木。ワインがつくれる葡萄を実らせることができるのは、はやくて3年後。いづれ、片品の名物ワインができて、醸造もこの地域で行えれば冬もスキー場へ働きに出るのではなく、自分の仕事がつくり続けられる。冬、雪で農業がストップする片品村での新しい仕事を創出する、夢のブドウ。

-コーディネーター紹介-

話を伺う中で、一番に感じたのは家族への想い、そして養うという覚悟の強さでした。 「家族のために」を思えばこそ、自分の子どもだけではなく、片品村の地域で抱える子育て環境への課題についても熱いお話ができました。 外に出て、都会的な視点を養いながらもこの地域への愛着や良さを生かして農業をしている姿、かっこいいですね!「百姓ですからね、なんでもやらないと」と笑う姿は、ひとつこの片品という群馬の山間部で暮らす姿の模範のように感じられました。

ID123 群馬県片品村

なかむらまゆ

中村茉由

1989年5月13日生まれ。茨城県日立市出身。 山梨県、都留文科大学(環境・コミュニティ創造専攻)で地域づくりの基礎を学ぶ。 卒業後は茨城の飲食店で働き、北海道のNPO職員として自然体験や観光地域づくりに関わる仕事を経て、 2015年の春から群馬県片品村で地域おこし協力隊に着任。 2年目からは、NPO法人武尊根BASEのメンバーとして、旧武尊根小学校の廃校利活用事業プロジェクトを進行。 3年目、起業へ向けた準備を進めています。 これまでに関わった皆さんとのご縁を大切にして、素敵な地域暮らしをつくっていければと思います。